「容姿なんて、魂がとりあえず入ってる箱です」鳥居みゆきが語る“女芸人”というレッテルの理不尽 から続く
「ブレイクした時に死ぬ」「35歳で死ぬ」過去のインタビューで度々そう話していた鳥居。「今は余生」と語る鳥居の、生と死に対する並々ならぬ興味は今新たなモチベーションとして彼女を突き動かしている。
友だちが欲しくて芸人になろうと決めた鳥居は、この世界で友だちを見つけたのか。生きづらさの向こう側にあったのは、果たして。(全3回の3回目/#1、#2を読む)

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10人に1人わかってくれたらいいな、で始めたことだったのに
――プライドを捨て、ポップにして……見事ブレイクを果たしましたよね。
鳥居 そんなブレイクしてないと思ってます。前に「一発屋芸人特集」企画のサンミュージックの枠に私入ってなくて。「えー、私入ってないんだ」って言ったら、チーフマネージャーに「一発もあててないじゃん」って言われたんですよ。だから、やっぱそうなんだと思って。
――(サンミュージックの一発の壁高いな……)テレビはどうでしたか、鳥居さんにとって居場所だったんでしょうか。
鳥居 うーん、私がテレビに出だした時は「放送コードを延ばした人」と言われたんですけど。それでもやれること少ねぇなと思って。言いたいことを言ったらカットされるし。でもなんか……人に合わせて、色んなMCに合わせてって結構しんどかった。
――しんどいと思いながら出ていたんですね。
鳥居 やりたいことは単独だから、知名度を上げたいなと。単独がやれれば私は幸せです。私、血が好きなんですけど、血とか骨とか、そういう生や死に関してすごく興味があって。それはお笑い関係なくずっと好きで。
ただ、なんだか違うなと思ってきたのが、単独を何回かやってきた頃、グロから考えるようになった時があったんですよ。お客さんが求めてるから、グロいことから考え出そうという発想になっちゃった時があって。
あっそれはよろしくないなと思った。私の好きなことは人からみたらちょっと変わってるかもしれないけど、「変わってる」から始めちゃだめじゃんって思ったんですよ。
――すごく難しいですね。
鳥居 私がやりたいことの脳みそをコントにして出した時に、10人に1人はわかってくれたらいいなで始めたことだったのに、今は(10人のうちの)10人にしたくなってるじゃんって思っちゃったんですよ。100笑いをとろうとしちゃった。
それぐらいの時期に、PVを自分で監督して撮らせてもらったんですね。その時に規制がかかった。リストカットのシーンがあったんですけど、そのシーンをカットしてくれと言われたんですよ。ちょうどそういう事件があった時で。
――あぁ。
鳥居 その時に、私はそのシーン、伝えたいことの中の1個だったから、別になくてもいいやと思ったんですけど、チーフマネージャーがなぜかすごい私をフォローしだして。会議中に「鳥居の世界は血がないと成立しないんですよ!」って。あれ、私のことわかってくれてるんだなと思ったんですよ。
でもその後に「鳥居から血を取ったら何が残るんですか!」って。いや残るよー!って。
――熱い(笑)。
鳥居 その熱さ違うって(笑)。ああ私、そう見られてたんだって。そういうこともあって、じゃあ一回グロくないのを作ろうって変わりました。あまのじゃくなので。
35歳いつまでも来なくて、気づいたら36歳やってたんですよ
――「ブレイクした時にいつ死のうかなと思ってた」というのは、本当ですか。
鳥居 そうなんです。
――「小島よしおはそれができなかったから死に損ないだ」というのは?
鳥居 そうそう、死ぬタイミングを誤ってます。でも私も誤ってます。でも死んだように、もうほんとに何も思いのない余生を楽しんでる感じ、今。余生。びっくりしたのが、私ずっと「35歳で死ぬ」って言ってたんですけど、35歳いつまでも来なくて、気づいたら36歳やってたんですよ。
――どういうことですか?
鳥居 イベントで計算間違えて「36歳の誕生日おめでとう!」ってやってたら、ほんとはその時35だったんです。事務所も私も36だと思ってて。
――そんなことあります??
鳥居 それに気づかず、その後東スポさんの記事で年齢が間違ってたからマネージャーが電話かけたんですよ。「ちょっと年齢間違ってます」って。そしたらこっちが間違ってた(笑)。
――よかった、鳥居さんはまだ死んでない。
鳥居 なんかうまい具合死ねなかったんですね。空白の35歳。あとこれもよくなかったと思うんだけど、毎年「28歳おめでとう生誕祭」をやってるんですよ、私。毎年28歳。成人式を2回やっちゃう安西ひろこさんみたいな感じで。
――(笑)。
鳥居 毎年毎年28歳おめでとうをやってるから事務所も自分もわけわからなくなりました。
――「28歳」は何か理由があるんですか。
鳥居 永遠の28歳。あの28歳の時のまま止まってるんだよ。それは女芸人に迎合したところあります。女芸人って若くいたいとか思ってなきゃいけないんでしょ、っていう。
――別に若さに固執してるわけじゃないのに、なんでしょうね、「老化」って言葉がネガティブなのか。
鳥居 私、コロナで2回流れた単独ライブ、すっごい準備したけど、次にできるとしたら一切もう白紙にしてね。書き直す。あれは古い脳みそで書いたものだから。だって生まれ変わりました、私は。細胞ってそうなんだって。『テセウスの船』と一緒だね。
――『テセウスの船』ですか?
鳥居 私を構成しているパーツを全部新しくしたら、それは私なのか、それとも別物なのかっていう。老化っていうけど、細胞って生まれ変わってるから、だったら今が最新じゃないのかな。