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ほぼ全員がムダと思っている「朝礼」を、日本企業がやり続ける本当の理由

社員や部下をまとめあげるには、どうすればいいのか。年商10億円の企業を経営する事業家bot氏は「会社員のほとんどは凡人であり、実際の会社経営では理想的な組織論は通用しない。毎日同じ時間に出社するなど、あたりまえのことを社員に浸透させるためには、一見バカバカしい朝礼を実施することが効果的だ」という——。

ビジネスチーム ※写真はイメージです - iStock.com/AndreyPopov

「個々人が主体性を持って動く組織」は参考になるのか

社員や部下をどうまとめあげればいいのか。経営者や管理職は常に悩んでいる。経営者の端くれである私も、「いいやり方はないか」といつも探し回っている。

そうした組織経営での最近の話題書といえば、2018年に出版された『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版)だろう。

『ティール組織』の要旨は、「組織の目的のために共鳴しながら活動する組織が理想の組織」「ティール組織ではマネージャーやリーダー、上司や部下といった役割が存在しない」というものである。

具体的には、組織の進化過程を、Red(個人による支配的なマネジメント)→Amber(役割をまっとうする)→Orange(成果主義で、成果に応じ役割が変わる)→Green(主体性と多様性が認められる)→Teal(組織が一つの生命体のようにはたらく)という順に定義し、Tealを理想とするというものである。

確かに、ティール組織のような、個々人が主体性に基づいて動きながら、組織の大目標に向かって調和して動いていける組織体は理想だろう。しかし、実際の企業経営で、本当に参考になるものなのだろうか。

習慣と制約をつくるのがマネジメントの役割

私は起業し、ここ5年で会社をゼロから年商10億以上、数十名規模まで拡大した。創業当初は、「個々人が有機的に働く組織」まさにティール型のような組織を理想と思っていたが、現実と理想の間でだんだんと判断を現実側に倒していった。

考え込んでいるビジネスマン ※写真はイメージです - iStock.com/pinstock

その中で、かつて「バカバカしい風習だな」と思っていたことを、逆に導入する側に回ることが何度もあった。その中で代表的なものが「朝礼」だ。

会社が小さいときは、そもそも黙っていてもやる気があるから創業期に参画したわけで、働くことが好きなメンバーが集っている。また、残業したくないとか、朝早く来るのは嫌だとか、そういう細かい話をするメンバーはいないし、そうじゃないと会社は大きくならない。

しかし、事業を拡大するにあたり、どうしても「松竹梅」の「梅」の層を活用しないと、手が回らなくなってくる。そのとき、「梅」のメンバーをマネジメントする方法として、「朝礼」「日報」のような一見バカバカしい手段に着地するのである。

面倒な「朝礼と日報」は馬鹿にできない

自分で会社の経営を始めると、「朝決まった時間にオフィスに来る」という当たり前のことが、まったく当たり前ではないことに気付かされる。

そうはいっても自分もかつては遅刻ばかりの人間だったので、そういう人の振舞いを批判する資格は全く無いが、「ただ人間が集まっているだけ」の組織は、ティール組織でいう「Red(個人による支配的なマネジメント)」にも到達せず、ただの人だかりでしかないのである。

起業をするということ、経営をするということは仕組みをゼロから作るということである。

多くのメンバーが「当たり前のこと」ができない。その現実があるのなら、「朝決まった時間に集まり、今日の予定を話す」「業務が終了したら、今日やったことを報告する」という同調圧力と監視の仕組みを導入するしかないのだ。

「イニシエーション」としての理不尽研修

大手広告代理店の電通では、2019年度まで、新卒向けに「富士登山」という研修が行われていた(コロナ禍での対応状況は不明)。

広告代理店の仕事と「富士登山」はほぼ関係がない。「理不尽な研修」と思う人も多いだろう。だが、そうした「理不尽な研修」は、会社の結束を高める上ではそれなりに意味があるというのもまた事実である。組織の熱量と結束力は、ウチとソトの文化の差に拠って形成される。

富士山の混雑した登山道 ※写真はイメージです - iStock.com/Ryosei Watanabe

かつて鉄の結束を誇った自民党竹下派・経世会が「一致団結箱弁当」と形容されたが、これは、派閥の週例会で全員が同じ弁当を食べていた(他の派閥はいくつかから選べるという形であったようだ)ことに由来する。

要は、組織の力というのは、「組織の理屈」を個々人に押し付ける力とニアリーイコールであり、「全員で富士山に登る」とか「全員で同じ弁当を食べる」というような、意味の分からない風習・習慣こそが組織に共通の思い出を根付かせ、結束力を強くするのである。

文化人類学には「イニシエーション」という概念がある。ある集団や社会で、正式な成員として承認されるための通過儀礼を指すものだ。電通の「富士登山」は、新しく会社組織の成員になる人間に課されるイニシエーションの一つと理解することができる。

いまでは娯楽化しているバンジージャンプも、バヌアツにおける成人の儀式「ナゴール」を起源とすると言われ、勇気を示すことで「一人前の男」として共同体に承認されることを目的とした儀式であった。

このようなイニシエーションは、会社のような共同体においても(当然安全に配慮して実行すべきではあるが)、結束力を高めるにあたっては実は有効であるのではないかと私は考えている。

「宗教っぽい会社」はダメなのか?

転職を考える際に、「あの会社は宗教っぽいからやめておこう」という判断をする人は多いだろう。その判断は半面で正しい。「宗教っぽさ」を背景に違法労働を強いる企業は少なくない。

他方で、アップルやディズニーなど、熱狂的なファンを生み出す企業は、ある種の「宗教っぽさ」に基づいていることも間違いない。そうした組織は、熱狂を生み出すだけの明確な価値基準をもっている。そうした価値基準と自分が合うのであれば、勇気をもって身を投じてみるのも一つの選択であると私は考える。

ほとんどの会社が凡人を使ってビジネスを展開するしかない

ネットフリックスは、経営危機に陥った際に、1/3の社員を解雇し、有能な社員だけを残したところ、逆に会社が急成長したという逸話がある。しかし、日本ではそもそも解雇規制のハードルが非常に高いし、ネットフリックスのようなサブスクリプションの堅牢なビジネスモデルをもっている会社も少ないだろう。

要は、殆どの会社は、凡庸なビジネスモデルで、凡人を使ってビジネスを展開するしか無いのである。

拙著『金儲けのレシピ』においては、「労働者取りまとめ業」を、典型的な金儲けの一つとして記載したが、実は「労働者を取りまとめ、普通の組織を作ること」自体、非常に工数がかかり、まただからこそ価値が大きいことなのである。

その「普通の組織」を作るためには、「ティール組織」のような理想論を追うのではなく、むしろ使い古された「朝礼」「日報」のような日本的な無駄な風習にこそ注目すべき価値があるのだ。

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事業家bot(じぎょうかぼっと)
経営者
東京大学在学中に起業、のち中退。フランチャイズチェーン企業に事業売却後、売却先企業にて、新規事業及び経営企画管掌の役員を務める。再度起業し、現在年商10億円以上の企業を経営。起業しビジネスを作っていくプロセスの中で、「金儲け」のノウハウが確立していないこと、既存のビジネス書があまり当てにならないことを痛感し、「金儲けのノウハウ」をまとめることを決意。著書に『金儲けのレシピ』(実業之日本社)などがある。
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(経営者 事業家bot)

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