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【赤木智弘の眼光紙背】仕事のない人間を妬むなよ(苦笑)

赤木智弘の眼光紙背:第249回

 かつて小泉内閣下で経済関連の大臣職を複数務めた竹中平蔵が、「みなさんには貧しくなる自由がある。貧しさをエンジョイしてもいいが、成功した人の足を引っ張るな」という趣旨の発言を行った。(*1)

 それに呼応する形で、BLOGOSでもフリーライターの宮島理が『「貧しくなる自由」を享受した者のワガママを許すな』(*2)という記事をアップし、竹中発言への支持を表明している。

 この両者の強弁は、ハッキリ言って無知蒙昧にすぎる。  仮に「貧しくなる自由」なるものはあると考えても、国家には国民を貧しくしたままにする自由はない。これは近代国家においては当然の社会責任として国家に課せられているのであり、それを否定するのであれば近代国家の体を成す国に住まず、今すぐに北朝鮮や中国といった国民の権利を保証しないような国に移住していただきたい。

 少なくとも現状としては、グローバル化する経済市場で勝ち残るには、効率化以外にありえない。労働者を減らし、高度な産業用機械を用いて品質の高い製品を大量に生産する必要がある。幼稚園の体験学習のように、畑で大量の人間を働かせて労力を大量にかけて収穫するじゃがいも掘りよりも、アメリカの農家のように、広大な土地をトラクターなどを用いて僅かな労力で大量に収穫できるような体制を作ることこそが、唯一の勝ちへの道なのである。

 そもそも「国民すべてを馬車馬のように働かせて生産を増強!豊かで強い国に!!」なんてやり口は、過去に共産国が散々やり尽くして、いずれも資源を闇雲に浪費し、土地や労働者を疲弊させて、無残に失敗している。資本主義における「増強」とは産業の効率化に他ならないのであり、効率化の上で働く人間が減るのは必然といえる。

 そうした必然への足を引っ張らぬために、そして同時に日本が近代国家であり続けるために、人を労働から遠ざけながら、同時に賃労働以外での利益分配を行なっていくという考え方が必要であり、そうした文脈の上にベーシックインカムや、負の所得税という新しい利益分配の考え方が産まれ、発展しているのである。(*3)

 そうした流れに反して、今なお何十年前の感覚で「貧乏人を寝かせるな!働かせよ!」ってやっているのは、知識のアップデートがされていないという意味で、自堕落という他はない。

 そもそも、この社会において個人責任の範疇など、たかが知れている。

 台所に食べかすを残してゴキブリが出るくらいは個人責任であろう。しかし日本の経済問題はたとえどのようなレベルにおいてもすべて社会責任である。日本経済という大きな問題に対して、そこに一体どのような個人責任があると言うのだろうか。ましてや日本の景気の浮き沈みなど、仕事を持たぬ貧しい個人が、どのように責任を負えるというのか。社会責任を個人に押し付け、自己責任だと罵ることこそ、責任の押し付けであり、本来であれば成功者たちが分担すべき、社会責任からの責任逃れに過ぎない。

 結局のところ、仕事のない貧しい人間を妬むワガママな人間たちこそ、頑張って次の時代を作ろうとしている多くの人たちの努力を貶め、その足を引っ張り続けているのである。

*1:竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」 | 新世代リーダーの条件(東洋経済オンライン)http://toyokeizai.net/articles/-/11927
*2:「貧しくなる自由」を享受した者のワガママを許すな(宮島理) (BLOGOS)http://lite.blogos.com/article/51585/
*3:少なくとも、僕はそう理解している。

プロフィール
赤木智弘赤木智弘(あかぎ・ともひろ)
1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。

@T_akagi - Twitter

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