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【読書感想】ロシアを決して信じるな

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ロシアを決して信じるな (新潮新書)
作者:中村 逸郎
発売日: 2021/02/17
メディア: 新書






Kindle版もあります。

ロシアを決して信じるな(新潮新書)
作者:中村逸郎
発売日: 2021/02/17
メディア: Kindle版

今だからこそ、知っておきたい!
ロシア研究の第一人者が現地を旅して考えた、最新の現実。

北方領土は返ってこない。ロシア人は狡猾で、約束は厳禁である――。
毎年、現地を踏査し、多くの知己をもつ、知の最前線に立つ著者にそこまで考察させるロシアとは、一体、どのような国なのか……。
誤作動のため寸前で発射をまぬがれた核ミサイル。ありふれた出来事となった反体制者の暗殺。世界最悪の飲酒大国。悪魔への奇妙な共感。全土に流布する「プーチンは偽者」という説。さもしい大都市モスクワ……かの国の不条理に絶望し、怒り、戸惑い、ときに嗤いつつ描き、ロシアの本性を浮かび上がらせる。
魔窟のような隣国を知悉するために、現代史の貴重なスクープからスリリングな紀行まで、柔らかな筆致で綴る日本人必読の書。

 ロシアというのは、よくわからない国だなあ、というのが僕の率直な印象なのです。
 冷戦時代のソ連は、アメリカを世界を二分していた軍事大国で(いまのロシアもそうなのですが)、共産主義のえたいの知れない国だったのです。

 それが、ゴルバチョフ書記長が就任し、情報公開がはじまり、ベルリンの壁が崩壊し……
 そういう流れをずっとリアルタイムでみてきた世代なのですが、いまのロシアも、ずっとプーチン政権が続いている、謎の国なんですよね。

 日本との平和条約も相変わらず結ばれていないし、北方領土も帰ってくる気配はない。
 それでも、プーチン大統領と安倍晋三前総理は、すごく仲がよさそうでした。

 この新書のような「〇〇を決して信じるな」というタイトルをみると、「ああ、偏見に満ちた著者が、自分の偏見を認めてほしい読者に向けて書いた本なのだな」と、僕は敬遠することにしているのです。
 基本的に「けっして~」とか「××してはいけない」なんていう強い言葉は「釣り」か「ヘイト商売」だと思っています。

 ただ、この本に関しては、読んでいて、著者の「ロシアという国の複雑さと面倒くささに呆れつつも、その魅力に抗えない気持ち」が、読んでいて伝わってもきたのです。

 「ロシアを決して信じるな」というけれど、「ロシア」というのは、ある意味、「人間らしさ全開の国」であり、「人間を決して信じるな」というメッセージのようにも感じました。
 そして、「盲信はできないけれど、良いところもたくさんあって、だから人間は面白いのだ」ということなのだと思います。
 
 プーチン大統領を批判した人たちが、いつのまにか暗殺されたり行方不明になったりしている、というのは、面白い話じゃないし、ロシア人にとってはたまったものじゃないでしょうけど。
 その一方で、ロシアの人々は、自分の国が「強くて、領土を広げていくこと」を支持してもいるのです。

 著者が、ロシアの飛行機に乗った際に、2個のスーツケースが無くなってしまい、さんざんたらいまわしにされたときの話。

 スーツケースを、わたしははたして日本に持ち帰ることができるのだろうか。電話口の女性職員にその不安を告げると、彼女はなぜか意気揚々と、わたしをこうなだめた。

「ここは日本ではありません。ロシアですので、明日、なにが起こるのか、だれも予想できません。あなたが明日のことを心配するなんて、わたしには驚きです」
「では、わたしはどうすればよいのですか」
「いまあなたができることは、ひたすら祈るだけです」

 著者が乗っていたバスで、バス停のアナウンスが流れたにもかかわらず、運転手は「そのバス停は昨日撤去された」と告げてバスが停まらず、乗客が抗議してもバスが走り続けたときの話。

 喧騒を目の当たりにして、ロシアの知人たちがわたしになんども諭してきた言葉が、思い起こされた。まさに現実に起こっている光景にぴったりなのである。

「ロシアは、将来に何が起こるかを推測できない国です。信じられないようなことが突然起こったり、ときには人間の悪意で生活がゆがめられたりします。思いどおりにいかないことが多く、期待は簡単に裏切られてしまいます。だからあなたはずっと、そんなロシアに困惑していくことでしょう」

 ロシアには、わたしが容易に理解できない謎がひそんでいるのだろうか。もう一人の友人はかつて、こわばった表情で真情を吐露したことがある。

「わたしたちが予測不能の国に住むことになってしまったのは、過去からなにかを学び、それを将来に活かしたり、未来を予測したりしなかったからです。悪意、絶望、怒り、幻滅、恥辱という人間の感情によって歴史がゆがめられてきました」

 ロシアは一見、再起不能のように感じられる。わたしが乗車したよりも後続のバスのなかでも、同様な怒号がとびかっていたのであろうか。それどころか、すでに半日ほどまえから繰りひろげられている情景なのかもしれない。このような事態は、翌日も翌々日も繰りかえされ、ロシア国内のほかの地域でも、なんの予告もなくバス停が撤去されているにちがいない。事態は改善されることもなく、将来にわたって永遠に繰りかえされるであろう。

 車内のドタバタを見つめながら、隣の女性がそっとささやくのをわたしは耳にした。

「神様! わたしがロシアに生まれたのは、なにかの罪の代償なのでしょうか。前世でなにか悪いことをしたからでしょうか」

 哀愁に満ちた言葉に、わたしは嘆息してしまった。ロシア人たちは本当に、絶望の社会に生きているのだろうか。

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