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maddieさんからのご質問~「何故戦後から守ることを決められたこの憲法を今になって壊すのか」にお答えします

ニュージーランドにお住まいのmaddieさんから自民党憲法改正案批判のエントリ-に鍵コメントでご質問を頂きました。鍵コメントではありますが、特に伏せておかなくてもよい内容と思われましたし、大事な質問なので、ここでオープンにして私なりに質問にお答えしたいと思います。

maddieさんのPCは日本語のタイプ機能がなくてローマ字でしか打てないようですので、私が日本語に変換してmaddieさんの質問をご紹介しましょう。

(前略)“アルマゲドン”という映画の広告を見て、憲法改正の話を聞き、このブログにたどり着きました。民主党がどうやって憲法改正をしようとしているのかは読みました。(※民主党ではなく自民党のことでしょうか?また頂いたコメントでは「shiyoishiterunokaha」となっていましたが、おそらくタイプミスかと)じゃあ何故戦後から守ることを決められたこの憲法を、なんで今になって壊そうとしてるのですか?どれくらいの確率でこの案はsupportされているのですか?

何故、自民党、日本維新の会などの改憲勢力はこんなに改憲に執念を燃やすのかを、自由法曹団の意見書から引用しましょう。<自民党憲法改正草案に反対する意見書(自由法曹団)>http://www.jlaf.jp/menu/pdf/2012/120823_01.pdf

2 改憲勢力の狙い自民党草案はじめ各党の改憲案は、

①恒久平和主義の否定(本意見書第3)、
②基本的人権の否定と国家権力の強化(本意見書第4)、
③天皇制を中心とした国家主義(本意見書第2)を共通項とする。その狙いは、アメリカと共に戦争をする国づくりと、弱肉強食と格差・貧困拡大の新自由主義の国づくりにある。恒久平和主義を否定し、9条を改憲して軍隊の存在や集団的自衛権を認めてしまえば、日本の軍隊が、アメリカの戦争に参加し、戦闘行為そのものを行うようになる。地球規模での米軍再編を進めるアメリカにとって、アメリカと一体となって戦争をする国にすることは一層強い要求となっている。

財界も、日本企業の海外進出の本格化に伴い、企業活動の安全と秩序の維持を求めて軍事大国化を要求している。また、国民の暮らし、福祉や安全に関わる国の責務を後退させつつ、地方自治体の財政難や道州制導入による地方自治体の統廃合を進めることにより、財界の要求する、大企業・富裕層の負担軽減と、公共部門民営化や規制緩和による利権獲得が推進されることになる。アメリカと財界の要求するこれらの政策を推し進めれば、国民は耐えがたい苦痛を強いられることになり、支配勢力と国民との矛盾は激化せざるを得ない。

この矛盾を押さえつけるのは、2つの方法によってである。その1つは、人権制限と統治機構改変による強権政治である。国民の知る権利、言論、政治活動の自由を奪うとともに、少数意見を国政から排除する。また、小選挙区制や二大政党制の行き詰まりの中で、悪政を推進するには、参議院の権能縮小、一院制、首相公選制による強権政治が必要となる。さらに緊急事態によって全ての憲法原理を否定して、国防軍も利用して、国民を強制的に動員し、あるいは反対運動を鎮圧する。

もう1つは、国民を統合して動員するため、天皇制を中心とした国家主義による思想統制である。明治憲法下の教育勅語を想起すべきである。これらの改憲案は広範な国民の批判は避けられず、各党派の間でも矛盾が生じ得る。このため、段階的改憲を重ねて全面的改憲を実現することをも視野に入れ、改正要件を緩和しようとするものである(本意見書第5)。

のみならず、自民党草案は、国民の義務を強調・拡大し(草案前文4段、3条、12条後段、99条3項前段)、改悪された憲法について新たに国民に尊重義務を課す(草案102条1項)など、個人の尊重と基本的人権の保障のために国家を縛る憲法から国民を縛る憲法へと、憲法の本質を変えることをも狙うものである。それは、単なる「憲法改正」ではなく、憲法の基本原理をことごとく否定する全面改悪にほかならない。(改行、強調は私)

