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「ジャンルのトレンドは20年で循環する」〜映画『樹海村』プロデューサー紀伊宗之氏に聞くホラー映画の盛り上がり

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BLOGOS編集部

昨年2月に公開されるや口コミで人気が広がり、動員110万人、興収14億円を超える大ヒットを記録したホラー映画『犬鳴村』。同作では「大人が日常的に目にするメディアの先に客はいない」という判断の元、テレビCMのプロモーションを打たず、日常的に映画館に足を運ぶ人でなければ、こんなヒットした作品があったと知らなかった人もいるのではないだろうか。

そんな『犬鳴村』に続く「恐怖の村」シリーズの第2弾『樹海村』が現在公開されている。タイトルの通り、今回のテーマは海外にも「自殺の名所」として知られる富士の樹海。『樹海村』の持つ怖さの本質や、新型コロナウイルスが広がる中での製作について、同作を配給する東映のプロデューサー・紀伊宗之氏に聞いた。【取材:島村優】

『犬鳴村』が大ヒット 20年で循環するジャンル人気

―『樹海村』の話に入る前に、前作『犬鳴村』のヒットについての感想を教えてください。

正直に言うと、あれほどヒットすると思っていなかったので驚きました。ある程度は行くと思っていたけど、狙っていた数の倍くらい動員があったので。

映画館に足を運んでいたのは若い人が大半で、興行成績をある程度予測できるデータをもってしても拾えない広がりでした。つまり、映画のコアユーザーが多く来たわけではなく、浮動票のような人が大きく動いたため、あんなに人が集まったんだと思います。『犬鳴村』では、僕らが日常的に目にするメディアの先に客はおらず、僕らが見ていないメディアの先に客がいるはずだという仮説を立ててプロモーションを進めていましたが、それがうまくいったのかなと。

―口コミなどを中心に、それほど人気が広がった理由についてはどう考えていますか?

一つは、僕はジャンルトレンドっていうのは循環して円のように回ると思っています。映画のジャンルってそれほど沢山あるわけではなく、少し長い目で見ると20年に一度といったように、ブームが一周回って戻ってくる。『呪怨』のヒットは2000年なので、今はだいたい20年になります。

元々このシリーズを作ろうと思ったのは、最近ホラー映画があまりないな、と思ったことがきっかけでした。あったとしても少しポップで、Jホラーなイメージです。僕はもうちょっと70年代っぽい日本のホラー映画というか、横溝正史の『獄門島』や『八つ墓村』、『犬神家の一族』といった作品のような、日本土着の因習とつながっている作品が怖いと思うので、やるならそういった作品をやりたいなと。でも、おそらく横溝正史は今の人にとっては新しいと思うんですよね。ジャンルの人気が循環するっていうのはそういうことです。

―なるほど、映画ジャンルは単線的に進化しているイメージで説明されがちですけど、観客が新しく入れ替わってるという視点があるんですね。

そう、観客が変わっているんです。僕はヤクザ映画も作っていますけど、今の若い人にとってヤクザ映画は現実ではないファンタジーなんです。

世界でも知られた「樹海」をテーマにした理由

 

―この「恐怖の村」シリーズでは、そういった70年代のホラー映画に通じる質の怖さを見せていると。

日本には、言い伝えにしろ童謡にしろ、民俗学的に掘り下げるとおかしなことや怖いことがたくさんあります。例えばある地域では、貧さから子どもを間引くことが実際に行われていた時代もある。そういう恨み辛みから物語が綿々とつながっているわけで、そういうことを題材にしないと面白くないんじゃないかと。「うわ!」と驚かすような作品は僕がやりたいことではなかったので。

Ⓒ2021「樹海村」製作委員会

―『樹海村』の製作はいつくらいからスタートしたのでしょうか。

前作のヒットを受けて、公開初日か2日目くらいにはもう続編をやることに決めました。実際の撮影は7月から8月と新型コロナウイルスが広がっているなかで、世の中的には「今やるの?」と思われるかもしれませんが、緊急事態宣言の間もリモートで話は続けていて、僕は「何が起きてもやる」とみんなに言い続けていました。

みんなの意見を聞いていると、いろんなリスクがあるからやめましょうという声も絶対出てくるから、何もできなくなる。でも僕らは映画会社なので映画を作らないといけない。しっかりと対策を講じて、撮影はする。絶対にやる。それはプロデューサーの僕が責任を持って言い切らないと周りが不安になるんです。

―樹海を取り上げた『樹海村』という作品はどのように着想されたのでしょうか。

『犬鳴村』がなぜ成功したのか、という分析があっての今作です。いわゆる都市伝説と言われているものは、世の中の認知が大きい、それにまつわる話がどれくらい知れ渡っているかが重要になってきます。その点、樹海と聞けば「自殺の名所」だと日本中の誰もが知っている。英語のタイトルは「Suicide Forest Village」ですが、樹海は「自殺の森」として世界でも知られています。日本でも怖いところという印象はあるし、エピソードは山のようにある。

個人的に映画がうまくいく時のファクターがいくつかあるんですけど、企画段階から地域を探して、樹海にたどり着いた時にこれは行けるな、という手応えを感じました。出来上がったものを見ても、監督や現場のスタッフの力によって、映画の表現として僕が想像していたものをはるかに超えたものができました。

―なるほど。映画を見た人の反応が楽しみですね。

僕は興行者だったので、仕事をする上で「感覚で入って理屈で出る」ということを大事にしています。その逆だと単なる杜撰な仕事ですよね。だから今回もタイトルが大切だったし、地域を決めるのも難しかったです。

Ⓒ2021「樹海村」製作委員会

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