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メディアが報じない違法薬物事件のリアル 高相祐一被告が再犯しないために続けていた努力と偶然現れた密売人の誘惑

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは、東京地裁で行われた高相祐一被告人(53)の覚醒剤取締法違反の裁判。去年10月に被告人が東京都内で覚醒剤を使い逮捕されたと報じられた事件です。

よくある違法薬物使用の事件と言えばそれまでですが、被告人が以前女優さんと結婚していたということもあり速報で大きく報じられた事件です。

まずは1月21日に行われた初公判から。

起訴されたのは、2020年10月20日頃に被告人が自宅で覚醒剤を気化して吸引したという内容。

被告人は罪を認めていて、検察官の冒頭陳述です。

検察官によると、被告人は専門学校を卒業後はスポーツ用品店で働き、海外留学を経てプロサーファーとして活躍する傍らDJとしても活動していたといいます。前科は2犯で、2009年に覚醒剤取締法違反、2017年に医薬品医療機器等法違反で有罪判決を受けているとのこと。この2つに関しては今回同様大々的にニュースになったので周知の事実でしょう。

2017年12月からは薬物依存回復の支援施設であるダルクに入寮し、2020年4月に退寮したらしいです。そして被告人は一人暮らしを始め、池袋にある居酒屋でアルバイトとして働くようになったと。そして9月、被告人は池袋の喫煙所でタバコを吸っていた所、密売人とバッタリ再開し、覚醒剤を購入。

犯行当日の10月20日。午前1時〜4時の間、被告人は覚醒剤をあぶり気化させて煙を吸引、右足に注射、再びあぶって吸引と3回使用したといいます。その2日後に、池袋で職務質問を受け、尿検査により使用が発覚したというのが事件の流れになります。

密売人と偶然会ってしまったとは…。何という運命のいたずら。そんな偶然の出会いなんてあるのか…? とも言いたくなりますが。会ったとしても購入は自分の意思だろうから責められても仕方のない話だけど、ダルクから出て真面目に働いていたのに。

被告人の自宅からは吸引する時に使うガラスパイプなどの道具が発見された、などの証拠が検察官から読み上げられました。そして弁護側の証拠が全て揃ってないということで、次回の公判日を決めて初公判は10分程で閉廷でした。

被告人は薬物依存回復プログラムを真面目に受けていた

2012年に釈放された時の高相被告(共同通信社)

そして2月25日に行われた第2回公判。
この日は弁護側が用意した2人の証人が証言台に立ちました。

まず1人目はダルクの寮長の男性です。

弁護人「証人も薬物依存から回復して、その経験からアドバイスをしたり講演をしたりしていると?」
男性証人「はい」
弁護人「ダルクで行っているプログラムというのはどんな内容なのですか?」
男性証人「依存症の本質はコントロール喪失です。一度薬物を使ってしまうと、気分を変える時に使いたいなと再使用するケースが多いのです。なので、薬物はやめ続けることになります。そのためには人の助けが必要です。同じ依存の人達と悩みを打ち明けたり、生活習慣や価値観を変えるための12ステップがあるプログラムを高相さんにも受けてもらっていました」

やめるのではなくて、やめ続けるというのが再び手を出さない方法のようです。1回やめても再び欲求が出てきてしまうって意味でしょうね。もちろん世の中には立ち直って普通に生活している人も沢山いるのでしょうけど、裁判を傍聴した経験上、再犯率が高い種類の事件だったりするのが現実。生活習慣や価値観を変えることはなかなか容易ではないのでしょう。

弁護人「再犯防止には何をすればいいですか?」
男性証人「ダルクへの入寮が重要と考えます」
弁護人「社会復帰後、ダルクで職員としてスタッフとして働くというやり方もあるのでしょうか?」
男性証人「はい。薬物を使わない生活を続けるためには仲間と関わり続けることが大切だと考えています。ダルクには新しい入居者が入って来ますので…あの、変な言い方になりますけど、自分の過去の経験が新しく来た人の役に立つことで自己評価も高まりますので」

違法薬物に手を出したその時の悩みや苦しみ、プログラムを学び始める時の気持ちなど、経験者だからこそアドバイスできることも多いでしょうしね。どうやっても過去は変わらないけど、社会や人の役に立つことで生き甲斐みたいなものが芽生えるのかも知れません。

