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スター・ウォーズファンたちが熱狂の『マンダロリアン』 ヒットの裏に日本のサムライコンテンツの影響? - 辰巳JUNK

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2010年代後半、『スター・ウォーズ』シリーズは行く末を危ぶまれていた。ルーカスフィルムを買収したディズニー傘下による続三部作の評判がかんばしくなかったのだ。

しかしながら、2021年の今、アメリカが世界に誇る同シリーズの未来は明るい。続三部作終幕とほぼ同時期、TVシリーズ『マンダロリアン』が「新たなる希望」として舞い降りたからだ。

『マンダロリアン』シーズン2 © 2021 TM & © Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. ディズニープラスで配信中

アメリカでメガヒット ジョージ・ルーカスもファンに

ディズニープラスにて2シーズン配信中の『マンダロリアン』は、帝国が崩壊した『エピソード6/ジェダイの帰還』の5年後を舞台に、ボバ・フェットのようなアーマーに身を包む賞金稼ぎのマンダロリアン、通称マンドーを主人公とするSF西部劇だ。

主人公のビジュアルだけ見れば無骨なこのドラマは、リリース早々、アメリカでメガヒットを記録した。それはまさに文化現象だった。

シーズン2ファイナルがリリースされた2020年末には、ニールセンのストリーミングチャートにおいて史上初めてナンバーワンに君臨した非Netflix配信作品になっている。評価も上々で、SFアドベンチャージャンルが不利とされるゴールデングローブ賞や全米脚本家組合賞においてもノミネートを獲得。それどころか、ディズニーが完成させた続三部作の第一弾『フォースの覚醒』に対して「新しいものがなにもない」と失望したシリーズの生みの親、ジョージ・ルーカスすら、本作を一ファンとして楽しんでいるという。

国民のハートを奪った「ベビーヨーダ」ことザ・チャイルド

『マンダロリアン』シーズン2 © 2021 TM & © Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. ディズニープラスで配信中

『マンダロリアン』が大成功を収めた要因には、新規ファンとオールドファン、どちらも掴むバランスを成立させた強靭な魅力がある。

まず、若者を筆頭とするライト層を惹きつけたのは、エピソード1にてサプライズ披露されたキャラクターのザ・チャイルド、通称「ベビーヨーダ」である。

このマスター・ヨーダの赤ん坊バージョンのような愛らしい生き物はまたたくまに大衆のハートを掴み、グッズが発表されようものなら朝のニュース番組で特集コーナーが放送されるほどの国民的人気を手にした。

Getty Images

今では圧力鍋から高級マカロンまでコラボグッズが展開されているし、クリスマスシーズンには歌手アリアナ・グランデ一家やMCU『アベンジャーズ』俳優ジェレミー・レナーなど人気セレブリティがホリデーギフトとして「ベビーヨーダ」の人形をSNS投稿していく状態だ。

オールドファンも納得の完成度

『スター・ウォーズ』を観たことがない人でも楽しめる『マンダロリアン』は、それと同時に、オールドファンなら感嘆せざるをえない旧作要素が張り巡らされている。特に熱狂を巻き起こしているのは、旧作キャラクターのサプライズ登場だ。

たとえば2話ではジャワ族が主人公と激闘を繰り広げるし、シーズン2にはさらなる大物が待ち受けている。なにより、さまざまな惑星を舞台に、ジョージ・ルーカスが打ち立てた「西部劇とサムライ映画とスペースオペラの融合」を高水準で完成させている。

主演俳優ペドロ・パスカルによると、無口な賞金稼ぎのマンドー自体、黒澤明監督作『用心棒』とセルジオ・レオーネ作品、おそらくは『用心棒』をベースにした『荒野の用心棒』を役作りの参考にするようプロデューサーからお達しがあったようだ。

『子連れ狼』にインスピレーション?

『マンダロリアン』シーズン2 © 2021 TM & © Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. ディズニープラスで配信中

ライトファンとオールドファンを掴んで離さない主題そのものも、日本のサムライコンテンツを基にしている説がある。

『マンダロリアン』は、賞金稼ぎのマンドーが依頼中に出会った謎の生物「ベビーヨーダ」とともに旅をする物語だ。

この構図は、リリース前の非公式リーク情報で「最大のインスピレーション」と名指しされていた小池一夫・小島剛夕による時代劇漫画『子連れ狼』とその映画版に似通っている。

愛らしい子どもをトレードマークにしながらハードな戦闘描写を行う方向性も近い。

男性の主人公が育児に奔走しながら成長

『マンダロリアン』シーズン2 © 2021 TM & © Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. ディズニープラスで配信中

加えて、エピソード監督を務めたブライス・ダラス・ハワードが指摘したように、男性主人公が育児に奔走しながら成長する様は、アメリカ映画の名作『クレイマー、クレイマー』も想起させる。

たとえば、SNSで話題を博したエピソードの一つは、生態不明ながら食欲旺盛なザ・チャイルドが、食べてはいけないものを口に入れるハプニングだらけの回だ。多くの保護者から共感を呼びそうな、コミカルかつキュート、そしてときにスリリングでシュールな養育関係が癒し要素として機能しているのである。

ちなみに、近年のアメリカでは、父親が育児に携わる時間が増加傾向にある。2016年ピュー研究所調査の平均では週8時間ほどで、1965年度の約3倍である。

とどのつまり、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』と『子連れ狼』、『クレイマー、クレイマー』がリリースされた1970年代よりも、『マンダロリアン』のような父親像に親しみを覚える視聴者が増えているかもしれない。

これまでの『スター・ウォーズ』シリーズの父子関係を考えると…

ただ、視聴者層の拡大を促進する癒し要素も、コアなファンからしたら不穏にうつる側面がある。映画史に残る名ゼリフ“I AM YOUR FATHER”が象徴するように『スター・ウォーズ』において父と子の関係は重大なテーマである。

加えて、旧三部作から続三部作に至るまで、そうした関係が悲劇を呼ぶパターンが多い。この傾向を考えると、『マンダロリアン』の主人公が「銀河一のグッドダディ」の二つ名で人気を博している状況はポジティブなサプライズかもしれない。

しかし、こうも予想できる……シリーズの法則により、マンドーと「ベビーヨーダ」はいずれ悲劇に見舞われる、と。

「父子の悲劇」説を筆頭に、旧作ネタが散りばめられている『マンダロリアン』は、幅広い考察を喚起させる。劇場映画のみならずアニメーションシリーズや小説版に重大なヒントがあると主張するファンも少なくない。

たとえば、ライトなセオリーとしては、アナキン・スカイウォーカーとアソーカ・タノが活躍する2008年アニメーションシリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』においても前出『子連れ狼』オマージュが行われているといったもの。世界観が広がったシーズン2で顕著だが、大量の新規ファンを惹き込んだ『マンダロリアン』は、既存のアニメーションや小説版への興味をも与えていく重層構造を展開している。

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