改憲の直接の目的は、1.アメリカと共に戦争をする国づくり2.弱肉強食と格差・貧困拡大の新自由主義の国づくりです。アメリカは戦後何年かして朝鮮戦争が起きると、軍隊の不保持を謳った憲法9条があるのにもかかわらず、日本に武装を要求しました。それでできたのが警察予備隊、後の自衛隊です。やがてアメリカは、共に戦えるよう(というか、日本に手伝わせれるよう)集団的自衛権行使を認めるようにずっと日本に要求してきました。日本も何とかその要求に応えようと試みましたが、日本の現在の憲法ではどうしても集団的自衛権を認めることは不可能なのです。

ですから憲法を変えることによって集団的自衛権を認め、アメリカと共に戦えるようにしよう、というのが第一の目的です。新自由主義社会とは、一部の大企業やお金持ちだけが勝ち残って美味しい思いをすることができる仕組みの社会です。

「勝ち組」になれなかった残りの大多数の国民はどんどん貧困が進み、両極分解がおこります。一部の富める者と、大多数の貧困者、そして一度貧困に落ちたらなかなかそこから這い上がれない格差社会です。国民がそういう格差社会が強固になっても、文句を言わず諦めて受け入れるような精神構造となるその土台作りをしよう、というのが第二の目的です。

戦後の日本の政治に共通する性質といえば、時代によっては差がありますが、基本的にアメリカとほんの一握りの富裕者を代表する財界の方を向いた政治を行う傾向があるということです。1990年以降はその傾向はとみに顕著になりました。今回、改憲によって更にそれを推し進めようとしています。時を戦後にさかのぼってもう少し私なりに補足してみます。戦後から2009年の政権交代までずっと50年以上与党であった自民党は、結党以来「自主憲法制定」を党是にしている政党です。

もともと、憲法を変えることを目的に掲げた政党なのです。敗戦後、アメリカの占領政策の下で日本の民主化政策が進められましたが、当時共産主義だったソビエト(ロシア)との冷戦が激化してきたため、アメリカはそれまでの民主化路線を変更しました。戦前の日本の体制側の人物を味方に取り込み、復帰させたのです。こうして日本の民主化は不徹底なまま終わってしまい、戦後も戦前の体制の人間(児玉誉士夫や笹川良一といった人物)が力を握ることになりました。憲法破壊の一番はじめの元凶はここにあると言えるでしょう。

当時A級戦犯だった岸信介も釈放されました。岸信介は1955年には政党を立ち上げ、初代幹事長になりました。その政党が自民党です。ですから自民党とはもともと戦前色の強い政党として出発しているのです。戦後の民主憲法を基本的に是としない政党が戦後50年以上も政権を担当してきたのが日本です。

そして憲法改正をなにより夢見る現在の安倍自民党総裁は、この岸信介の孫です。憲法改正は基本的に自民党結党以来の悲願ですから最近になって急に言われ出したのではなく、これまでも何か機会があれば憲法は狙われてきました。しかしまだ日本の民主主義が今より健全であった頃にはそのたび国民の反対にあって、とても国会に改正案を提出するまでには至りませんでした。

でも最近加速度的に右傾化が進み、今は憲法改正案が国会に出されるのも時間の問題と思われるほどになってしまいました。憲法96条では憲法改正の発議は両院の総議員の3分の2以上の賛成によってされる事になっています。

現在、改憲をこの選挙の争点にしようとしているのは自民党、みんなの党、日本維新の会ですので、今度の選挙でこの三党が総議員の3分の2以上占めることになってしまうと、憲法改正発議が為される可能性があります。日本は今小選挙区制を取っているので、大政党ほど有利で実際の支持率以上の議席がとれてしまうのです。

ですから今度の選挙では自民党は実際の支持率より遙かに多い過半数の議席を取るのではないかと予測されています。

いかがでしょうか?maddieさんのお知りになりたかったことにお答えできているなら幸いです。

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