続いて、2人目の情状証人。医療や福祉など専門家による支援活動をしているNPO法人アパリの精神保健福祉士の女性が証言台に立ちました。

弁護人「被告人はどれくらい前から知っていますか?」
女性証人「最初に逮捕された11年前から支援を続けています」
弁護人「具体的には何をしているのでしょうか?」
女性証人「ダルクに入寮するのを勧めたり、退寮後も面談をしたりしていました」
弁護人「被告人の様子はいかがでした?」
女性証人「前刑出所後ダルクに入りまして、アパリは同じ建物の一階にありましたので顔を合わせれば挨拶していたのですが、自分は必要とされる人間だと別人のようにプログラムに取り組んでいました」

かなり真剣にプログラムを受けていたようです。

弁護人「退寮後は?」
女性証人「アルバイトもしていると聞いて安心していました」
弁護人「結局は再び薬物に手を出してしまったわけですが、すぐに回復しないものですか?」
女性証人「1回で回復する人は少なくて、2~3回で回復する人もいます。また30年を経てやっと回復という人など人それぞれです。高相さんは11年で、その途中だったのかなと」
弁護人「再犯しているのだからプログラム受けても意味ないのではないか、という見方もできますけど」
女性証人「いい所まで来ていたと思うので、今後出所したら再びダルクに入れば回復すると考えています」

てっきり再び使ってしまったら学んだプログラムは全て意味がなくなり、最初からやり直しという感じかと思っていたのですが、少しずつ回復してきているということですね。自分も含め一般的に抱いているイメージとは違うのではないかと思いますが、被告人は回復途中。これは社会というか我々も認識を改めなくては…。

弁護人「先程も話に出ましたが、被告人がダルクで働きながら回復していくという選択肢もあるんですかね?」
女性証人「高相さんは人に優しく接したりできるので、スタッフには向いていると思います」

ダルクとしては今後被告人をスタッフとして受け入れるつもりがあるみたいですね。

被告人を苦しめていた両親の声

そして被告人質問です。まずは弁護人から。

弁護人「前刑は危険ドラッグで実刑になって、出所してダルクに入ったと?」
被告人「はい、入寮しました」
弁護人「去年退寮したのは相談して決めたんですか?」
被告人「一人暮らしを勧められました」
弁護人「ずっと働いて、ダルクには行っていたんですか?」
被告人「普通は週に1~2回働くんですけど、私は週に6日働いて休みの日に通ってました。でも休みを増やしてもらって週に2日プログラム受けていました」

寮を出た後も再び薬物に手を出さないようにプログラムの続きを受けるのが通例のようです。

弁護人「ダルクを出て、一人暮らしをして、仕事をして。順調なステップアップですがツラかったですか?」
被告人「仕事で大変疲れまして…苦しいと言うより充実感がありました。でも3ヶ月経ってから仕事以外でツラく当たられ、体調を崩しまして、ストレスを抱えていました」
弁護人「職場の対人関係、人間関係で誹謗中傷を受けていたと?」
被告人「はい」
弁護人「職場を辞めようとは?」
被告人「両親の紹介だったので辞めることはできず……」

職場で何を言われていたのかは法廷で明らかになりませんでしたが、仕事以外というのは過去のこととかなのでしょうかね。それにしても親の顔を立てるが故、辞められなかったとは。

弁護人「その頃に出会ったのが密売人のリョウジ?」
被告人「はい」
弁護人「薬物を断るのは難しかったですか?」
被告人「…手を出してしまいました…」

ちょうどストレスが溜まっているタイミングで接触してしまったようです。

弁護人「出所したらまたダルクに入寮してプログラムの続きを行います?」
被告人「はい」
弁護人「ダルクで働こうとか考えていますか?」
被告人「考えています。12ステップを学びながら」
弁護人「私との打ち合わせで、両親が『仕事頑張れ』って言ったのもプレッシャーになったって言っていましたもんね」
被告人「はい」

両親の声が被告人を苦しめていたのか。息子のためを思って職場を用意してくれたとは思いますが難しいものです。

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