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選挙のために「消費税廃止」を訴える野党は、国民を騙しているだけだ

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減税論者が見ない「歳出拡大」という真実

所得税や法人税を上げれば、消費税を上げなくても社会保障費を捻出できるのだと言う人もいますが、現実にはそんな国家は地球上に存在しません。社会保障を充実させている国は、例外なく消費税負担が重いです。ただし、私は所得税や法人税を上げることを否定するわけではありません。この国の財政失敗の要因の一つが、所得税と法人税を減税し過ぎたことにあるからです。1990年代以降の税制改正が無かった場合の税収について、内閣府が試算を出しているので見てみましょう(図表4)。

改正が無ければ、税収が全く違ったことが分かります。特に所得税の減税の影響が大きく、99年以降は、改正しなかった場合との差額が毎年10兆円程度になっています。法人税の減税が強調されますが、実際には所得税減税の影響の方が大きいです。

「消費税は法人税減税の穴埋めに使われた」とさかんに喧伝されていますが、正確には所得税減税の穴埋めのようにもなっています。というか、そちらの額の方が大きいです。さらに重要なのは、穴の方が年々広がってしまっているため、全然穴を埋めることができていないということです。消費税減税を主張する人は、この歳出の拡大という事実に触れません。

所得税収がピークだった1991年度の一般会計歳出は約70兆円に過ぎませんが、今は100兆円を超えています。そして、今後はもっと恐ろしい勢いで増えていきます。所得税や法人税をピーク時と同じくらいの水準に戻しても、消費税抜きではこの莫大な歳出を賄えません。働き手が急減する一方で、高齢者は増えていくからです。

コロナ禍で団塊世代も逃げきれない

こういう暗い話をすると叩かれます。見たくもない現実を突きつけられるのがみんな嫌なのでしょう。しかし、恨むなら、先人達を恨んでください。我々に負担を押し付けて天寿を全うした先人達が一番得をしています。今を生きる我々は、いつ通貨崩壊にあってもおかしくない状況ですから、たとえ団塊の世代であっても、「逃げ切り」は保証されていません。というより、コロナショックでまた財政が悪化しますから、団塊世代の逃げ切りはさらに危うくなったと言うべきです。

コロナショックに際して、他国は思い切った財政出動をしているのに、なぜ日本はお金を出し渋るのか、多くの人が不満に思っているようです。たしかに、持続化給付金200万円(中小法人等の場合。個人事業主等の場合は100万円)も、特別定額給付金10万円も、自粛に対する補償としては極めて不十分です。しかし、他国と日本では財政状況が全然違うのです。

日本財政は膨らみ過ぎていつ破裂するか分からない特大の風船のような状態です。一方、諸外国は少なくとも日本より財政規律に気を遣い、赤字が膨らみ過ぎないようにしてきたので、こういう緊急事態に思い切った財政出動ができるのです。「今だけ」を考えてずっと現実逃避をしてきた日本と諸外国は根本的に違うのです。

今も、野党の一部に消費税の減税や廃止を掲げて人気を取ろうとする者がいます(自民党の一部にもいますが)。

野党が決め、自民党が導入した消費税

消費税が導入されたのは1989年、自民党の時代です。そして増税されたのは1997年、2014年、2019年の3回。増税時の与党はいずれも自民党です。

しかし、増税の根拠となる法律を成立させたのは誰でしょう。97年増税の根拠法を成立させたのは、94年の村山内閣です。そして、2014年、2019年の増税の根拠法を成立させたのは、12年の野田内閣です。すなわち、消費税増税法案が成立したのは、全て野党が与党になった時です。

もちろん、野党は与党になる前は消費税増税に反対しています。初めて消費税導入が試みられたのは、1979年ですが、この時も反対しています。その後、何度も消費税が導入されようとしましたが、そのたびに反対し、1989年に導入された時ももちろん反対していました。しかし、結局自分達が与党になった時は、消費税増税法案を成立させているのです。

私は本当に怒りを込めて言いたい。「だったら最初から反対するな」と。消費税抜きで財政を安定させ、社会保障を充実させている国家はこの地球上に存在しません。「高負担無くして高福祉無し」なのです。たくさん税金を取るからたくさん社会保障にお金を使えるのです。しかし、野党はあたかも低負担で高福祉が実現できるかのように喧伝し、目先の票を取ることを優先しました。そして、自分達が与党になった時は、結局増税法案を成立させているのです。これではただの噓つきではないでしょうか。

人気取りを優先させるという欺瞞

高福祉・高負担国家のデータを分析して、私は自分の租税観が変わりました。それまでは、税金は「取られるもの」というイメージでした。しかし、本来はそうではないのです。「出し合って、支え合うもの」と言うべきです。だから高福祉国家は、高負担でも幸福なのです。その前提として、「信頼」が無ければなりません。

明石順平『キリギリスの年金 統計が示す私たちの現実』(朝日新書)

信頼を得るためには、国家が徹底的に情報公開し、国民の監視が行き届くようにしなければなりません。それには大変な努力が必要です。ところが、日本は「経済成長すれば何とかなる」という発想で、国民に負担を求めることから逃げてきました。そして、結局未来に負担を押し付けました。それが一番楽な道だったからです。一番責任が重いのはもちろんほぼ全期間与党だった自民党ですが、野党にも責任があります。

「二度あることは三度ある」といいます。野党は既に2度、自分が与党になったら手のひらを返して消費税増税法案を成立させる、ということをやっています。結局、自分達が与党になってみないと、財政の厳しい現実は分からないということでしょう。

そして、与党にならない限りは、人気取りを優先して、到底実現不可能なことを無責任に言うことができるのです。それは目先の選挙に勝つことを考えれば、ある意味合理的な手段でしょう。しかし、私から見れば、それは国民を騙しているだけです。

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明石 順平(あかし・じゅんぺい)

弁護士

1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。弁護士。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。著書に、『アベノミクスによろしく』『データが語る日本財政の未来』(集英社インターナショナル新書)などがある。

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(弁護士 明石 順平)

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