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風営法:ダンスが悪いのか、お酒が悪いのか?

先の投稿においても論じた風適法におけるダンスの新解釈に関して、引き続き業界の方々とコミュニケーションを取っているワケですが、突き詰めれば突き詰めるほどワケが判らなくなって来ている状況です。

先の投稿でもお伝えしたとおり、11月21日の警察庁の発表により風適法が4号営業種と定める「客にダンスをさせる営業」の解釈において、規制対象となるのは「男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているダンス」(=ペアダンス)のみに限るという見解が出され、ヒップホップダンスなどを代表とするシングルダンスは「男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるとは言い難い」という理由で規制対象にはならないとする基準が示されました。業界関係者としては、この制度が出来てから30年近くも経過した今頃になって、何故に今まで明示されたこともない重大な解釈が付加されるのか?という不満はあるものの、規制範囲が明確化されたこと自体には歓迎する声も大きいのが事実であります。

ただ、一方で新たな疑念として当然のように湧いて出てくるのが、上記の4号営業とは別に「客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」として規定されている3号営業(すなわちクラブ営業)との整合性です。現代のクラブ営業というのは、当然のようにヒップホップなどを中心としたシングルダンスが中心となる営業であり、ペアダンスを前提とした営業は殆ど存在しません。しかし皆さんもご存知のとおりここ数年、警察庁の推し進める風俗行政強化に伴って、このようなシングルダンスを中心としたクラブ事業者が続々と摘発されているのが現状。

となってくると、ワケが判らなくなってくるのが、飲食を伴わない4号営業では規制対象ではないと明示されたシングルダンスを踊らせる営業が、飲食を提供する…いやもっと判りやすく言えば「お酒」を提供するという行為が伴った時点で瞬く間に規制対象に変わるのは、一体どのような解釈に基づくものなのかという点。そもそも風適法上の規定における3号と4号の違いは飲食を提供するかどうかという点しかないワケで、じゃぁそもそも風適法が社会的リスクして捉え、規制の対象としているのは「ダンスをさせる」という行為というよりは、むしろ「お酒の提供」に重点があるのでしょうか?という論議になるワケです。

実は、同じような論議は風適法の深夜営業禁止規定においても行なわれています。風適法は、その規制対象とする営業種に対して基本的に深夜24時以降の営業を禁止しているワケですが、実は過去には構造改革特区という特区制度の下でクラブ営業の深夜営業禁止規定の緩和提案がなされたことがあります。当時の提案は警察庁の猛烈な反対によって却下され、実現には至らなかったワケですが、警察庁はその答申の中で深夜営業禁止の必要性に関して以下のように述べています。


深夜における営業制限については、一般的に深夜は、人が飲酒の影響等により理性を失いやすい時間帯であり、このような時間帯に風俗営業を営むことは、ともすると享楽的雰囲気を助長し、風俗上の規範を逸脱するなどの問題が発生するおそれが高いことなどから設けられた規制である。

(出所:第8次構造改革特区提案)



…と、ここでも論拠として出てくるのが「お酒」なんですね。クラブの深夜営業を禁止しなければならない理由も「お酒」。4号営業においては規制対象とならないとされたシングルダンスを、3号営業において規制対象とする理由も「お酒」。じゃぁ結局、警察庁が規制の対象としたいのは「ダンスなのか?お酒なのか?」、「深夜営業なのか?お酒なのか?」という根源的な論議となってしまうわけであります。

さらに言えば、この論議の先には飲食を提供しながらライブによる興行を提供しているライブハウスや、同様に飲食を提供しながら歌を歌わせる営業を提供しているカラオケボックスなど、風適法の規制対象とはならず、24時間営業が認められている類似する業態が存在するワケでして、その辺までを含めて全体の整合性を取ろうとすると、もはや小手先の解釈論のみで収拾が付くとは思えない状況にまで至るのであります。

ということで結論となりますが、今回の警察庁によるダンスの新解釈は、様々な不満がぶつけられながらも、これまで一定の整合性をもって維持されてきた風適法の運用が、一気に崩れてゆくキッカケとなる「一石」となりそうだ、ということ。この原因は成立以来、軽微な改正や解釈を重ねながらツギハギ状に運用されてきた風適法が、時代の変化に伴って限界に近づいてきている事にあるのであって、別に今の警察庁の担当の方々が何か間違った事をしたというワケではないのですが、いずれにせよそろそろ本格的な法改正の準備を始めるのが宜しいのでは?と個人的にご提案を申し上げる次第です。

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