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BABYMETALが語る、ヘヴィメタルから教えてもらったこと

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左:SU-METAL(Vocal & Dance)、右:MOAMETAL(Scream & Dance)(Photo by OGATA,Hair and Make-up by aya watanabe, Styling by Shohei Kashima < W INC. >)

BABYMETALの音楽を語る際に「進化」は大事なキーワードの一つ。その一方、ヘヴィメタルには「継承」という側面があって、先人たちが遺したものを受け継いでいくという考え方があるように思う。

ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードから「これからも自分たちの音楽を信じてやり続けてほしい」と声をかけられたSU-METALとMOAMETALはこの10年間、本人たちも気づかないうちに何か大切なものをメタルの世界からたくさん受け継ぎ、そして体現してきた。その多様性と精神性を武器に、海外の大舞台で堂々と勝負できるアーティストになったのだ。道なき道を行く。そんな2人に話を聞いた。

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.13」に掲載されたものです。

・世界と日本の「架け橋」になる

ー2人は10年間活動してきて、自分たちが今やヘヴィメタルの担い手になっていることに関してはどう受け止めていますか?

SU-METAL:BABYMETALってある意味メタルの進化形みたいなものだと思っていて、私自身もBABYMETALの音楽を初めて聴いた時、面白い音楽だなって感じたんです。メタルは知らなかったけど、すごく聴きやすかった。そんな私たちだから、活動初期の頃から世界のメタルと日本をつなぐ架け橋になりたい、ヘヴィメタルを知ってもらう入口のような存在になりたくて。

実際、海外でライブをやり続けていくうちに、日本語の響きが面白いとか、日本の文化に興味を持ちましたっていう方がいらっしゃったり、10年やってきてそういう存在に少しでもなれたかなと思います。日本国内でも同年代の人たちから小さい子たちまで、私たちの衣装や踊りをカッコいいと感じてくれて、メタルという音楽を聴いてくれることもある。私たちはまだまだだと思ってるんですけど、架け橋という意味で少しずつ広まっていってるなっていうのは感じるので、すごくうれしいです。

MOAMETAL:みんなにとってのメタルの入口がBABYMETALになれてるっていう実感も、先陣を切っている実感も私自身はそんなにないんです。でも、私はこの音楽に自信を持ってるし、もちろんメタルをリスペクトしていますし、そういう意味も込めてこれから先もメタルの未来を切り開いていけたらいいなと思います。

ーSU-METALさんはメタルレジスタンス第一章(2013〜14年)を振り返るインタビューで「メタルってすごく100%な感じがする。だから、その感じを一生懸命出さなきゃいけない」と語っていましたが、その「フルパワー!」とか「力の限り!」みたいなイメージってどこから浮かんできたものなんでしょうか。

SU-METAL:イメージとしてメタルは「熱い音楽」っていうのがあって。100%で全力でやってる感じで、CDにはないライブ感がすごくカッコいい。疲れ果てた末に出てきたものが熱い、みたいな。そういうイメージを勝手に抱いていて、だからBABYMETALのライブも昔から振り付けがハードで大変だったりするんですけど、毎回パタンって倒れそうなくらい全力で踊ってましたね。ガムシャラにやってました。

ーMOAMETALさんは当時のライブについて、いま言ったように「とにかくガムシャラにがんばる」「終わった後の記憶が何もない」とインタビューで回想していました。メタルがどういうものなのかハッキリと分からないまま全力で頑張るのも大変なことだとは思うんだけど、当時のパワーの源って何だったんですか?

MOAMETAL:なんだろうな……。当時はガムシャラにやることがメタルだっていう認識はなかったんですけど、ただBABYMETALの音楽を届けるためには自分の中でガムシャラじゃないといけない……そういう気持ちが根本にあったんですよね。それは、BABYMETALの音楽を信じてたからだし、BABYMETALの音楽をいろんな人に聴いてほしい!っていう熱意があったからだと思います。

ーBABYMETALとして有名になりたい!とか、もっと上に行きたい!とかそういうのではなく?

MOAMETAL:いや、特にそういうのはなかったんですよ。当時はTVに出たいとも思わなかったし。目の前に与えられたハードルがいつも高すぎるし、よく分からないようなすごい目標が毎回降ってくるので、その目標を達成することに精一杯で、有名になりたいとか、あれがしたいとか、そういう欲望は全然なかったです。

ーその後、2013年のサマソニでメタリカと出会い、SU-METALさん曰く「メタルって耳で聴いちゃいけない。心で聴くものなんだなと気付かされた」そうですね。そう思わせるほど、メタリカの音楽やライブパフォーマンスに感動したのは何でだと思います?

