
今月刊行されたお笑いタレントのつぶやきシローによる著書『3月生まれあるある』(さくら舎)が、ネット通販で一時的に在庫切れとなるなど好評を博している。時に“一発屋”と揶揄されることもある彼だが、今もなお根強い人気を誇っているようだ。それはなぜなのか。
栃木弁の訛りを効かせてボソボソと呟く“あるあるネタ”で、1990年代後半に一世を風靡したつぶやきシロー。当時社会現象を巻き起こしたバラエティ番組『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)では、爆笑問題やネプチューン、ロンドンブーツ1号2号といったお笑い芸人とともに注目を浴び、一躍人気タレントとして知られるようになった。
しかし徐々にブームが下火になり、1999年9月に『ボキャブラ天国』がレギュラー放送を終了すると、つぶやきシローの仕事も激減したかのように世間の目には映った。一時はネット上で根も葉もない“死亡説”が噂されるほど、お茶の間からは姿を消すことになったのである。
だが実際にはその後もコンスタントにテレビ番組やお笑いライブで活躍。“一発屋”というレッテルを貼られることがある一方、2004年から2007年まで放送された人気バラエティ番組『笑いの金メダル』(テレビ朝日系)にも出演し、新たなファンの獲得につながっていった。
また、お笑いタレントとしてだけでなく、独特の風貌と喋り声を活かし、1990年代後半よりテレビドラマや映画で俳優としても活動。『踊る大捜査線』(フジテレビ系)や『TRICK』(テレビ朝日系)といった人気ドラマに出演した経歴があるほか、2020年は話題作『来世ではちゃんとします』(テレビ東京系)でナレーションを、『ペンション・恋は桃色』(フジテレビ系)ではレギュラー出演を果たしている。
さらに2011年には小説家としてデビュー作『イカと醤油』(宝島社)を発表しており、2016年には第二作『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館)も刊行。文筆の才能も発揮するなど、お笑いの世界にとどまらない多岐にわたる活動を行なっているのだ。
お笑い評論家のラリー遠田氏は、人気絶頂の“ボキャブラ時代”も浮かれることなくマイペースに活動し続けてきたことが、つぶやきシローが“一発屋”で終わらなかった理由だと指摘する。
「つぶやきシローさんは“あるあるネタ”の先駆けのような存在です。まだ“あるあるネタ”という言葉もない時代に、独特の目線で日常生活におけるささいな怒りや違和感を漫談ネタにして一世を風靡しました。
今でもツイッターで一言ネタを発信し続けており、そのネタのクオリティは全く落ちていません。つぶやきシローさんはかつての人気絶頂期にもあまり浮かれた様子はありませんでした。そうやってマイペースに淡々と活動を続けてきたからこそ、長く生き残っているのだと思います」(ラリー遠田氏)
2009年に開設し、1日1回“あるあるネタ”を投稿しているつぶやきシローのTwitterは、現在100万人弱のフォロワーを擁する人気ぶり。確かにつぶやきシローの芸風とTwitterは非常に親和性が高いと言える。
10年以上にわたりほぼ毎日自らの“ネタ”を発信し続けている芸人は、それだけで稀有な存在だ。流行の浮き沈みに流されることなく、持ち前の継続力で淡々と切れ味を磨き続けている“あるあるネタ”だからこそ、「3月生まれの悲喜こもごも」というニッチな層をターゲットにした新刊でも注目を集めるのだろう。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)