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財政の崖を作ろうとする政治家たち

 私が日本版「財政の崖」なんていう話をすれば‥それなら野党が妥協して、特例公債法が成立したから、と言う人が多いと思うのです。

 しかし、私が本日話そうとする財政の崖はそういう意味ではなく、アメリカ並みの或いはもっと凄い財政の崖の話です。

 日本もこのまま借金が増え続けれるとギリシャのようになってしまうと言って、急に増税路線を打ち出したのが菅総理。そして、その路線を結果的に受け継いだ野田総理。

 しかし、こうして経済が芳しくない状況が続くので増税に反対する政治家が増える、と。

 いずれにしても、日本がギリシャのようになってしまうという意見に対しては、異論を述べる人々が多いのです。何故かと言えば、日本は経常収支が黒字であって、しかも世界一の純債権国であるからです。つまり、政府部門の借金の多さは世界一であるかもしれないが、国家としてみた日本は債務国ではなく債権国であるからだ、と。

 確かにそのとおり。それに、もし日本がギリシャのようになる恐れがあるとすれば、10年ものの国債の利回りが1%を切るなどという状況は起こりえないでしょう。

 従って、財政健全化の努力が非常に重要であるとはいっても、日本がギリシャのようになってしまうかもしれないという台詞には説得力がないとしか思えません。

 否、そんなことを言うから却って財政出動派を勢いづかせてしまうのです

 しかし、肝心なことを忘れてはいけません

 それは、如何に国家が債権国であっても、日本政府が財政破綻を来すことは十分あり得るということです。それは、仮に日本の輸出産業が全体として多額の黒字を計上しているような状況にあっても、赤字で倒産する輸出企業が存在するのと同じようなものなのです。

 では、何故債権国であるのに政府が破綻することがあり得るのか?

 それは簡単なことです。

 つまり、歳入よりも歳出が多いから。

 しかし、そうやって歳入不足が発生しても、それを借金で賄える間は財政破綻を来さないで済むのです。但し、それも、あくまでも借金が可能である間だけの話です。

 今、日本政府には借金をする能力が十分にあります。何故ならば、国債の利回りが1%を切っている
ことで証明されるように、債権者の投資家たちが、まだまだ国にお金を貸してもいいと思っているからなのです。

 では、これほど政府の借金は膨れ上がっているのに、投資家たちは何故まだ国にお金を貸しても大丈夫だと考えるのか?

 それは、一方で、国民の金融資産が1500兆円ほどもあり、かつ日本が国として純債権国であるからです。

 では、どのような状態になったら、投資家たちは日本国債に対し警戒心を持つようになるのか?

 それも簡単なことです。日本が、貿易収支の赤字が続き、そして経常収支も赤字になり、そして日本の国債を保有する外国人の割合が多くなったと実感され始めたときが危ないのです。

 景気を回復させるために財政出動をすべきだと主張する多くの人々は、日本国債を保有する外国人投資家の割合が小さいから大丈夫だと言います。確かに現時点では、まだ外国人の保有割合は小さなものにとどまっています。

 しかし、我が国の1500兆円もあると言われている家計の金融資産は、この10年間ほどそれほど伸びてはいないのです。というのも、10年前にも1400兆円ほどはあった訳ですから。その一方で、国債の発行残高は392兆円から667兆円と70%も増加しているのです。

 幾らなんでも増え方が急すぎると思いませんか?

 念のために言っておきますが、小泉政権以降、公共事業をずっと絞り込んできているのにも拘わらず、こんなに借金残高が急増しているのです。

 つまり、ここで再びまた公共事業を増やすことになったら、そうでなくても急スピードで増えている借金がそれ以上の勢いで増えるでしょう

 しかし、そうやって政府の借金がどんどん増えても、一方で、国民の金融資産の増えるスピードは鈍い。そして、貿易収支の赤字が続く、と。そうなれば、徐々に投資家の国債離れが始まることでしょう。

 経済が回復するまでは無制限に金融を緩和し、そして財政出動を行うべきだという議論がありますが、そのような考えで無制限に国債を発行するならば、いずれ日本もギリシャのようになるのではなく、アメリカのようになってしまうのです。つまり、投資家の国債離れが始まれば、否が応でも財政再建の道を歩まねばならず、そうなれば、今の米国のように「財政の崖」に直面するでしょう。

 そうして、突如として財政再建の道を歩み出すことになれば、結局、経済に急ブレーキをかけることになり、経済は成長どころか後退してしまうでしょう。

 今のイケイケどんどんの姿勢は、今はいいとしても、将来に大きな時限爆弾を設置する結果になることが必至なのです。

 少しばかり想像力を働かせれば、誰でも分かることだと思います。

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