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焦点:日本の長期金利上昇、米債との連動強める「日銀点検」への思惑


伊賀大記

[東京 24日 ロイター] - 最近の長期金利上昇は米金利上昇が主因だが、3月の日銀点検に向けた思惑で日本の債券市場が米債との連動性を強めている側面もある。長期金利の変動許容幅拡大で「天井」が引き上げられるとの見方が強まる一方、円安が進行していることでマイナス金利深掘りへの警戒感が後退。市場の思惑が金利上昇方向に傾いている。

<円安で市場の思惑に変化>

日本の新発10年債金利は22日に0.120%を付け、2018年11月以来2年3カ月ぶりの高水準に達した。原動力は米国の長期金利の上昇だ。新型コロナウイルスのワクチン普及による景気回復期待やインフレ懸念を背景に、約1年ぶりの高水準となっており、日本を含めた世界の金利水準を押し上げている。

10年債でみた日米金利差は拡大。世界的な金利上昇局面でも、日本の金利を低く抑え、景気回復やインフレ醸成を支援するという日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の効果が失われたわけではない。しかし、ゼロ%付近で膠着していた以前とは異なり、動きが軽やかになってきている。

日米金利の連動性を高めている要因の1つは、3月の日銀点検に向けた市場の思惑にある。YCCは、短期の政策金利をマイナス0.1%、10年債をゼロ%に「固定」する政策だが、現在10年債は上下0.2%の範囲で変動することが許容されている。点検では、足元の金利上昇傾向に合わせ、変動許容幅を0.3%程度まで拡大するのではないかとの見方が、金利上昇を促している要因だ。

ただ、これでは点検に対し、金融引き締め的な印象が強くなってしまうのは否めない。そこで選択肢として浮上しているのが、マイナス金利深掘り余地の明確化だ。当座預金の3層構造の見直しや、付利金利を引き上げることも、マイナス金利の深掘りをしやすくする。こうした緩和方向の措置を組み合わせることで、引き締め的な印象を相殺するのではないか、との見方が市場では多い。

とはいえ、副作用の大きいマイナス金利の深掘りは、円高進行時に採られる政策というのが市場でのもっぱらの見方だ。「足元で円安が進んでいることで、可能性が低くなったと市場は踏んでいる。緩和方向の措置に対する警戒度が低くなったことで、金利上昇が進みやすくなっている」と、パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は指摘する。

<日銀はいつ止めるか>

このため、米金利次第では円金利が一段と上昇する可能性もあるが、日銀は、今のところ静観の構えを崩していない。ただ、足元の金利上昇のペースはかなり速く、今後の上昇スピード次第では「許容レンジ内だからと機械的に判断せず必要な対応を取る」(関係筋)と警戒姿勢を強める構えだ。

「指し値オペ」を使って日銀が金利上昇を止めたのは、直近では18年の7月だ。10年債を0.10─0.11%で買い入れた。しかし、同年7月末に長期金利操作の変動許容幅を拡大した後は行われていない。

許容幅拡大後の最高水準は同年10月の0.155%。0.15%に近付いて来れば市場の警戒感は高まりそうだが、日銀が3月の点検で許容変動幅を拡大しようとする場合、強力な金利抑制手段を使ってしまうと「日銀は何をやりたいのか」と市場の不安を高めることにもなりかねない。そうしたコミュニケーション上の課題に加え、指し値オペについては「比較的強い手」として日銀内では利用に慎重な声も多い。

金利上昇抑制の手段は指し値オペに限らない。野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は「副作用やショックが小さく日銀が採りやすいのは、オペ紙(今月の日銀の国債買い入れ予定)のレンジ範囲内での増額、臨時オペ、指し値オペの順番になる」とみている。

<YCCの変質に向き合う市場>

ただ、長期金利の変動幅を拡大させ、金利をある程度自由に動くようにさせることは、YCCの形骸化につながりかねない「両刃の剣」的な修正だ。YCCの「短所」を小さくする代わりに「長所」も損ねてしまうとも言える。

YCCのメリットは、世界的な金利上昇局面でも、金利を低く抑えることで、景気回復やインフレ醸成を支援することだが、金利が高くなればメリットは低下する。一方、金利が大きく低下することを許せば、超長期金利の過度なフラット化を防ぎ、年金や保険への悪影響を減らすというメリットが低下してしまう。

金利低下局面では、指し値オペのような強力な抑制手段は乏しい。長期金利の変動許容幅拡大後の最低金利水準は、19年9月のマイナス0.295%。最高金利0.155%の2倍近くゼロ%から乖離している。下方向に変動幅を拡大させた場合、将来的に対応が難しくなる可能性がある。

さらに、変動幅を上下0.3%まで拡大した場合は、中央銀行の通常の1回の政策金利変動幅である0.25%を超えることなる。短期の政策金利ではなく10年金利ではあるものの、世界的な金利上昇が続き、変動幅を0.4%や0.5%に広げる必要が出てきた場合、果たして「ターゲット」といえるのかどうかについても今後議論になる可能性がある。

(伊賀大記 取材協力:木原麗花、杉山健太郎 編集:石田仁志)

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