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東京五輪を"ボイコット"する日本国民がこうむる「どえらい逸失利益」

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終息しないコロナの感染状況を受け「東京五輪開催」反対派が多くなっているが、本当にそれでいいのだろうか。スポーツライターの酒井政人さんは「開催決定・中止を決める権限はIOCにあり日本(東京)にはない。夏季五輪の自国開催は一生に一度のビッグイベントで、その体験を逸するのは惜しい。国民も大会関係者も最大限の感染対策で開催に向け準備すべきではないか」と訴える――。

東京のお台場ウォーターフロントでオリンピックリングの前を歩く人々=2021年2月6日
東京のお台場ウォーターフロントでオリンピックリングの前を歩く人々=2021年2月6日 - 写真=AFP/時事通信フォト

開催国日本(東京都)に東京五輪を「中止」する権限はない

東京五輪の開催まで5カ月を切ったが、国民の心は東京五輪から離れているように見える。

読売新聞社が行った世論調査(2021年2月5~7日調査)では、「観客を入れて開催する」8%、「観客を入れずに開催する」28%と、開催に前向きな考えを持つ人が計36%いたが、「再延期する」33%、「中止する」28%と、6割を超える人が予定通りの開催に否定的な回答をしている。

緊急事態宣言の延長に加えて、2月3日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視ともとれる発言を巡るドタバタが国民の“いらだち”を増幅させたのは確かだ。その怒りの矛先が東京五輪にもぶつけられているような形だ。

「新型コロナが収束していないのに、開催は時期尚早」

「無観客開催、海外選手の隔離・追跡、医療体制の拡充といった対策をしたとしても、安心できない」

そうした気持ちは理解できる。だが、ここは冷静な判断が重要だと私は考える。

ルール上、開催国とはいえ日本(東京都)に東京五輪を「中止」する権限はない。決定権があるのはIOC(国際オリンピック委員会)で、東京都らは「考慮の要求」しかできない。

IOC、JOC、東京都の3者で締結した「開催都市契約」には、IOCは「本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」には中止する権利を有すると記されている。IOCが中止を決めた場合、日本側は補償や、損害賠償を請求する権利を放棄することも明記されている。

東京都が開催拒否した場合はスポンサー企業への返金と違約金が発生

東京五輪・パラリンピックの大会経費は、大会が1年延期となったことで新たに2940億円が必要となり、総額1兆6440億円まで膨れ上がった。東京五輪が中止となると、日本側は経済的に大きな損失を被ることになる。それは、いずれ国民の生活にも大なり小なり影響を与える。また東京都が開催を拒否した場合は、さらにスポンサー企業(68社、総額約3500億円)への返金と違約金が発生する可能性がある。

2月19日に行われた先進7カ国(G7)首脳のテレビ電話会議では、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証しとして今夏に安全・安心な形で東京五輪・パラリンピックを開催する日本の決意を支持するとの首脳声明をまとめている。

状況を俯瞰すると、東京五輪は開催される方向で進んでおり、東京五輪の中止を求めることは事実上できない。そうだとすれば、ホスト国であるわれわれ日本人は今、何をしたらいいのか。それは開催のための“準備”ではないか。

コロナと東京五輪の「両立」する手立てはないのか

「オリンピックのために、毎日毎日、練習してきて、これで出れなかったら何のためにやってきたのか……」

都庁
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/voyata

かつて、こんな言葉を発したアスリートがいる。モスクワ五輪(1980年)の参加をめぐり、現在JOCの会長を務める山下泰裕ら23競技の選手・コーチ約100人が集まり、涙の訴えを起こした。しかし、同年5月24日、JOCはモスクワ五輪への「不参加」を決定する。いまから41年前の“悲劇”である。

ワクチンの接種が始まったとはいえ、まだまだ新型コロナウイルスに対しての恐怖心は強い。この状況下で、大きな声で「東京五輪を開催したい」とは言えない空気になっているが、東京五輪を目指すアスリートたちの“心の声”はどうだろうか。

東京五輪の開催が決まったのは2013年9月。アスリートたちは7年半前から東京五輪の舞台を目指して準備をしてきた。スポーツ選手のピークはさほど長くない。4年に一度のオリンピック。今回が最後のチャンスとなるアスリートもいる。自分の素直な気持ちを発信できず、開催されることを祈りながら、黙々とトレーニングに励んでいるアスリートたちも多いにいるに違いない。

緊急事態宣言下でも必要に迫られて通勤電車に揺られて会社に向かう人は少なくない。それはコロナとの共存を図りながら、勤務先の企業や経済をまわしていくためだろう。東京五輪でも「両立」するための手立てが取れないだろうか。

徹底した感染防止対策で日程を終えた全豪オープンに学べ

現状、大会の運営方法で決まっていないことは多い。観客は入れるのは入れないのか。世界中から集まる選手や関係者をどのように受け入れるのか(一定条件を満たせば入国後2週間の待機免除をするのか)などを早めに決定することが重要だ。

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