義務教育とは、憲法や法律で定められている「保護者が子どもに、受けさせる義務を負う教育」のことだ。これによって日本では、中学校までは誰もが当たり前のように学校に通い、授業を受け、勉強をして、卒業を迎えることができる。しかし、中にはそれが“当たり前”ではなかった人も存在する。
【映像】YouTubeで発信する“中卒”ギャル社長・葉山潤奈氏(4分30秒ごろ~)
■「勉強しておけばよかったの連続」不登校でも卒業できる義務教育
日本エコジニア社長の渋谷巧氏(33)は不動産の解体業や売買などの他、イベント運営など幅広く事業を手掛けている。現在は起業して15年目、グループで80億円弱の年商がある。今やグループ会社10社を率いる、超やり手の敏腕社長だ。
しかし、渋谷さんの最終学歴は中卒。「絵に描いたような型にはまれない少年というか。尾崎豊さんの楽曲に出会ってからは、その歌詞通りに生きることが正義みたいだった」と話す。
10代はヤンキーだった渋谷氏。渋谷氏は「盗んだバイクで走らなきゃいけないと思っていました。夜の校舎で窓ガラスを壊して回ったこともあれば、他の中学にハチマキを締めて乗り込んだり、夜に学校に泊まってボヤ騒ぎ起こしたり、プールの水を勝手にためちゃったこともある。本当にやりたい放題だった」と話す。
「授業を受けていたのか?」と聞くと「授業は受けてなかったですね。教室に行ってないので。中学校の卒業はすんなりさせてもらいましたが、今思うと大問題ですよね」と渋谷氏は答える。
仲間に会うためだけに学校に通うも、教室には行かず授業はほぼバックレ状態だった。それでも中学校は無事卒業し、何とか高校に入学したものの、授業についていけず、数カ月で中退してしまった。
渋谷氏は「当然、社会に出てから苦労はどこかでしなきゃいけない。当たり前に文法の整ったしゃべり方をするまでにも多くの時間がかかった。『勉強しておけばよかった』の連続だ」と振り返る。社長として成功した今だからこそ「義務教育」の大切さを改めて感じているという。
高校の場合、一定の成績が得られなければもちろん「留年」だ。またイチから学びなおす事もあれば、渋谷さんのように「中退」という選択肢もある。しかし、義務教育である中学では「中退」や「留年」は言われない。一体なぜだろうか。
教育問題の専門家である横浜国立大学名誉教授の高木展郎氏(※「高」は正確には「はしごだか」の字)に聞いてみると「基本的には(中学に留年や中退は)ない。履修制の中で、その学年で年間の授業を受けたら、子供たちがみんなであがっていくもの」と説明。「通わなくても『勉強ができないから留年になっちゃって』で、同じ学年を繰り返していると、他の子からの見る目がある。学校は勉強だけじゃない。義務教育は一緒に育つことが大事」と話した。
「年齢にあった教育を受け、一緒に育つことが大事」という考えの元、義務と言いながら、結果として学校に行かなくても卒業できてしまう現実。はたして義務教育は どこまで必要なのか。そもそもなぜ義務教育は中学校までなのだろうか。
現在は芸能事務所の社長として活躍する葉山潤奈氏も最終学歴は“中卒”だ。「ざっくりいうと、いじめ、不登校、ヤンキー、鑑別所……。(中学3年は)トータル3日行った」と、ほぼ学校に通わずに中学を卒業した。
葉山氏は、中学2年生でいじめに遭い、不登校になって家出。中学3年生で暴走行為に関わったとして鑑別所に入ったこともあったが、その後、更生。しかし、その後は卒業式まで日数が残り少なく、中学3年は3日しか登校しなかった。
中学の卒業は「すんなりできた。髪が金髪だったからという理由で、校長室で卒業式をして、卒業証書はちゃんともらった。(単位は)全くいらないと思う。2年生もほぼ行っていない」という。社長として働く中で感じた壁はあるものの「中卒だからと言って困ることはない」と明かす。
「漢字が読めないとか、勉強や学校について、社長同士で話していてあるある話についていけないとか、そういう場面では壁に当たる。基本的な足し算、引き算、簡単な漢字は小学校で(学習が)できている。学歴がないから、中卒だから、で困っていることはない」
芸能事務所の社長として、またSNSでも活躍している葉山氏。学校は必要だったのだろうか。
「私の場合は、いじめというきっかけがあった。学校に行かないというより、非行に走ったおかげで、人と違う、生きる力を持つことができた。私はこれでよかったのかなと思う。学校に行くのが嫌になってしまう子もいると思う。精神的に病んでしまったり、若い子でも自殺してしまったり。そういった子に関しては『学校に行くことが必ずしも正解ではないよ』といつも発信している。もちろん、学校行っていないことで何も不自由していないわけではなく、できることなら義務教育は受けた方がいいと大人になって思う」
葉山氏は、不登校の子だけが行く学校に通うよう提案されたが、その頃にはすでに非行少女になってしまっていた。「学校に行くことは考えられなかった」と振り返る。
不登校になる理由は「友人関係の問題」が28%とされていて、いじめなどの場合には「学校に行かなくてもいい」というメッセージの発信が増えている状況だ。