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「“今日この撮影か、しんどいなあ”ということはなくなった」 オリラジ藤森がたどりついた“競わない楽な生き方” 藤森慎吾さんインタビュー#2 - 山内 宏泰

「やめると言い出したとき、相方がいちばんびっくりしてた」 藤森慎吾が語る、吉本をやめないと叶わない“目標”とは から続く

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 昨年末に吉本興業を退所した、オリエンタルラジオの藤森慎吾さん。相方の中田敦彦さんは家族でシンガポールに移住したが、コンビとしての活動は継続するという。

 そんな藤森さんが、2003年のオリラジの結成、「武勇伝」のネタや「チャラ男」キャラでのブレイクなど、半生を振り返った書籍『PRIDELESS(プレイドレス) 受け入れるが正解』が話題だ。「こだわらない 逆らわない 競わない 諦めない」という気取らない考え方の理由や、今後の芸能生活について話を聞いた。(全2回中の2回目。前編を読む)

藤森慎吾

本のタイトルが『PRIDELESS』になった理由

――暴露本ではないとなると、さてどんなことが書いてある?

 これまでの自分の経験から、ちょっとした生き方のコツみたいなものが導き出せたらいいかなと思って、本の企画をスタートさせたんです。やってみると、本づくりっていいもんですね。自分のことをぐっと客観視するきっかけになって。こんな機会でもないと、自分のことをここまで真摯に見つめ直すなんてことはないですから。

 自分の内側に深く潜ってみてよくわかったのは、ほんとに自分は何も持っていないんだな、からっぽだなということ。ものすごく特別な才能があるわけでもなし、小さいころから心に決めて打ち込んできたものもない。あまりにふつうすぎるし、いつだって周りに頼ってばかりでここまでやってきた。

 逆に言うと、よくそんなふうでこれまで生きてこられたなと、自分のことながら半ば呆れ、半ば感心してしまいました。

 そこまで考えを進めてみると、ふと気づきました。ああ、これが自分の特質なのかもしれないなと。何もないし、からっぽだ。だったらそれを認めてしまおうか。確固たる自分の意志やプライドを持たず、そういう自分を表明して生きていってもいいかなって。

 それで本のタイトルも『PRIDELESS』って付けてもらって、こだわりなくすべて受け入れる生き方を全面的に打ち出してしまえ! ということになりました。

 この「プライドレス」って言葉、僕はけっこう気に入ってるんですよ。すごく端的に僕のことを表しているように思うんですけど、どうですかね?

僕にとっては受け入れるのがいちばん楽な生き方

――むやみに周りとぶつかるのではなく、すべてを受け入れるのが正解とみなす考え方・生き方に、共感する人はけっこういるのでは? 実践するのはなかなか難しそうですが。

 そうなんですかね。僕にとってはそれがいちばん楽な生き方だからなあ。結局僕はいつだって、楽なほうへ楽なほうへと流れていくことばかり考えていますから。

 人とぶつかりたくないと思えば自分から負けちゃえばいいし、仕事でもむりやり壁を乗り越えようとするより迂回してみたほうがいいパフォーマンスになったりすることもあるだろうと思ってしまう。

 そりゃ芸能界に入りたてのころなんかは、根性入れて精神すり減らして、生活を削ってがんばってナンボだという姿勢が大事かとも考えたけれど、やっぱりあまり性に合わなかった。40歳も近い年頃になると、ガッツで勝負するのとかはもういいやとなってくる。

好きなことばっかりを仕事としてやらせてもらってます

――たしかに年齢的な問題もあるかもしれませんね。

 そうですね。僕は今のプライドレスな状況と姿勢が、とにかく居心地いいんですよ。そうすると意外にプライベートも仕事もうまく回り始めていく。

 このところはテレビの仕事ももちろん楽しくやらせていただきながら、YouTubeのチャンネルを持って、その中の企画で故郷の長野に森を買ってみたりとか、オンラインサロンも始めたりと、好きなことばっかりを仕事としてやらせてもらってます。

 どの仕事をしていても自分に無理がないし、「ああ今日この撮影か、しんどいなあ」というようなことはなくなりました。

つらい仕事を通して気づいたこと

――以前はつらいと感じる仕事もあったのですね?

