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T・ウッズ交通事故「7つの謎」が解明される日 - 舩越園子

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 2月23日早朝に米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外で起こったタイガー・ウッズ(45)の交通事故の直後から、「なぜ、ウッズほどの大物が、自分で車を運転していたんですか?」という問い合わせが私のところへ多数寄せられた。週刊誌の記者からも、開口一番、その疑問をぶつけられた。

 なるほど。ウッズが自らハンドルを握っていたことは、日本の多くの方々にとって「謎」のように感じられたことがわかった。しかし、ウッズをはじめとする米ツアー選手たちの現状に目をやれば、それは決して「謎」ではなく、むしろ日常の当たり前のコトなのだ。

 ウッズは、学生時代はもちろんのこと、プロ転向して米ツアー選手になったときも、1997年「マスターズ」を圧勝してスーパースターと化してからも、メジャー15勝を含む歴代1位タイの通算82勝を挙げてきたこれまでも、終始一貫して自分で車を運転してきた。

 たとえば、2001年の9・11(米同時多発テロ事件)が起こった際、「アメリカンエキスプレス選手権」出場のためミズーリ州にいたウッズは、大会中止が決まったあと、1人で15時間ハンドルを握り続け、フロリダの自宅へ帰っていった。

 2009年11月27日、サンクスギビングデーの夜にウッズは消火栓にぶつかる自損事故を起こし、その小さな交通事故が発端となって未曽有の不倫騒動に発展したことはご存じの通りだが、あのときもウッズはキャデラックのエスカレードを自身で運転していた。

 2017年5月29日の未明、メルセデスベンツの車内で酩酊状態で発見されたウッズは、その場でDUI(アルコールまたは薬の影響下で運転)で逮捕され、世界を驚愕させたが、あのときもウッズは運転席に座っていた。

 これらの例は、「どれも特殊ケースだろう?」と思うかもしれない。しかし、日ごろのツアー生活で宿舎と試合会場を行き来する際も、大会側が特別な事情で全選手に送迎サービスを提供する場合を除けば、ウッズは必ず自分で運転していた。

 試合会場の選手用駐車場には、選手名を記したネームプレートが貼られる。その大会の過去の優勝者には優勝した年まで書き添えられたネームプレートが用意され、クラブハウスに一番近い最高の駐車スペースが提供される。

 たとえば「2000年チャンピオン、タイガー・ウッズ」などと記された駐車スペースの前で、キャディやマネージャー、メディアなどが早朝から「入り待ち」していると、やがてウッズが運転する車がやってきて、スーッとそこに車を停める。その瞬間、周囲に緊張が走り、いろいろなコトが動き出す。

 それが、ウッズが出場する試合会場の「いつもの朝の風景」だった。

「大物には運転させない」という考え方は、もちろん米国でも一部にはあるのだが、少なくともウッズや大半の米ツアー選手の間には、その考え方は、ほぼ見られない。

 そもそも車社会の米国で運転をすべて第三者に任せていたら、それこそ24時間、その第三者をすぐそばに待機させなければならなくなる。だからと言って、必要なときにいちいち運転手を呼んでいたら、それはそれで毎日が苛立ちの連続になる。だからウッズも他選手の大半も自分でハンドルを握るわけで、それは自力で歩けるのだから歩くというのと、ほとんど同じ意味合いである。

「でも試合のときはチームで行動するのでは? チームの誰かが代わりに運転すればいいのでは?」と思うかもしれない。しかし、米ツアーの一流選手たちが擁するチームは、それぞれのプロフェッショナルたちの集団だ。キャディなら試合中にバッグを担いで選手をアシストすることが仕事、コーチなら技術指導が仕事、マネージャーならスケジュールや契約の管理が仕事であり、ウッズの運転手でも身の回りの世話係でもない。

 彼らは「仕事場」である試合会場でウッズと会って「グッド・モーニング」と挨拶し合い、その日の仕事を終えたら「また明日」と言って別れる。そこから先は、それぞれが単独行動となり、ウッズも自身で運転して引き上げていく。

 米ツアー選手たちの大半も、ウッズ同様、そういうスタイルで行動しており、そのあたりの考え方や姿勢は、日本のスポーツ界の長年の慣習とは大きく異なっている。

 その意味で、今回の交通事故の際、ウッズ自身が運転していたことは、米国事情や米ツアーの現状、ウッズ自身のスタイルに照らせば、それは決して「謎」ではない。

22分間で次々浮かぶ「謎」

 そう、ウッズが運転していたことは「謎」ではないのだが、ウッズの今回の交通事故には、いろいろな「謎」が残されている。

 2月23日の朝6時50分ごろ、ウッズは滞在していたロサンゼルス南西部の高級住宅街パロスベルデスのリゾートホテルのロビーから「慌てた様子で」「真っ青な顔で」「怒った顔で」駐車場へ出ていった姿が目撃されている。

 予定では、テレビ番組の撮影のため、車で10~15分の距離にある「ローリングヒルズCC」へ向かうはずで、7時前に出発すれば集合時間の8時には十分に間に合う。それなのに、なぜ、それほど慌てていたのか。まず、その理由が「謎」である。

 ところが、駐車場に停めてあったヒュンダイのジェネシスGV80に乗り込んがウッズは、それから数分間、「エンジンをかけずに車内にいた」という目撃証言もある。慌てて車に飛び乗ったのに、発進させるまでの間、なぜ、数分間のタイムラグがあったのか。それも「謎」と言われている。

 そして数分後、今度こそ急発進したウッズの車は、ちょうど入れ替わりでそのホテルの駐車場へ入ってきたテレビ局のディレクターの車とほとんどぶつかりそうになりながら大慌てで車道へ飛び出していったそうで、数分間のタイムラグ後、一転して急発進した理由も「謎」である。

 事故発生の数分前、7時5分ごろの現場近くの防犯カメラには、ホーソーン・ブルーバードを走るウッズの車とその前を行くミニバン、2台の走行が録画されていた。ウッズの車は前を行くミニバンと十分に車間を取り、スムーズに走っている様子だった。

 ホテルの駐車場から急発進したにもかかわらず、わずか数分後には落ちついた様子の走行。しかし、そのまた数分後の7時12分には道路から6メートルも脇のブッシュの中へ突っ込んでしまったのは、なぜだったのか。

「謎」は次々に浮かび上がる。

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