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出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する意見 - 認定NPO法人 難民支援協会

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3.仮滞在制度について:要件を緩和し、制度を活用すべき

 本法案では、在留資格を持たない難民申請者の法的地位の安定を目的に、2005年より導入されている仮滞在制度について、在留資格の取得(第61条の2の5)や、就労許可(第61条の2の7第2項)に関する規定が新たに設けられた。このこと自体は、難民申請者の生活を改善する施策として歓迎する。

 しかし、現状では仮滞在を許可されること自体が少なく、2019年に許否が判断された733名のうち、許可されたのはわずか25名のみであった(※7)。不許可事由から、(A)上陸日等から6月経過後の申請であることが明らかであるとき、(B)退去強制令書の発付を受けているとき、(C)逃亡するおそれがあると疑うに足りる相当の理由があるとき(現行法第61条の2の4第1項6号・8号・9号)、を削除し、より多くの難民申請者が収容や収容の危険にさらされることなく申請結果を待てるようにすべきである。

4.監理措置について:長期収容の課題を改善するものになっておらず、見直されるべき

 本法案では、長期収容の解消に向けた措置の一つとして「監理措置」が新たに創設されている(第44条の2、第52条の2)。

監理措置とは、退去強制令書が発付された者等について、条件を付して、監理人による監理の下に収容から解く制度とされている。被収容者には難民申請中の者が多く含まれる(2019年末時点で被収容者の約39%)ことから(※8)、多くの難民申請者が監理措置の対象となりうる。しかし、監理措置は長期収容の解消にとっても不十分な制度であり、また対象者に必要以上の制限を課し、権利の侵害につながる懸念がある。

 国境を越えて移動する個人の収容を防ぐ取り組みは、国際的には「収容代替措置」と呼ばれ、対象者の自由権を守った上で支援を行うことを重視する考えに立っている(※9)。しかし、本法案が定める監理措置は、収容代替措置では重要な要素とされる人権の尊重や生活の保障といった観点を踏まえたものとなっていない。

 監理措置対象者への生活支援について、本法案では「条件の遵守の確保に資する」目的で「住居の維持に係る支援、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うように努める」としている(第44条の3第3項)が、対象者の生活を保障することは支援の本来の目的として位置づけるべきである。

さらに、監理措置対象者のうち就労が許可されない場合は特に生活が困難になることが想定されるが、必要な支援を監理人等の民間努力だけに求めるのではなく、国の予算措置により支援が届けられる仕組みが求められる。

 さらに、監理人の選定(第44条の3)や取消し(第44条の3第6項)にあたり、監理措置対象者の意思がどのように反映されうるかが規定されていない点も課題である。

対象者本人が望まない形で監理が行われる構造が生み出されることが懸念される。

 加えて、監理人の義務として、監理措置対象者による条件の遵守状況等を主任審査官に届け出ることが含まれている(第44条の3第4項、第5項)が、支援対象者との信頼関係の構築にあたり、当局への届出義務が大きな弊害となることが懸念され、当会を含む多くの支援団体や、弁護士にとって、監理人となることは困難であると想定される。  

 また、収容の長期化を防止する上でも、監理措置の制度は不十分である。身体を拘束する入管収容は最後の手段としてのみ用いられるべきという考えに立ち、収容期間の上限や収容の要件を設け、司法による審査を行うといった制度の確立が求められる。

5. 結び:難民認定制度の改善に向けて

 本法案は、外国人の管理を強化し、送還の促進につなげる方針を背景に、監理措置や退去命令、仮放免等に関する新たな罰則も設けている。日本に逃れた難民の立場をさらに不安定にするものであり、見直されるべきである。

 優先されるべきは難民認定制度自体の改善であるが、「難民認定制度に関する専門部会」により提言された「難民該当性に関する規範的要素の明確化」や「出身国情報の充実」といった難民保護に資する施策は本法案に含まれておらず、早急な実施が求められる。

また、本来であれば、出入国在留管理庁から独立した組織による難民の認定や(※10)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の見解に基づく難民認定基準の策定、手続きの透明性の確保、難民申請者に対する生活支援の明文化などが必要である。

 本年「難民等の保護に関する法律(案)」が国会に提出されている。難民保護の本来あるべき姿に向けた、国会での活発な議論を期待する。

以上

PDFファイル「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する意見」はこちら

※1 西日本新聞「日本の低難民認定率に懸念」
※2 「難民認定制度に関する専門部会」による提言の実施状況については、収容・送還に関する専門部会(第5回)難民支援協会 ヒアリング資料「収容・送還の課題 -難民保護の視点からー」(p.5)参照。
※3 例えば、「難民認定制度に関する専門部会」が参考にすべきとしたEUにおける「補充的保護」では、「出身国における申請者への拷問若しくは非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い,又は刑罰」や「国際又は国内武力紛争の状況における無差別暴力による文民の生命又は身体に対する重大かつ個別の脅威」を「重大な危害」と定義し、これらを被る現実の危険が示される場合を、保護対象としている。その他、補完的保護の国際的な潮流については、難民研究フォーラム研究会「補完的保護を考える -日本での導入に向けて」安藤由香里氏発表資料 参照。
※4 出入国在留管理庁「難民認定者数等について」各年版参照。
※5 日本弁護士連合会「行政不服審査法改正の趣旨に沿った、難民不服審査制度の正常化を求める会長声明」
※6 難民研究フォーラム「難民認定申請者に対する面接の実施方法について」
※7 出入国在留管理庁「令和元年における難民認定者数等について」
※8 令和2年6月2日付け石橋通宏議員質問主意書への政府回答[内閣参質201第134号
※9 日本においては、2011年より当会も加盟するなんみんフォーラム、日本弁護士連合会、法務省の三者により、空港で庇護を希望した者を対象とした取り組みが行われている。本法案の基となった「収容・送還に関する専門部会」における議論でも、上述の取り組みが参照され、「新たな収容代替措置」の創設が提言されている。
※10 第7次出入国管理政策懇談会 報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」でも、「行政の公正性や適正性を維持する観点から,難民認定業務の専門性・独立性をより高めるために,その組織の在り方について検討することを求めたい」とされている。

(2021年2月19日掲載)

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