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誰が首相の首に鈴を付けられるだろう

 さて衆院選も告示されたわけですが、どうにも自分の頭の中では盛り上がらない選挙です。自民の大勝が目に見えていると言いますか、その自民に対抗しうる党がない、それなりに世間の話題に上る党が自民よりマシかと問われれば必ずしもそうとは言えない、まぁ「どこと自民が組むことになるか」が争点でしょうか。安倍晋三が首相だった当時、北朝鮮が粗大ゴミの発射実験を行ったら安倍内閣の支持率が急上昇、当時の外務大臣だった麻生太郎は「金正日に感謝しないといけないな」と述べましたが、幸か不幸か北からの援護射撃が再び繰り返されようとしている昨今でもあります。2006年の一文字を聞かれた安倍晋三は「変化」「責任」と答えましたけれど、私が今回の選挙を元首相に倣って一文字で表すとしたら「諦め」ですかね。せめて上手いこと自民党のブレーキ役になってくれそうな党を見繕いましょう。

 

原発・TPP、曖昧さ目立つ=消費増税は二分―各党公約ポイント【12衆院選】(時事通信) 

 4日公示された衆院選の主な争点は、原発、環太平洋連携協定(TPP)、消費増税だ。各党の公約を見ると、消費増税は賛否がほぼ二分しているが、原発とTPPについては分かりにくい主張が目立つ。

 東京電力福島第1原発事故後初の大型国政選挙とあって、多くの党が「脱原発」を掲げている。ただ、その内容には濃淡がある。

 民主党は、2030年代の原発稼働ゼロを目指し、日本未来の党は22年までの全原発廃炉、みんなの党は20年代稼働ゼロを掲げた。共産、社民両党は、即時ゼロで廃炉のプロセスに入るとしている。ただ、脱原発に向けた環境整備などで説得力が乏しいのが実態だ。

 

 自民に民主、維新に未来といった辺りは論外として、じゃぁ話題にならない党はどうなのかというと、そもそも「自分の選挙区に候補者を立てていない」ケースも多々ありますし、話題にならないのはマスコミに差別されているからではなく単に主張が埋没しているだけではないかと思われるところです。元から影の薄かった社民は元より、共産も原発問題では周回遅れのポピュリズムに終始している印象を拭えません。原発事故後からしばらく、共産党は割と冷静な対応で、それが逆に支持層の反発を買うようなところもあったと記憶していますが、それがどうして完全に出遅れる形で反原発に傾倒、ブラック企業経営者よろしく無理と無茶を重ねた結果であることを無視して原発なしでも電力は足りていると説くなど、まぁ党の方針はそれで定まったのでしょうけれど、脱原発に関しては完全に二番煎じ以下、それで浮動票の取り込みが見込めるとは考えにくいです。

 TPP「交渉」参加問題あたりも共産党は埋没している印象を拭えないのですが、既存の支持層をつなぎ止めるためには、これで良いのでしょうか。何だか北朝鮮問題よろしく、交渉を断ち切っては国内に向けて自国の正当性と相手国の非を説いて満足するみたいな方向に向かっている党が多くて、まぁ戦争など軍事的な衝突は話し合いで解決できると説く人でも、貿易摩擦や食糧問題を交渉で解決できるとはあまり考えないものなんだろうなと思います。むしろ関係の悪化、破談を暗黙の前提として防壁を築くべしみたいな、そういう志向がタカ派とハト派の双方で共有されている印象が拭えません。

 ブレーキ役が務まるような政治家が減ったとは言え、安倍晋三も国外にはそう強く出られないでしょう。その辺は前回首相時の実績通り、首相就任前に豪語したほどに威勢良くは振る舞えない、特に相手国に面と向かって強く出られるタマではない、それは既に過去の首相時代から十分に予測できることです。たぶんTPP交渉でも自国の利権を他の参加予定国に認めさせるような立ち回りはできない、むしろ相手国に押し切られる可能性の方が高い、ならば最初から予防線を張って置いた方が得策みたいな判断もありそうです。もっとも交渉への参加を蹴ったところで、周りの国がずっと今まで通りの日本との関係を続けてくれる保証などどこにもない、日本を除いた枠組みが作られるだけなのですが。

 外国相手にはともかくとして、国内に向かってはどうなのか、強気に出られるとしたらこっちだろうと思います。国民に対してこそ「強い姿勢」を見せてくるものなのだと。まぁ野田も消費税増税や民主党内の反対派の切り捨てには非常に強気な態度を見せましたし、脱原発が第一な人だって電力会社や電力不足という現実に対しては実に冷厳な顔を見せるものです。橋下や石原一派も言わずもがなですね。要は「何を/誰を」敵視するだけの違いなのかも知れません。

 何度か例示してきたことですが、世間の同情を集めている人の人権を重んじる一方で、逆に世間の反感を買う人――例えば刑事犯の被告人など――の人権を蔑ろにする人と、どんな人であろうと人権は尊重されるべきとする人がいます。無垢の人間の権利は擁護されるべきだが悪い人の場合は違うと、そう考える人であれば、まぁ「敵」を共有できる政党を選べば良いのでしょう。しかし、世間に後ろ指を指されるような人にも守られるべき権利はあると考えるのなら簡単ではありません。例えば労働者の権利を重視する風を装いつつ電力会社社員なり公務員なりの権利には無頓着な政党/政治家が、あなたを守られるべき対象の「例外」に指定する日が来ないとどうして言えるでしょうか? むしろ自民と、自民に反目する政党とで「敵」が一致するような未来だって考えられるはずです。

 一時は世論調査上で民主党を上回る支持を得ていた維新ですが失速傾向は隠せないところ、そして比例では民主に張り合えたとしても橋下や石原など一部の著名人を除けば小選挙区では伸び悩むものと予測されます。自民が大勝して、その半分未満の議席の民主が第二党といった形になりそうです。本命はやはり自民と公明の連立政権復活でしょうかね。維新との連携は、プライドの高い相手同士だけに感情的な衝突も多そうですし、野田民主は引き続き自民党にラブコールを送るも相手にされないであろうと思われます。自民と民主と言ったら地方行政では普通に連立している実績抜群のゴールデンコンビですが、国会では引き続き茶番劇を繰り広げることになるかと。

 そうした中では公明党に「ブレーキ役」を期待するしかないのかも知れません。これまで長らく与党であった頃の「実績」を鑑みるに、どうにも党の表向きの主張よりも連立の維持を優先しがちなのが甚だ心許ないところではありますが、昨今の政党の中では貴重な穏健派でもあります(あくまで与党時代の実績では泣く、表向きの主張では……)。良くも悪くも公明党には堅い票田がある、勇ましいことを掲げて浮動票の取り込みに励む必要性が他の党より薄いからでしょうか。しがらみという名の絆を持っている党には、一定の価値がありそうです。

 尖閣領有に始まる中国との関係悪化の中で、経団連など財界関係者は領土問題の存在を認めて話し合いのテーブルに着くよう、ムダに相手国を刺激するようなことは慎むよう提言することが多く、これが世間の反感を買ってもいたわけです。中国という重要なビジネスパートナーとのしがらみ=絆があるが故に、政治家のような猛々しくも愚かな振る舞いには賛同できなかったのでしょう。「しがらみ」は政治家の暴走や無茶に足枷を嵌めるものでもあります。なんだかんだ言って自民党を支持する業界団体も多い、一度は民主支持に回ったところが自民に回帰する動きも見られるとか、ことによると安倍/自民党への抑えになってくれるのは、こういう各団体の利害関係なのかも知れません。

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