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“男女格差”後進国の日本が変わるために 「偏見の悪循環」を断ち切る方法

「会議に女性が多いと時間がかかる」

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言に端を発した騒動。国内のみならず海外からも大きな批判を浴び、森氏は辞任、五輪担当大臣だった橋本聖子氏が新会長になる形で一旦は決着した。

 しかし、改めて浮き彫りとなったのが「男女格差」の根深さだ。「世界経済フォーラム」が2019年に発表した各国の男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は153カ国中、121位と過去最低の水準に落ち込んでいる。

 「男女格差」後進国とも指摘されている日本。こうした中で、その格差をなくすべく活動する人がいる。世界銀行グループの「多数国間投資保証機関」(MIGA)長官を務めたキャリアを持つ本田桂子さんだ。

 コロンビアでESG投資をはじめとした経済学などを教えている本田さん。かつて「マッキンゼー・アンド・カンパニー」のアジア部門では初めて女性シニア・パートナーにも抜擢され、女性の社会進出をけん引し続けている。

 本田さんは、「男女格差」の問題だけではなく「LGBT」や「障がい者」など、あらゆる差別をなくすために「差別のない活力ある日本を作るための行動宣言」を企業トップや有識者とともにまとめた。

【映像】河野太郎大臣が本田桂子さんらを表敬(6分ごろ~)

「我々一人一人が変わるということを賛同者を募って宣言してはどうかと、アイディアを出した」(本田桂子さん)

 しかし、日本では「女性」という理由で味わった苦い経験もあるという。

「大学卒業したのが1984年。驚いたのは、女子でも短大を卒業していると、当時の一般職みたいな形で応募ができる。もうひとつあって、下宿、親元に一緒に生活をしていないと、応募を受け付けないというのがあって、カルチャーショックを受けた。現在の企業や組織のトップにいる人たちは、おそらく大学卒業が1980年代かそれ以前が多い。そういう方々が大学を卒業したときにそれ見ているとするなら、一つの刷り込みがあってもおかしくない」

 日本での「偏見の悪循環」を断ち切る必要があると訴える人もいる。コロンビア大学・国際公共政策大学院の伊藤隆敏教授だ。

「偏見があると登用しない、(地位を)引き上げない。その地位に引き上げなければ当然活躍できない。活躍しないと『やっぱりできない』『任せられない』となる。その悪循環をどこかで断ち切らなければならない」(以下、伊藤隆敏教授)

 偏見が生み出す悪循環に警鐘を鳴らす伊藤教授。その上で「アファーマティブ・アクション」と言われる、社会的に弱い立場にある女性や異なる人種などへの優遇措置に言及する。

「同じレベル、同じ才能なら今まで登用されていない人、女性を入学させましょう、女性を就職させましょう、女性を高い地位につけましょう、幹部を登用しましょうという考え方。能力や偏差値が全く同じということではなく、アメリカではある幅をもって『このぐらいの幅にいるなら女性を登用しましょう』という『アファーマティブ・アクション』がある」

 前述の本田さんもアファーマティブ・アクションのような措置は将来の男性人口から見ても必要だと話す。

「今、女性の就労率は米国よりも日本の方が高く、25~44歳までみると75%ぐらいの方が働いている。日本が国として女性を労働力として必要としている部分もある。今後、先の人口動態を考えたとき、1995年と2045年を比較すると、45歳から49歳の男性は4割減る。これだけ減ると、特定年齢の男性を管理職や経営判断のリーダーにすることは非常にリスクがある」(以下、本田桂子さん)

「管理職になることに心理的抵抗がある人が多い。私自身が、管理職をやりながら、毎日『大変だ、大変だ』と言っていなかったか、深く反省をした。管理職になると見えてくる景色も違って、自分でできる裁量も増える。『これをやった方がいい』と強く思うことができる。だとしたら『管理職って楽しいのよ』『結構エキサイティングよ』とちゃんと言えていたか。

一方、(これから管理職になる)彼女たちも、みんな『大変だ、大変だ』と思うかもしれないが、管理職でなくても大変な仕事はいっぱいある。それなら『自分が裁量と責任を持って、やれるようになった方がいいんじゃないの?』と問いかけて、なるべくみんなで前向きに楽しくやっていくにはどうしたらいいのか。それを考えようと思う」

 また、ニューズウィーク日本版編集長・長岡義博氏も「日本の社会は損をしている」と指摘。「たとえば小学校は1クラスあたり男女の数がほぼ同数。成績順に並べても、当然男子が多かったり女子が多かったりするはずがなく、均等に並んでいる。ということは、知的レベルにおいては、男女に差はない。社会でもこれを応用したほうがうまく回るはずで、それができていない日本の社会は損」と述べる。

 改めて浮き彫りになった日本のジェンダーギャップの遅れ。一方、同じ東アジアの台湾では、日本の国会に当たる立法院(定数113)において、女性立法委員(議員)の割合が42%、地方議員は32%に達している。長岡氏は台湾で進む政治のジェンダーフリーについて、“3つの柱”があると話す。

「台湾はアジアで唯一政治に『クオータ制』を導入している。このクオータ制には3つの大きな柱がある。1つ目は政党が候補者に一定の割合で女性を入れることを制度化したこと。2つ目は憲法改正で、立法委員のうち比例代表の50%、全体の15%を女性に割り当てるよう決めたこと。これが女性議員が42%にまで増える大きなきっかけになった。

3つ目は、政府の委員会などで女性と男性の比率に大きな差が出ないようにしていること。日本における国会議員の男女比率は男性が約90%、女性が約10%。いつの間になぜこの差が開いてしまったのか、驚きだ」(長岡義博氏)

 上記“3つの柱”により、女性の社会進出がうまく機能している台湾。その象徴が2016年に初の女性総統に就任した蔡英文氏だ。「日本でも台湾と同じような割り当てをしたら変わるのか?」という質問に長岡氏は「変わると思う」とコメント。「しかし、日本では『逆差別だ』という反発がまず出てしまうかもしれない」といい、例え導入しても強い抵抗が出る可能性があると語った。

 女性、男性など性別に関わらず、自分が望む働き方で働ける社会はいつ訪れるのだろうか。

(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

▶︎映像:「管理職って楽しいのよ」「管理職でなくても大変な仕事はいっぱい」女性の社会進出をけん引する本田桂子さんが今、伝えたいこと

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