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2011年の温室効果ガス排出量発表。京都議定書達成はとりあえず確実

今回は久しぶりに地球温暖化のネタで。2回シリーズで。
先週、2011年度の日本の温室効果ガス排出量の速報値 が発表されました。


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2011年度の排出量は、約13億700万トン。京都議定書の基準年である1990年度比で+3.6%、前年度比で+3.9%でした。
と言っても、何のことかわからないですね。少し解説してみましょう。



1.京都議定書の目標は-6%、実排出量は直近4年間平均+0.2%
京都議定書という条約で、日本は1990年比6%削減が義務づけられています。
なお、この6%削減は、2008~2012年の5年間の平均での目標です。


排出量基準年比増減
1990年度(基準年)12億6100万トン
2008年度12億8100万トン+1.6%
2009年度12億0600万トン-4.4%
2010年度12億5800万トン-0.2%
2011年度13億0700万トン+3.6%
---------------------------------------------------------
2008~2011年度平均12億6300万トン +0.2%


2008~2011年度の4年間平均で+0.2%
あれ?全然-6%に届いていませんね。しかし実際には、これで京都議定書の目標は十分に達成できているのです。


それは、この+0.2%という実際の排出量から、京都議定書のルール上引き算できるものが3種類あるためです。



2.引き算できる3種類。森林吸収源、政府と電力会社の買ったクレジット
(1)森林吸収源
京都議定書上、森林による吸収分を差し引くことができます。この吸収分は、実際の吸収量を計算するのではなく、条約で国ごとの上限が定められています。
日本の森林吸収量の上限は、年4767万トン。基準年比で3.8%分です。


なお、4767万と半端なのは、条約では1300万炭素トンと規定されているのですが、これを二酸化炭素に換算したため。
炭素の分子量は12、二酸化炭素は44なので、1300÷12×44=4767ということで。



(2)政府が税金で買ってきたクレジット
ルール上、他国から排出量(クレジットと呼ぶ)を買ってくることもできます。


もともと、日本は、目標の-6%、森林吸収の3.8%分を差し引いて-2.2%の達成は難しそうだったので、年1.6%分は税金で買ってくることにしていました。
基準年12億6100万トン × 1.6% × 5年 = 約1億トン を購入予定です。


これまで約1500億円の予算を計上して、計9756万トンを購入しています。
単純計算でトン単価1500円ですね。


買ってきた相手の国別でみると、
チェコ 4000万トン
ウクライナ3000万トン
ポーランド 400万トン
ラトビア 150万トン
中国1050万トン
ブラジル 800万トン
韓国 230万トン
メキシコ 90万トン
インド30万トン


チェコ、ウクライナ、ポーランド、ラトビアは、京都議定書上、日本と同じく削減目標が義務付けられた先進国で、目標を達成して余った分を売却しています。
中国、ブラジル、韓国、メキシコ、インドは、削減目標のない途上国で、先進国の資金で削減プロジェクトを行い、その削減分が新規にクレジットとして発生します。



(3)電力会社が買ってきたクレジット
このほか、電力会社が自主的にクレジットを買ってきて、政府にタダで寄付している分があります。
何で電力会社がそんな慈善事業みたいなことをしているかというと、彼らは自主的に排出量の目標を決めていて、超過した分はクレジットを買うことにしていたから。


電力会社が立てていた排出量目標は、電力量1kW時あたりのCO2排出量(原単位と呼びます)を、1990年比20%削減の0.34kg-CO2/kWhにすること。

これが達成できるかは原子力発電の稼働率に依存していて、定期点検もあるので100%は無理としても、85%ぐらいなら大丈夫だったのですが、いずれの年も低い数字に止まり、目標達成はできませんでした。


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原単位原発稼働率購入クレジットクレジット反映後
2008年度0.444kg/kWh60.0%6400万トン0.373kg/kWh
2009年度0.412kg/kWh65.7%5200万トン0.351kg/kWh
2010年度0.413kg/kWh67.3%5700万トン0.350kg/kWh
2011年度0.510kg/kWh23.7%3000万トン0.476kg/kWh


4年間で、購入クレジットは2億300万トンですか。
仮に政府と同じ1500円/トンの単価で買っていたら、3000億円ですね。う~ん、さすが電力会社。



3.3種類を引き算すると、直近4年間平均は-9.2%
ということで、この3種類を引き算してみましょう。


実排出量吸収源 政府電力会社差引後基準年比
基準年12億6100万

200812億8100万4767万1951万6400万11億5000万-8.8%
200912億0600万4767万1951万5200万10億8700万 -13.8%
201012億5800万4767万1951万5700万11億3400万 -10.1%
201113億0700万4767万1951万3000万12億1000万-4.1%
-----------------------------------------------------------------
平均12億6300万4767万1951万5075万11億4500万 -9.2%

+0.2%-3.8%-1.6%-4.0% -9.2%



(※)政府のクレジットは、総購入量の9756万トンを、毎年同じ量だけ反映させると仮定して、京都議定書の約束期間5年間で割ったもの


ということで、直近4年間の平均で-9.2%

その内訳は、実排出量+0.2%、森林吸収源-3.8%、政府購入のクレジット-1.6%、電力会社購入のクレジット-4.0%

京都議定書の目標達成には、5年間の平均で-6%でいいわけですから、2012年度は、(-6×5)-(-9.2×4)=6.8 で、+6.8%で大丈夫


仮に電力会社のクレジットがゼロとしても、森林吸収源3.8%と政府のクレジット1.6%を足せば、6.8+3.8+1.6=12.2
実排出量が基準年比+12.2%でもいいなら、原発の再稼働が全くないとしても、さすがに大丈夫です。


ということで、京都議定書の目標は達成できそう、というのが今回の結論。
こういう達成の仕方でいいのか、疑問は残りますけどね。



次回は、原発と温室効果ガスの関係について、もう少し掘り下げてみます。

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