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日銀点検を読む:期待インフレに考慮、フォワードガイダンス見直しも=下田・一橋大特任教授


[東京 26日 ロイター] - 一橋大学の下田知行国際・公共政策大学院特任教授は、日銀が政策点検に踏み切った背景について、現行政策の成否を判断する上で最も重要な指標となる期待インフレ率の水準が2013年の量的・質的金融緩和(QQE)スタート時点の水準まで戻ってしまったことに対する危機感などがあると指摘した。3月の点検では、期待インフレ率を引き上げる政策ツールとしてフォワードガイダンスの見直しが有力な手段になるとの見方を示した。

    下田氏は日銀出身。イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運営について、10年物金利(長期金利)の誘導目標をプラス圏のレンジに設定することや、2年物金利もしくは5年物金利を新たに操作対象に加えて「3点支持」にすることなど、今後の金融政策に対する自身のアイデアも披露した。

    <期待インフレの水準に危機感>

    下田氏は、QQEはデフレ脱却のために「期待インフレがゼロ%の望ましくない均衡」から「2%の望ましい均衡」に移行させる狙いで行っているものであり、期待インフレが出発点に戻った以上、「その原因の検証が政策対応の出発点になる」と指摘する。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融政策の目標や戦略の見直しを行っていることも、日銀が点検実施を決断した背景にあるとみている。

    FRBが一時的な物価の上振れを容認する「平均インフレ目標」を導入し、ECBも採用を検討中とされる中、この考え方を期待インフレの引き上げの必要性が最も高い日銀が採用しないのは出遅れ感を与えかねないと指摘。日銀もフォワードガイダンスの見直しを通じて「平均インフレ目標」を事実上採用することも考えられるとした。

    日銀の政策は、量にひも付けた「オーバーシュート型コミットメント」と金利にひも付けたYCCに関わるフォワードガイダンスが混在し複雑になっているとして、下田氏は「この際、YCCの金利操作にひも付けたフォワードガイダンスに一本化し、そこに『オーバーシュート』の考え方を取り入れればシンプルになる」との見方を示した。

    <10年物金利のレンジターゲット>   

    下田氏は、日銀が2016年9月にYCCを導入した時から、金融機関の収益や生保・年金の運用に生じる副作用対策としてイールドカーブをスティープ化させることが課題だった、と指摘。日銀が今回の点検で長期金利の操作目標の柔軟化や弾力化を図るとみている。

    声明文ではすでに金利について「上下にある程度変動しうる」とされており、現状の運営方針との違いをより鮮明にするため、「操作目標をレンジターゲットにして、『ゼロ─0.2%を中心にある程度柔軟に変動することを許容する』としてはどうか」と提案する。   

これまではゼロ%を中心にプラスマイナス0.2%といった上下で同じ幅のレンジがイメージされていたが、「ゼロ─0.2%」とプラス圏を中心レンジとすることで「マイナス圏よりプラス圏が望ましい、イールドカーブのフラット化は望ましくないという明確なメッセージになる」との見方を示す。

    <イールドカーブの「3点支持」>

    長期金利のレンジターゲットをプラス圏に置いてイールドカーブのスティープ化を促した場合、長期金利の上昇を許容し、緩和姿勢が後退するとの懸念が生じる。その点について、下田氏はイールドカーブの「3点支持」が工夫として考えられるという。

「緩和の効果を実体経済に及ぼす上で重要な家計や企業の借り入れ金利は、2年物や5年物が意味を持つ。従来の政策金利と10年物金利に加え、新たに2年物金利か5年物金利を操作対象金利とし、ここを低位に保つことで緩和は継続というメッセージを明確にできる」と主張。さらに「それを比較的自由に動かせるようにしておく、というのが将来的な政策の柔軟性や機動性を確保する観点でも有効だ」と指摘する。

    その上で「為替が落ち着いた動きで、加えて株高の今は『3点支持』を導入する必然性はないかもしれないが、導入のメリットが実感される局面はいずれ訪れるのではないか」との見方を示した。

(略歴)1989年東大法卒、日銀入行。国際決済銀行(BIS)派遣、金融機構局国際担当総括、国際通貨基金(IMF)日本代表理事代理、松山支店長、企画局審議役などを経て2018年から現職。金融政策(異次元緩和)、金融規制(バーゼル規制交渉)、決済・金融市場インフラ(国際基準策定)で政策の企画・立案や国際交渉を担当。

このインタビューは25日に実施しました。

(杉山健太郎 編集:田中志保)

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