■雇用調整助成金のリハビリ期間は長期で考えるべき
政府はコロナ特別雇用調整助成金を4月まで続けることを発表していたが、5月から6月にかけて特例措置を段階的に縮小していき、7月からは更に縮小すると発表している。
段階的に支給率を引き下げていくことには賛成するが、その期間があまりにも短過ぎるのではないかと思える。
足掛け1年以上もの間、雇用調整助成金に頼ってきた多くの企業が、元の状態に戻るためには、それなりのリハビリ期間が必要であり、その期間は数ヶ月間という短い期間ではなく、できれば数年間単位にすることが望ましい。
これだけ激変してしまった企業を取り巻く経済状況を、たった数ヶ月間で1年前のコロナ発生前に戻すようなことは至難の業であり、あまりにも現実味に欠けた発想だと言える。この辺にも、現政府の経済センスの無さが垣間見える。
ここで言う「経済センスの無さ」とは、一言で言えば、「世情に疎い」ことを意味する。
ここで、「国は数年間も補助金を出す余裕が無い」と思った人がいるかもしれないが、補助金は税収で賄うわけではないので心配する必要は無い。
こう言うと、「将来世代に借金を背負わすことになる」と思った人もいるかもしれないが、それも誤解であり、子孫が借金を背負う必要など無い。
さらに、「現役世代で賄うなら消費税を上げなければいけなくなる」と思った人もいるかもしれないが、そんな必要は微塵も無い。
■1年間で100兆円ずつ、1000兆円の国富増加策
政府が、いきなり1000兆円も大盤振る舞いして財政出動するとインフレになる危険性があるが、1年間で100兆円ずつを10年間続ける程度なら、おそらくインフレにはならない。
仮にインフレになったとしても、せいぜい1%や2%程度だろうから、全く問題がない。
それでも、政府が長年目標にしてきたインフレ率2%に達するだけのことなので、むしろ喜ぶべきことだとも言える。
万が一、インフレ率が3%以上になった場合は、MMTの言う通り、増税すればいいだけ。増税とはインフレを退治するための経済政策である。
よく「インフレになった場合、政府は簡単に増税できるのか?」というトンチンカンな発言をしている人がいるが、デフレ下で掟破りの増税を行う政府が、なぜインフレ下で増税できないと思えるのか理解に苦しむ。
特に日本の場合、これまで緊縮財政まっしぐらでお金が足りない状態が続き、あっぷあっぷしながらやってきたため、マイナスの貯金が貯まっているような状態だとも言えるので、他国以上にお金を増やす余地が有る。10年間で1000兆円の国富を増やして挽回し、景気を良くするチャンスだとも言える。
こう言うと、「政府は金融緩和をし続けてきたが景気は良くならなかったのでは?」と思った人がいるかもしれないが、それには理由がある。
そのお金の大部分は市場に出ておらず、日本銀行内にブタ積みされているだけなので、ほとんど意味を為していない。金融政策だけで景気が良くなるというリフレ派の間違いは、この部分を理解していないことにある。
リフレ派は名誉挽回するためにも、この機会にこっそりと金融政策から財政政策に舵を切り替えるべきだと思う。
景気を良くするチャンスが目の前にあるというのに、そのチャンスに気付かず、実行することもできず、無為無策を決め込み、その上、更に無意味な増税を行うというのであれば、あまりに愚かであり度し難い。
経済センスの有る政治家であれば、このコロナ禍を逆手に取って、30年デフレに終止符を打つことができるかもしれない。