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仏、「肉抜き」給食で論争に

写真)ビーガン・ベジタリアン向けハンバーガー ベルリンにて 2018年1月25日
出典)Steffi Loos/Getty Images

Ulala(ライター・ブロガー)

【まとめ】

・リヨンで学校の食堂に一時的に肉を出さないことが決まり論争に。

・一部の大臣はイデオロギーに基づいた決定だとして批判。

・個人の「食」の概念に対し、複数の問いが突きつけられた。

先週フランスでは、リヨンで学校の食堂に一時的に肉を出さないことが決まり、各方面から大きな反発を受けた。「緑の党」所属のグレゴリー・ドゥセ市長は、政府から課された新型コロナウイルス対策の規則を実現するための措置だと主張するが、一部の大臣は政治信条(イデオロギー)に基づいた決定だとして批判したのだ。

■ お皿にイデオロギーをのせるな!

発端は、22日からリヨンでは複数あった給食のメニューが一つだけになると報じられたことだ。そのメニューでは肉を使わないため、リヨンの右派から反発を受けているという。

その記事に反応したジェラルド・ダルマナン内相は、給食から動物性の肉の排除について、フランスの農家や食肉業者に対する「容認できない侮辱」、「モラルを説き、エリート主義の緑の党は、大衆のことを考えていない。学校の食堂でしか肉を食べられない子どもはたくさんいる。」と批判した。

同じく、ジュリアン・ドノルマンディ農業・食料相は、「子どもたちの皿にイデオロギーをのせるのはやめよう。」と訴え、「子どもたちに良く育つのに必要なものを与えようではないか。肉はその一部だ。」と批判したのだ。

また、反発した畜産農家ら数百人は、22日、家畜と共にトラクターで市庁舎前に集まり「イデオロギーの押し付けはやめろ。」と抗議デモを行い、生徒の保護者は市の決定に反対し、弁護士と相談のもと肉無しのメニューを停止してもらえるよう、26日金曜日にリヨンの行政裁判所に訴えを提出する予定とした。

■ リヨン市長の説明

写真)フランス、リヨン市長グレゴリードゥセ 第107ツールドフランス表彰式にて 2020年9月12日
出典)Christophe Ena – Pool/Getty Images

その批判を受けて、リヨンのドゥセ市長は、これは政府によってもたらされた新型コロナウイルス対策の規則に対応するためだと反論した。リヨンの学校の給食では、魚類と卵の提供は続けても、すべての子どもにバランスの取れた献立を実現できることを強調したのだ。

実は、この肉無しの単一メニューというやり方は、昨年6月までリヨン市長を務めたジェラール・コロン氏が最初に行った施策だった。去年、新型コロナウィルスの第一波のさなか、外出制限期間が終了後、学校では今まで存在しなかった規則が追加され混乱に陥った。

そのため、今までにない作業が増加しても子供たちに温かい食事を提供できるように、一部業務を簡略化することになったのだ。その一環として子供たちが選べるよう複数用意されていたメニューを取りやめ、単一メニューとした。肉無しの単一メニューは5月から7月まで提供されたが、その時はなんの論争もおきなかったのだ。

当時この決定を下した理由としては、以前は2種類のメニューが提供されていた時、約半分の生徒が嗜好や習慣や宗教などの理由で、肉以外のメニューを選んでいたからとしている。そのような状態を受け、単一メニューとする際に肉の方のメニューを取りやめにしただけで、菜食主義というようなイデオロギーによる決定ではないというのだ。

■ 保健相と、環境相はリヨン市長擁護

政府の内相と農業・食料相は反発したものの、保健相と、環境相は擁護にまわり、政府内でも意見が分かれている。

オリビエ・ベラン保健相は、自分の子供たちのためにベジタリアンの食事を用意したこともあり、ショックも受けないし、スキャンダルとも思わないと述べ、バルバラ・ポンピリ環境相は、菜食主義の食べ物は、バランスの取れていない食事になるという、使い古された決まり文句が使われることを残念がった。

■ 学校でのアルコールが禁止されたときの状況と似ているという声も

グルノーブルの市長は、この論争は、1954年にピエール・メンデス・フランス氏が、アルコール中毒を防ぐために学校でワインを提供するのを禁止しようとしたときの論争に似ているという。当時は、子供たちにアルコールを飲ませることは病気の予防になると信じていた家庭もあったし、小学校、中学校、高校の食堂でもアルコールを出すことは普通だった。そんな中マンデス=フランス氏は、子供の成長のために、アルコールより牛乳を飲むことを推奨したのだ。そのため大きな論争が起きた。

しかし、最終的には14歳以下の子供のアルコールを禁じることとなり、1956年に小・中学校ではアルコールを出すことが禁止された。それでも14歳以上は水で薄めたワインを飲む権利は維持されたので高校では提供され続けたが、1981年にようやく禁止となった。

グルノーブルの市長によれば、子供の成長のためにアルコールではなく牛乳が推奨されるのは今では当たり前のようなことだが、当時は、今回の肉を提供しないということと同様に衝撃的なことだったというのだ。

■ 今後はどうなるのか

今のところリヨンの肉がでない給食は短期間のことで、このまま継続されてもいずれは肉料理も選べる複数メニューに戻ることになっており、どちらかというとリヨン市長に対する批判は治まりつつあるようだ。だが、この論争により人々の中にはいろいろな疑問が残った。

リヨンの給食の肉排除の論争は、各個人が持っている「食」という概念に対して、複数の問いを突き付けられる論争となったのは間違いないだろう。

参考記事:

À Lyon, un menu unique dans les cantines scolaires à partir de lundi

Vif débat sur les menus uniques végétariens servis temporairement à Lyon

Menu sans viande : Olivier Véran et Barbara Pompili volent au secours du maire de Lyon

Le menu sans viande des écologistes dans les cantines de Lyon n’est pas au goût du gouvernement

 https://www.rue89lyon.fr/2020/05/08/deconfinement-a-lyon-quelles-mesures-a-partir-du-11-mai/

Menu sans viande à la cantine: la polémique rebondit sur l’interdiction du vin à l’école par Mendès-France

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