 この現場は毎回たいへんだな、というのは正直ありましたよ。若い芸人なんて無理が利いてこそという面ってあるじゃないですか。テレビ番組のロケで1日20軒くらい飲食店回るとか、パネラーの方が全員大先輩なのに自分がMCとして番組回さないといけないとか。

 それでも最初は健気にね、これを乗り越えてスキルつけて、ゆくゆくはゴールデンタイムの人気番組でどっしりとした司会をやれる大物芸人にならねば! とがんばりましたよ。

 でも、うまくいかないものはうまくいかないし、もしそういう目標を実現できたとしても、自分がつらい思いをしているようでは意味がないといつしか気づいたんですよね。

 芸能界の王道で活躍できている人は、つまり適性があったということでしょう。その人にとっては、最も華やかな場でスポットライトを浴びるのが楽しいだろうし、そこへ向けてむりなく努力できるんですよ、きっと。

 僕はといえば、違う方向でがんばっていきたいと、自然に考えるようになっていった。「ゴールデンタイムの番組MC」という成功モデルに囚われ過ぎなくてもいいや、と途中から思えたということです。

僕はとことん「競わない」というポジションが楽

――競争から降りると、「あいつは負けた」と思われそうで、悔しくはないですか?

 ないです、ないです。僕から見て、すごいなと思う人は素直にすごいなと思うし、敵わないなと思ってしまう。お笑いの世界だったらいま、EXITのふたりの勢いがすごいじゃないですか。彼らと「チャラ男」キャラで競おうとしたって、ぜんぜん敵わないですしね。僕がひと昔前にやっていたのとは別のかたちで、チャラいキャラの新たなスタンダードを彼らがしっかりと打ち立てている。それに対抗しようとは思わないです。

 僕はとことん「競わない」というポジションが楽なんです。

「あっちゃん、カッコいぃ~」のネタを書いたのはあっちゃん

――いま後輩芸人のEXITにしたように、相手をさらりと褒めてしまえるところは、ひとつの特質ですね。

 僕は平気でそういうこと言っちゃいますね。たしかにお笑いの人って、他の芸人をむやみに褒めないところがある(笑)。そういう人はやっぱり自分にちゃんと自信があるんでしょうね。「いやいや、言ってもオレのほうが上だし」と。

 それはそれでカッコいいと思いますよ。うちの相方もそういうタイプですしね。だから僕にデビュー当時から言わせてたんでしょう? 武勇伝ネタで「あっちゃん、カッコいぃ~」って。その決め台詞、僕は何万回叫んできたかわかりませんけど、あのネタをつくって台詞書いたのはあっちゃんですからね。自分で自分を褒めさせ続けてきたという(笑)。

 ひょっとすると僕は、知らずあっちゃんに洗脳されてきたのかもしれない。来る日も来る日も「カッコいぃ~」と言わされて、そういうのが自分の血となり肉となって、僕の人生が変わっていった可能性はありますね。

「モテるでしょ」と言われるワケ

――聞いていますと、人を立てることのできるプライドレスな人って、たいへんモテそうな気もします。

 そういえば最近YouTubeのチャンネルの企画で、女性を助手席に乗せてのドライブトークをよくやってるんです。観た人から「藤森さんって、こりゃモテるでしょ」と言われることがチラホラあります。

 なぜかって、僕が相手の話をずっと聞いて、相手のこと引き出そうとしているからなんですって。

 意外でしたけどね。僕が思い描く「モテる人」って、自信を持って自分のことや夢について語れるようなタイプだから。

 まあ僕が聞き役になりがちなのは昔からだし、単純に女の子の話を聞いているほうが自分も楽しいから、そうしているだけなんですけどね。

人生丸ごとエンターテインメントに

――『PRIDELESS』の中には、自分の人生を丸ごとエンターテインメントにしていきたいという言葉が出てきます。これが今後の活動の指針となるのでしょうか。

 たしかにいまやっている活動は、すべてその目標につながっていますね。自分で発信できるメディアが増えて、自分のオフの姿なんて垂れ流したくないという人も多いと思うけど、僕はけっこう平気なほうで。それで見てくれる人がいるんなら、ぜひどうぞ僕のいろんな姿見てくださいという感じです。

 いつでも見られているということになれば、暴露記事とか書かれる心配もありませんものね。「オモテであんなに爽やかなのに、ウラではこんなイヤな人だった!」なんて言われずに済む。

 人生丸ごとエンターテインメントにするって思っておくと、いつもウラオモテない生活をすることにつながって、イヤなヤツになりようがなくなる。性格矯正につながる効果だってあるかも。

 いや、別に何かやらかしてしまう恐れはいまのところ、全然ないんですけどね。なにしろ日々まったく無理してないから、鬱屈なんて全然溜まってないんです。

 でもそういえば、寝る時間を削って事務作業するのだけはちょっとストレスでした。マネージャー問題は、早めに何とかしなくちゃですね。

(山内 宏泰)

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