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天賦の人権など理解できない件について

片山さつき女史(以下さっちゃん)のこの発言


をめぐって「天賦人権論を否定するとは何事か!」みたいな騒ぎになっています。

一般常識的に見てさっちゃんの発言が「それは無いだろう」というレベルだとは思いますが、おかしな発言に対する批判が正しい言説とは限らないので、そこのところを自分なりに考察しておきます。

なお、法学や神学のプロから見ると笑止千万な考察かもしれないので、読者の方には、これを読んで真に受けない事をお勧めしますw



まず、この発言だけを見た場合、さっちゃんや自民党が天賦人権説を否定しているーーと即断するわけにはいきません。

さっちゃんは「国民がAと思ってしまうような天賦人権論」と言ってるのであって、本来の天賦人権論とは違う俗説的な"天賦人権論"を想定している可能性があります。

だったら「天賦人権論」などという言葉を使わなければいいのであって、誤解してくれと言わんばかりに感じますが、まあそれは日常的な彼女たちの隠語がぽろっと出た程度と思ってもいいかなと思います。よくあるパターンの軽い失言ですね。

さきほどの「Aと思ってしまう」のなかのAの部分で言ってる「天」は、我々が日常語で使う「天気」と同じようなもので、何もしなくても手に入るものを「天から降ってきた」と呼ぶようなレベルのものでしょう。

これが、天賦人権説における「全知全能の絶対神」を想定した「天」とは全く違うので、「天賦人権論」と並べて使うのは、物事を少しでも深く考える人には違和感が残るのです。その意味でさっちゃんの発言は、一神教の信者にとって許しがたいものになると思います。

ただ、さっちゃんが天賦人権説を一神教のキリスト教世界で生まれたものと意識して使う場合に、「義務は果たさなくていい」という全く別問題を持ち出すとも思えません。

従って、さっちゃんは本当に「天賦人権論」がそんなナイーブなものだと思い込んでいるか、それともキリスト教世界の「天賦人権説」とは別の意味合いで(誰にも間違いを指摘されないだろう位のノリで)使ってるかのどちらかです。



私が天賦人権説と聞く時に真っ先に浮かぶ言葉は「王権神授説」で、どちらも一神教の世界ならではの思想と思います。

私には、なぜこんなのが必要なのかも正直言って理解できませんが、これが出るまでのキリスト教世界が血みどろの宗教戦争に明け暮れていた事を思うと、平和と秩序のための知恵の一つなんだなと思うわけです。

天賦の人権も神授の王権も、どちらも絶対神を信ずる人に秩序を守らせるための方便だと思います。従って、そうでない我々には理解できないし、理解できないのに本気で守ろうとするのも滑稽な話だと思います。

一神教を信じたのは砂漠の民であり、彼らにとっては人間が生きる事ができる環境そのものが「唯一絶対なる神の思し召し」に他ならないのでしょう。コップ1杯の水をめぐって「殺さなければ殺される」というリアルな世界に住む人が、絶対神との契約だけが命の拠り所と考えるのであれば、これは私たちが想像できる「偉い人」という意味の神とは全く違う。

物理学も天文学も、神に近づくために人間が探究している学問であって、通説と違うものを唱えた者は、しばしば異端尋問にかけられます。現代でもなお、敬虔なキリスト教徒は進化論を嘘っぱちだと言い切ります。こうした、我々からすると狂気じみた行き方が一神教にとっては当然の事なのです。

天賦の人権というモノが、そうした一神教の産物だという事を考えた時に、我々が普通に思う事のできる「人間だから平等であるべきだ」とか「自分がされてイヤな事は他人にもするべきではない」というような道徳観とは全く違うんだろうと想像できます。

おそらく彼らが天賦の人権を持ち出して裁判をする時には、神による天地の創造から最後の審判に至るまでの中で、絶対に冒すべからざる人権というのを想定しているんでしょう。極端な言い方をすると、全人類が滅んでもこれは真理で変えようが無い、と。

だから、さっちゃんを責めてた人の「あなたの言い分では障害者に権利を認めない差別主義につながりますよ」という理屈ともちょっと違うんだろうと感じています。「差別は良くない」というような道徳心は神の思し召しではなく、私たちがムラ社会を心地よく生きる術に過ぎないのだから。

・・・まあこのへんから、一神教の人たちの考え方とか行き方がわからないわけです。



深みにはまり込みそうなので話を飛ばしますが、少なくともさっちゃんを批判する人が「私は本当の天賦人権論に従って片山氏を批判している」と言うのなら、同じ人が中東紛争の当事国やそれに介入するアメリカに向かって「一神教は不寛容で好戦的だ」と非難するのはおかしいわけです。

一神教者は一神教の行き方で命をかける場面を決めているのであって、彼らにとって譲れない事を「人間同士譲り合え」などと言う「権利」が私たちにあると思うのなら、それは彼らの考える「天賦の人権」などというものに「なるほどこれは譲れない絶対の一線だ」と感じる事は不可能だからです。

 片山さっちゃんの言った事は、普通の人に見せても、私のように物事をまだるっこく考える人間に見せても、やはりおかしい事には変わりない。でも、それに対する批判もまた、さっちゃんの失言と同じレベルのナイーブさを秘めているな、と感じたという事です。

もちろん、自民党が天賦の人権そのものを認めないとか言い出すと、これは米国のみならずキリスト教社会はじめとする世界への挑戦であり、場合によってはアラブともユダヤとも一戦を交えかねない重要事態かもしれないので大問題だと思いますけどね。

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