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「完全に別人格ですからね」菅首相発言は本当か……“違法接待”長男のこれまでを検証する - 「週刊文春」編集部

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「私、完全に別人格ですからね」。コロナ禍の中、夜な夜な総務省幹部を呼び出しては違法接待に手を染めていた長男について、国会でこう弁明した菅首相。だが、さらに取材を進めると、仕事を与え、人脈を用意し、車を貸す過保護な「父子密着」の様が浮かび上がった。

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珍しく感情を露わに弁明した菅首相

「(長男は)今もう40(歳)ぐらいですよ。私は普段ほとんど会ってないですよ。私の長男と結びつけるちゅうのは、いくらなんでもおかしいんじゃないでしょうか。私、完全に別人格ですからね、もう」

 2月4日の衆院予算委員会。野党議員の追及を受けた菅義偉首相(72)は、顔を強張らせると、珍しく答弁ペーパーから目を上げ、感情を露わにした。


菅首相

 事の発端は「週刊文春」が「菅首相長男 高級官僚を違法接待」と題して報じた2月18日号の記事だった。

菅氏の長男が「携帯値下げ」のキーマンを接待

 昨年10月から12月にかけ、総務省の許認可を受けて衛星放送を運営する東北新社の部長職にある菅氏の長男・正剛氏が、総務省ナンバー2で菅政権の看板政策「携帯値下げ」のキーマンである谷脇康彦総務審議官らを高級料亭で接待していたと報じたのだ。

 他に接待を受けていたのは、総務審議官(国際担当)の吉田眞人氏。衛星放送の許認可にかかわる情報流通行政局のトップ、秋本芳徳局長。その部下の湯本博信同局官房審議官。彼らは高額な飲食代をおごってもらったほか(湯本氏のみは自分の分は支払ったと「週刊文春」に主張)、タクシーチケット、さらに高級食パンやチョコレートなどを手土産として受け取っていた。国家公務員倫理法に違反する疑いが濃厚で、総務省はすでに調査を開始。武田良太総務相も国会で「国民の疑念を招いたことをお詫びしたい。徹底的に調査する」と答弁せざるを得なくなった。その結果次第では、減給や戒告など何らかの懲戒処分が決まると見られている。(注・その後、武田総務相は19日に、秋本氏と湯本氏を20日付で官房付に異動させる人事を発表した)

菅首相は終始他人事「私自身は全く承知しておりません」

 この大激震の引き金を引いたのは長男であり、「父の威光」なくしては成しえなかったはずの違法接待だ。にもかかわらず、予算委における菅氏の答弁は冒頭の通り、終始他人事だった。

「(写真の人物は)マスクで目隠しもあるので確定的に(長男だと)申し上げるのは難しい」

「(接待については)私自身は全く承知しておりませんので。(接待したのが)誰であっても、総務省との間でどのような会食があったか事実を確認して、ルールに基づいて対応すべき」

 2月8日の予算委員会では秋本氏、湯本氏らがさらに厳しい追及を受け、何度も「調査中」でかわすと野党が「国会軽視だ」と退席。1時間余の中断を経て、ようやく「1年に1回程度」と定期的に長男側と会食していた事実を認めたのだ。

“総理の息子”の頼みだから

 経済官庁の幹部は、次のように吐き捨てる。

「接待を受けた官僚の1人で予算委員会に招かれた秋本芳徳情報流通行政局長は『東北新社が利害関係だと思わなかった』などと答弁していますが、霞が関であの言葉を信じる者はいませんよ。許認可先に料亭に呼ばれたら普通は危なくて絶対に行きません。バレたら処分されるわけですから。“総理の息子”の頼みだから断れなかったのが真相ですが、さすがに国会でそうは言えない」

 あくまで菅首相は「別人格」だと言い張るが、共同通信の世論調査ではこうした説明に「納得できる」が30%、「納得できない」が62%に達した。そもそも「別人格」との言葉は本当なのか。長男は「自助」で東北新社の部長となり、総務省からの許認可にかかわる子会社の取締役になり、総務省の幹部と毎年、酒を酌み交わすようになったのか。今一度検証しよう。

「バンドを辞めてプラプラしていたから」大臣秘書官に抜擢

 地元横浜で生まれた正剛氏は明治学院大に進学後、「世界民族音楽研究会」に所属。音楽ユニット「キマグレン」の元メンバーと共に、「COTE-DOR」というバンドを組んで活躍。卒業後、同級生が社会人となる中、一向に定職に就かない長男の行く末を菅氏は非常に心配していたという。そして、06年に総務大臣として初入閣を果たすと、社会人経験のない25歳の長男を大臣秘書官に抜擢。後に菅氏は雑誌の取材に「バンドを辞めてプラプラしていたから」と語っている。

「大臣秘書官の給与は特別職給与法により、個々の秘書官の能力と経歴に基づいて決定されます。一番下の1号俸は06年当時、月額25万9100円。さらに期末勤勉手当(ボーナス)、地域手当、住居手当、通勤手当なども付きます。毎月の地域手当は東京の場合、俸給の20%が加算されることになります」(内閣人事局の担当者)

 ざっと計算すれば、ボーナスを含めて400万円ほどが支払われたことになる。

 正剛氏を知る地元の知人が苦笑交じりにいう。

「正剛はその後、秘書官を辞めてからは仕事がなくて、ある日突然『バーを経営する』と言い出したことがあった。そんな姿を見かねた空手部出身の父から鉄拳制裁を食らい、『直立不動でそれを受けたんだ』と話していました。父の叱責に嫌気がさしたのか、正剛は一度家を飛び出した。でも、街中のそこかしこに父親のポスターが貼ってあるのが目につき、父の威光に観念して家に戻ったそうです」

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