記事

警戒すべき存在としての弁護士

 多くの人には接点がなく、かかわることになった人でもよく知っているのは、そのうちの極一部。そんな庶民が弁護士という存在を、最も身近に目にしてしまうのは、いまや三面記事や雑誌の特集で登場する、頭に「悪徳」という文字がのっかっているような人ばかり――。現状をこんな風にとらえてしまえば、もはや多くの庶民にとっての弁護士のイメージなど、良くなりようがないように思えてきます。

 もちろん、そんな弁護士ばかりではありません。ただ、例外だ、最悪のケースだといってみたところで、いつまでも庶民が、それを割り引いて、こうした記事を見ているわけもありません。弁護士一人の不祥事は、弁護士全体の信用を失墜させていく。一方で、弁護士か増えれば、必然的に不祥事も増えてしまう。弁護士の数が増え、競争になれば「悪徳」は駆逐されるという人もいますし、あるいは増えて身近になれば、「善徳」の弁護士が沢山いることも伝わると思い描く人もいるかもしれませんが、果たしてそうなるのかもさることながら、仮にその前提に立ったとしても、そこまでこの国の弁護士の信頼が持ちこたえられるのか、そう言いたくなるような現状が広がっています。

  「急増中!認知症の金持ちを狙う暴力団・悪徳弁護士」

 雑誌「プレジデント」が、こんな見出しの記事を掲載しています(12月31日号、PRESIDENT Online)。企業経営者やサラリーマンを読者層に持つビジネス情報誌に、弁護士が暴力団と肩を並べて取り上げられている現実です。独居老人が亡くなって、相続の手続きのために親族が集まってみると、いつの間にか自宅に抵当が付いて、暴力団関係者に1億円借りたことになっていた。暴力団が老人の身柄を保護して「家族にDVを受けた」と言わせて裁判を起こし、親族から資産を根こそぎ巻き上げる。養子縁組で騙された資産家の高齢女性に、救いの手を差し伸べるようにして接近、任意後見契約を結ばされ、次々に資産を奪われ、やがて成年後見人となり、管理権も――。こうしたケースに、「プロ」、つまりは弁護士がかかわっているという話です。三番目のケースの主犯格の女性の元夫は弁護士で、その仲間の弁護士が共謀したとされ、その他のケースでも、直接の言及はないものの「プロ」の深い関与をうかがわせています。

 冒頭に掲げたような庶民にとって、この記事が伝える、最も重要な意味は、中見出しにもその内容がとられている、次の一文に凝縮されていると思います。

  「プロが“その気”になれば素人が逃れるのは至難の業。弁護士の窮乏ぶりが顕著な今、彼らの道義心以外に歯止めのない現状は空恐ろしい」

 要は、この現実を、市民側と弁護士側双方が、どこまで重たくみるのかの問題だと思います。庶民側がこれに対する警戒心を強めることは、当然のことではありますが、それこそ逆に素人が「その気」になってなんとかなる話なのかどうか、そこを素人の自己責任にどこまで置き変えられるのか。一方、弁護士側は、そのことの現実的な妥当性と、責任をどこまで負うのか、そこがこだわりどころでなくてはならないはずです。

 こうした脅威を弁護士自身が口にすれば、自己保身が根底にある脅迫めいた言い分ととる向きありますが、一方で、この現実こそ、単なるサービス業として同一視できない、庶民にとって、やっかいな弁護士という仕事の特殊性があると見る方が、むしろ庶民にとっては安全な現実があるように思います。

  「窮状ぶり顕著な」弁護士の実情からすれば、庶民の「安全」を彼らの道義心だけにゆだねている現状は、なんとも心もとないといっているようにとれる前記切り口は、今の我々の社会の弁護士という存在が、期待感よりも警戒感を強めなければならないものになっている、あるいはその方向に進んでいることを、はっきりと教えているというべきです。

あわせて読みたい

「弁護士」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    質疑から逃げた立民は論外だが、自民党も改憲やる気なし。不誠実な憲法審査会の結末

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月07日 10:21

  2. 2

    病床ひっ迫で入院厳しく…「来た時点で肺が真っ白」 大阪の医師が警鐘「第3波以前とは全く別の病気という印象」

    ABEMA TIMES

    05月07日 08:12

  3. 3

    「首相も都知事もリアルな社会人の生活を理解してない」 "間引き運転"で露呈した政治家たちの「わかってない」感

    キャリコネニュース

    05月07日 09:14

  4. 4

    格差問題の必然性

    ヒロ

    05月07日 11:19

  5. 5

    原宿の竹下通りが「地方都市のシャッター商店街化」の衝撃

    内藤忍

    05月06日 16:17

  6. 6

    出口治明さんが語る「35年ローン」で家を買ってはいけない理由

    幻冬舎plus

    05月07日 09:04

  7. 7

    「日本を食い物にする」無責任IOCに批判殺到…世界からも続々

    女性自身

    05月07日 13:46

  8. 8

    今も裁判で「三女アーチャリー」として…松本麗華氏を25年間も縛り続けるオウム真理教

    松本麗華

    05月06日 15:25

  9. 9

    総選挙前に自民党総裁選? 安倍晋三元首相が再登板の可能性

    内田樹

    05月07日 14:46

  10. 10

    朝ごはんの器で1日が変わる コロナ禍で“食”を見つめ直すきっかけに

    羽柴観子

    05月07日 08:40

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。