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選挙のために「消費税廃止」を訴える野党は、国民を騙しているだけだ

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世界を覆うコロナ禍にあって、見劣りのする日本の財政出動。この根本原因を考えていくと、消費税の「低さ」に行き着く。弁護士の明石順平さんはそう主張する。それでもなお「消費税廃止」を訴える野党への怒りは、もう財政再建は不可能という日本の財政への暗い見通しと共にある――。

※本稿は、明石順平『キリギリスの年金 統計が示す私たちの現実』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

オンラインで開かれた立憲民主党の定期党大会であいさつする枝野幸男代表=2021年1月31日、東京都内のホテル[代表撮影] - 写真=時事通信フォト

財政再建はもう手遅れで絶対に不可能

財政再建のために増税や緊縮をすべきでしょうか。私はそうは思いません。もう手遅れであり、財政再建は絶対に不可能だからです。この国は1965年に特例国債を発行してから今に至るまで、一度たりとも借金の残高を減らすことができませんでした。積みあがった借金約1100兆円は、毎年5兆円の黒字を出しても、110年間かけてやっと半分の550兆円になるという膨大な額です。明らかに無理でしょう。財政再建なんて、無意味な苦しみを与えるだけであり、やるだけ無駄なのです。

なお、地方公共団体の債務等も含めた政府総債務残高対GDP比でいうと、日本は圧倒的な世界1位です(図表1)。これは先進国のみを比較したグラフですが、IMFにデータのある全ての国で比較しても、日本は1位です。200%を超えているのは日本だけ。こんなことをできるのは、まだ信頼が継続しているからです。しかし、人口予測を考慮すると、その信頼が継続するとは思えません。生産年齢人口の推移を見ると、今後は減る一方であり、回復する見込みはありません。

2018年には7500万人いた生産年齢人口が、2056年には5000万人を切ります。2500万人以上減るということです。2500万人というのは、今の近畿地方全部の人口を合わせた数より多いです。働き手の約3分の1がいなくなってしまうということです。

「消費税抜き、充実社会保障」の国はない

こうやって働き手が減る一方で65歳以上の高齢人口は増えていきます。ピークは2042年の3935万人です。しかし、もっと見なければいけないのは、介護費や医療費が跳ね上がる75歳以上の後期高齢者の人口です。2054年に2449万人です。その時の生産年齢人口は、今の3分の2程度にまで減っています。

こういう状態ですので、増税と緊縮をして財政再建をするなど不可能です。本気で再建するなら、超異次元の増税と緊縮をしなければなりませんが、国民が受け入れるわけがありません。私はたまたま本を書く機会を得て、その過程で色々勉強したのでこのような認識になりましたが、本を書いていなかったら、そうはなっていないでしょう。気楽に「消費税廃止!」などと言えていたかもしれません。

仮に、重い消費税負担抜きで社会保障を充実させている国がこの地球上に一つでも存在したならば、私は消費税廃止を主張していたかもしれません。しかし、そんな国は無いのです。例えばデンマーク、スウェーデン、フィンランドはいずれも対GDP比で言えば日本の倍以上消費税を取っています。なお、この点について、「対GDP比」ではなく、「税収構成比」を示して、日本の消費税負担は重いとミスリードする主張があります。これは大間違いです。税は国民が生み出した付加価値から取るのですから、税負担の軽重は「対GDP比」で見なければなりません。

「広く安定してがっぽりとれる」のが消費税

デンマークの消費課税構成比が日本のそれより低いのは、所得税を日本よりはるかに多く取っているからです。GDP比で見ればOECD加盟国の中でダントツです。所得税収の構成比が大きい分、消費税収の構成比が下がっているだけです。

消費税は世界155カ国(2019年4月現在)で採用されている税金です。なぜこんなに世界中で採用されているのか。その背景には、少子高齢化があります。少子高齢化に直面しているのは日本だけではないのです。

所得税や法人税だけでこの増大していく社会保障費を賄おうとすると、現役世代の負担額が増え過ぎてしまいます。だから全世代が負担する消費税、ということになるのです。消費税の特徴は税収の推移を見るとよく分かります(図表2)。

例えばリーマンショックに襲われた2008年度と09年度、所得税も法人税も大きく落ちています。それと比較すると、消費税収の方はほとんど落ちていません。これは、消費税は赤字でも納める必要があるからです。消費税について直接納税義務があるのは事業者です。そして、消費税は、ざっくり言えば、売上から仕入を引いた額に課税されます。だから赤字でも納めなければならず、景気に左右されないのです。さらに、負担者は全世代です。つまり、「広く安定してがっぽりとれる」のが消費税ということです。

消費税への考えを変えさせたデータとは

増大する社会保障費について頭を悩ませているのはどの国でも同じです。したがって、税金を取る方からすれば、これほど優秀な税は無いでしょう。そして、国民の側からしても、たくさん取られた消費税が、真に社会保障の充実に使われるのであれば、文句は無いでしょう。だから高負担国家はうまく回っているのです。しかし、繰り返しますが、日本が今さら高い消費税率にしても、高負担国家と同じにはなりません。借金を積み上げ過ぎたため、返済に吸い込まれてしまうからです。

所得税・法人税・付加価値税対GDP比OECD平均値の推移を見てみると、付加価値税の割合が右肩上がりに増えています(図表3)。所得税は2010年あたりまで減少傾向にありましたが、その後反転しています。法人税は基本的に横ばいといったところです。

このような他国の情勢も見ると、消費税抜きで財政を維持することなどあり得ないことが分かります。消費税抜きで少子高齢化国家を運営するのは、人類の歴史上誰も成し遂げたことがない快挙と言えるでしょう。私はこの現実を見た時に、消費税は受け入れざるを得ないという考えになりました。なお、消費税減税や廃止を謳(うた)う人の中で、このようにOECDのデータを丹念に分析している人を見たことはありません。

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