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人との関係を断ち切る貧困〜生活保護基準引き下げ違憲訴訟、大阪地裁で勝訴! の巻 - 雨宮処凛

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 「大阪地裁、勝ちました!!」

 メーリングリストに流れてきたその言葉を見た瞬間、一人の部屋で「おおおおお!!」と叫んでいた。

 この日、大阪地裁で下されたのは「生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)」の判決。結果は、原告の勝訴。大阪地裁は原告らの国家賠償請求は棄却したものの、引き下げを違法であるとして取り消すという画期的な判決を言い渡したのである。

 やっと、やっと苦しい人たちの声が届いた。踏みにじられてきた人々の声に、裁判所はちゃんと耳を傾けてくれた。

 そう思うと、胸が熱くなった。

 思えば、長い道のりだった。

 2012年末、第二次安倍政権が発足して真っ先に手をつけた「生活保護基準引き下げ」。以降、13年からどんどん減らされていった生活保護費。食事の回数を減らした、家族や親戚のお見舞いや葬式にも行けない、どんなに暑くても電気代が怖くてエアコンなんてつけられない――。そんな悲鳴があちこちから上がったが、もっとも耳にしたのは「生きていてはいけないと言われている気がする」という言葉だ。

 その言葉は、前年から聞いていたものでもあった。12年春、芸能人家族の生活保護利用をきっかけに、野党だった自民党議員らが主導した「生活保護バッシング」。当時は生活保護利用者の「監視」を呼びかけるテレビ番組まで登場し、多くの利用者から「怖くて買い物に行けない」「外に出られない」「うつがひどくなった」という声を聞いた。「死ね、と言われている気がする」という悲鳴もあった。実際、このバッシング騒動の中、自ら命を絶った利用者を知っている。

 12年末、「生活保護費10%削減」を公約のひとつに掲げた選挙で、自民党は政権に返り咲く。そうしてすぐに「引き下げ」が始まったというわけだ。

 が、この引き下げには、ずーっと「疑惑」がつきまとっていた。総額で670億円削減されたわけだが、その理由とされていたのが「デフレで物価が下がっているから」というもの。が、下落していたのはパソコンやテレビといった生活保護世帯では買えないようなものの価格。その根拠となるデータも、それまで使っていた生活保護世帯の消費実態を調べたものではなく、なぜか一般世帯の消費支出を使う有様。

 なんだか自民党の「生活保護費10%削減」という公約に無理矢理寄せるために、必死に数字をいじっているように思えるのは私だけではないだろう。しかし、そのようなやり方で生活保護基準は引き下げられ、世帯によっては実際に、保護費が10%も削減された。

 そんな引き下げに対して、「もう我慢ならない」と生活保護利用者たちが立ち上がったのが数年前。そうして1000人を超える原告により(最大時)、全国29都道府県で「生活保護基準引き下げ違憲訴訟」、通称「いのちのとりで裁判」が始まったのだ。

 しかし、昨年6月、大きな失望が私たちを襲った。それはこの裁判初となる判決が、「原告の請求棄却」だったこと。名古屋地裁の判決だ。「最低最悪の判決」。私たちは憤ったものの、この時のショックが大きかったため、今回はどこかで「ひどい判決が出てもあまり衝撃を受けないようにしよう」と身構えていた。しかし、蓋を開けてみたら、名古屋地裁とは正反対の判決だったわけである。

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