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政治未経験だったトランプ前大統領が受け、政治家30年以上の菅総理が受けない理由 ~ 50年単位で変遷してきたラジオ時代、テレビ時代、インターネット時代と政治 ~

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菅政権の苦境が止まらない。

外形的には、度重なるスキャンダルが特に効いているように見える。今年の主な動きだけでも、1)自民党総裁選で菅選対の事務局長だった吉川元農水大臣が収賄罪で1月に起訴され、2)2月1日には緊急事態宣言下で銀座のクラブを訪問していた(しかも虚偽の説明をしていた)松本、田野瀬、大塚の3自民党議員が離党し、また、その後、3)自民党の白須賀議員も元アイドル・モデルとの緊急事態宣言下でのラウンジ通いが発覚して離党と、書いているだけで疲れてくる。

その間、オリンピック組織委員会の森会長の舌禍事件と後任会長を巡るドタバタ劇もあった。そしてついに今週は、菅総理の長男による過剰接待で、総務省幹部が処分を受け、農水省幹部も1)の関連で処分されるという混乱ぶりだ。

ただ、内閣支持率は、政権発足直後から比べると落ちては来ているが、実は2月の上旬~中旬の新聞各社の調査では、1月に比べて横ばいかむしろ持ち直しているきらいすらある(大体、各社とも30%台前半の支持率)。さすがに、総務省のスキャンダルは、菅総理自身が大臣や副大臣を歴任した「ホームグラウンド」とも言うべき場所で発生していて、しかも自らの息子が引き起こした問題でもあり、更なる支持率の低下につながると見るのが妥当だが、それでも、私見では、意外に支持率は底堅いのではないかと見ている。

上記の森会長はちょうど約20年前の2000年4月から約1年間、総理大臣を務めているが、調査にもよるものの、支持率は、政権発足から2か月で約2割に落ち込み、神の国発言や、中川官房長官の女性問題、閣僚の党費をマンション会社が肩代わりしていた事件、などのスキャンダルに見舞われる中、以後、ほぼ10%台という危険水域を推移し続けた。

当時と今の野党の強さの違いや、森内閣の場合は自らの舌禍(神の国以外にも「無党派層は寝ていて欲しい」発言や、えひめ丸事故後の対応等)の要因もあるため、単純比較は出来ないが、私はここに、テレビ全盛時代と、最近のインターネット興隆の時代の違いを感じている。つまり、テレビ時代とインターネット時代では、政治のゲームが変わってきているということだ。本稿で言いたいことはすなわち、菅政権の本当の危機はスキャンダルの多発ではなく、このゲームチェンジに姿勢が追い付いていないということなのだが、以下、放送・通信の推移と政治ゲームの変化を簡単に略述しつつ私見を述べてみたい。

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今から約100年前の1910年代に、米国で無線通信が広まりだしたと言われている。その頃は、ラジオというより、無線の電信と言った方が適切だったようだが、世界初のラジオ放送局は、1920年の米国のKDKAとされている。いずれにせよ、大体1910年頃からラジオ時代が幕を開けるわけだが、新聞記者などの解釈を入れることなく、また講演会などよりかなり大規模に、市民一人一人に政策・想いを直接に言説で伝えることが可能になっていった。政治における言説・言葉の意味・重みが、新聞中心時代と比べて益々大きくなっていったと想像できるが、要するにこの頃は、言説・言葉がある意味全てであった。

それから約50年後の1960年。アメリカ大統領選において、はじめて、候補者同士の討論会がテレビ中継されることになる。有名なケネディVSニクソンの討論だ。ハーバード大ケネディスクールに留学していた私にとっては、同校の講義で度々取り上げられていたので何度か耳にしたり学んだりした題材だが、この時の討論は、ラジオのリスナーはニクソンが議論で勝利したと感じ、テレビの視聴者はケネディが勝ったと判断したと言われている。つまり、言葉そのものもさることながら、視覚情報など、全体的な姿がより大きな意味を持つようになり、言説以上に「言動」、すなわち、「見た目」や「雰囲気」なども大事になっていたと理解できる。テレビ時代の到来である。

そして更に50年後の2010年頃に、当時のオバマ大統領・オバマ陣営がSNSなどのインターネットを活用しはじめ、そしてトランプ前大統領にいたっては、ツイッターが存在していなければ大統領になることはなかったと言われる状態となっている。インターネット時代がいよいよ本格的に到来している。この時代の最大の特徴は、言うまでもないが、情報ソースが非常に多様になり、市民の選択肢が格段に増えたということ、すなわち、市民は自分が見たい・聞きたいと思えるニュースソースにネットで(象徴的にはスマホで)で自由に当たれる、ということである。

テレビやラジオや新聞は、放送局や社数が限られているので、市民から見ると、触れられる情報・情報源がどうしても限られてきてしまう。裏を返して言えば、新聞記者やテレビ局は、もちろん、右だの左だのの「傾向」はあっても、限りある電波や紙面を使う責任ある情報提供者として、出来るだけ公平・公正・中立に報道しようと心がける傾向があった。紙面やテレビニュースなどで、良く「討論」的に、二人の異なる主張をする識者を並べるのはその典型である。

しかし、ニュースソースが多様化しているインターネット時代には、市民は、「紙面全部」や「番組全体」を見ずとも、自分の気に入った識者の主張だけ見れば良い。より進化すると、そもそもアルゴリズムによって、自分の気に入った分野の気に入った主張をする識者の意見だけを動画で見たり、文章として読んだりするように設定できる。読みたいもの、見たいものだけが送られてきて、それだけで過ごせる時代になってきている。言説のラジオ時代、言動・雰囲気・見た目のテレビ時代に加え、インターネット時代は、対象と如何に感情(好き嫌い)で結びついているか、が大事になる。

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こう考えると、なぜ、政治のド素人だったトランプ前大統領が、前代未聞レベルの不支持率の高さを論難されつつ、不思議と、岩盤とも言うべき支持層の厚さによって比較的安定的に政権を運営出来ていたかが分かる。トランプ前大統領は、ネット時代の申し子とも言うべき政治家であり、ファンとも言うべき市民と直接に感情で強く繋がっている。

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