SU-METAL:なんだったんですかね。メタルという音楽を聴くことはあっても、ライブで観る機会があまりなかったんです。その時のメタリカさんのライブは、シンプルに音がズサズサ心に刺さってくる感覚があって。目が離せない、一歩も動けなくなるみたいな。 自分が考える前に音が体中に入ってくるっていうか、そういう感覚が初めてだったんです。「なるほど! これがメタルっていう音楽の力なのか!」って。

何を歌ってるか分からないはずなのに、ステージとの距離感も近くて通じ合ってるというか、すごく不思議な感覚だったんですよね。その時にメタルっていう音楽を一瞬で教えてもらった感じがしました。今でもその感覚は、言葉では説明できてないですけど、私の中に染み付いてるものです。BABYMETALとしてメタルをやっていく中で、あのライブがあったからこうやってライブができてるなって思ってますね。

MOAMETAL:私も衝撃的でした。単純に音が大きかったからっていうのもあると思うんですけど、オーディエンスもすごく熱かった。私もそのメタリカさんのライブを観た瞬間にメタルってめっちゃカッコいいじゃんと思いましたね。それまでは白塗りの人たちが何か分からないことを歌っていて怖い!っていう印象だったのが、メタリカさんの音楽を通してメタルのカッコよさを教えてもらった。何で自分の中でカッコいいと思ったのかは今でも分からないんですけど……心に響いた音楽です。

ーバックステージでもお会いしたんですよね。

MOAMETAL:はい。本当に優しい方たちで、人柄にも惚れ込んでしまったというか。まだ無名な私たちに対して一緒に写真を撮ってくださるなんて、あんな大御所の方たちがそのために時間を割いてくださるとは思わなかったし、とても親切にしていただきました。

海外で培った胆力とパフォーマンス力

ー2014年、BABYMEATLの初めてのワールドツアーについてSU-METALさんは「雰囲気的にドイツのゴリゴリのメタル感に圧倒された」と語っていましたよね。

ヨーロッパのメタルファンって「これはメタル! これはメタルじゃない!」というジャッジが厳しそうな感じがしますけど、本物のメタルファンが何万人もいるようなフェスの舞台を通して、2人が気づいたことや学んだことは何かありますか?


SU-METAL:それまで海外に行くことが全然なかったので、身体にいろんな絵を彫った人を見るのも初めてでしたし(笑)、しかもそういう人が大勢いる中でライブをする。そういうところに戸惑うところから私たちの海外ツアーはスタートしたんです。

フランス、ドイツとまわって、イギリスのソニスフィア・フェスティバルにも出演して、フランスは日本のカルチャーが大好きな女の子たちが多くて、私たちをカワイイって目線で見てくれて、ドイツの人はメタル寄りで見ていたから、短い期間でも私たちの見られ方が全く違うということにまず驚いて。そして、ソニスフィアでは、みんなBABYMETALを知らない状態。「誰だろう? この子たち」っていう、すごくアウェーな環境でした。むしろ、私たちのことを嫌ってた人もいっぱいいたんじゃないかなって。

でも、その時に思ったことは、反応が素直だなって。日本だとライブを観ていて誰も手をあげないと、恥ずかしくて自分から手をあげにくかったりするじゃないですか。向こうの人って楽しいと思ったらそういう反応を示すし、そういうのがすごくリアルにわかって。だんだん波のように自分たちの音楽が広がっていく、しかも海外で、メタルのフェスで、っていうのが見えた時は本当に感動しましたね。



MOAMETAL:ドイツのメタラーの人たちは正直最初怖かったです。ステージから見ててもすごい怖い顔してるし……って思ってたんですけど、次第に彼らは本当にメタルを愛してるんだなってことに気づいたんですよね。自分が好きな音楽を愛しているから、私たちを品定めするような感じで「本当にコイツらメタルを愛してるのか? 俺たちと同類なのか?」っていう目でチェックされてるんだなって。

私たちも愛を持ってメタルをやってるし、この音楽を信じてメタルをやってるから、ちゃんと自分たちの信じてる音楽を届けるしかないと分かって、それを体現してたらどんどんキツネサインが広がって、「伝わるってこういうことなんだな」ってうれしくなりました。

ー逆に終始緊迫した状態で……みたいなことはなかったんですか?

MOAMETAL:ステージに出た直後はアウェーなことばっかりでしたね。

SU-METAL:海外だとスマホで動画撮影するのが当たり前なので、お客さんの顔ではなく頭上に掲げられたスマホが目に入るっていう状況にまず驚いて。でもライブが激しくなってきてモッシュが起こると、そのスマホが減ってくんですよ。それが面白いなと思いました(笑)。

MOAMETAL:向こうのフェス会場って敷地が本当にだだっ広いじゃないですか。だからお客さんがライブ中に捌けていく様子も全部見えるんですよ。私たちは「ああ、捌けていっちゃった」ってことに、最初はショックを覚えたりしたんですけど、ツアーの途中から「あの人は捌けちゃったから、BABYMETALのステージの後半の曲は聴けないんだ」とか、動じないようになってきたし、逆にライブの途中から見に来てくれる人も目に入るようになって、そうやってアウェーでも楽しめるようになっていきましたね。

ーそうやってタフになっていったと。

MOAMETAL:日々鍛えられていった感じです。若いなりにその大変さを理解してなかったのもよかったなと思ってて。今だったら怖がってしまうようなことも、割とへっちゃらにできていたので。毎回がトレーニングだったけど、すごく楽しかったです。

SU-METAL:誰も教えてくれないし何も知らなかったからできたことなのかなって思いますね。そんな中で毎回学んでいって。普通に考えたらあの規模のライブで学べる人っていないと思うんですよ。だけど、私たちはそれが毎回だったから。

MOAMETAL:しかも勉強してから行くんじゃなくて、勉強せずに行く。その場で学ぶしかない。

SU-METAL:アハハ。吸収力も高かったしね。

MOAMETAL それが当たり前だと思って勉強するから、どんどんいろんなことを覚えていきました。

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