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- 2021年02月19日 12:36
ジェノサイドと北京五輪
ジェノサイド(Genocide、集団殺害)という言葉をご存じでしょうか?ウィキに端的な説明があります。「国家あるいは民族・人種集団を計画的に破壊すること。ジェノサイド条約第2条によれば、国民的、人種的、民族的、宗教的な集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われる行為のこと」とあります。
語源はナチスによるユダヤ人虐殺が行われていた1944年にユダヤ系ポーランド人によりつくられた造語であり、1948年には国際連合でジェノサイド条約が採択、51年に発効しています。
では歴史的にジェノサイドにあたるとされる虐殺はどれにあたるか、であります。初のジェノサイドを理由とした判決は1998年のルワンダの虐殺に対する国際刑事裁判所での判決でした。ルワンダ虐殺は同国において少数民族のツチ族を50万人以上虐殺したものです。
また、アメリカが初めてジェノサイドを公にしたのが2004年のコリン パウエル国務長官(当時)によるスーダンのダルフール紛争で非アラブ人への虐待であります。また16年にはジョンケリー国務長官(当時)がIS(イスラム国)に対してのジュノサイドがあり、ISによる民族浄化があったとしています。
しかし、こう見るとジェノサイドと指摘される事案はどうもはっきりしないようです。歴史上の事件、例えば1930年代ウクライナでのソ連によるホロドモール、ナチスのホロコースト、旧ユーゴスラビアの紛争、オーストラリアのアボリジニ、オスマン帝国のアルメニア人虐殺、そして中国による少数民族虐待虐殺でダライラマや新疆ウイグル問題とされますがリストには候補としてあがるものの断言には至っていません。また中国の法輪功に対する弾圧はカナダの一部の研究ではcold genocide(人々に察知されにくいジェノサイド)としています。
こう見ると確かにたくさんあるようなのですがなぜ、ジェノサイドが一義的に決められないかといえば明白な定義がなく、観念的なところもあり、第三者による確証も難しいものがあるからでしょう。よってどこかの国や研究機関がジェノサイドだといってもそれが必ずしも絶対的な判断に至らないのです。
ところで世界では152か国が批准しているジェノサイド条約ですが、日本は入っていません。理由は条約締結国はジェノサイドと認識された対象(国)に対して日本の国内法による処罰をする必要があるのですが、国内法が完備されていないというのが理由です。
ではなぜ、今まで放置をしていたのかと言えば「必要性や緊急性の観点から距離を置いてきた」(産経)となっています。悪い言い方をすれば島国の悪い面であり、「自分に火の粉かかかってこなければ後回し」ということでしょう。ちなみに国連のジェノサイド条約が加盟国への国内法での処罰規定があるのに対して似たような取り決めに国際刑事裁判所のローマ規程があり、これには縛りがないため、日本は2007年に加盟してます。
さて、このような中、アメリカが新疆ウイグルに対する中国のふるまいはジェノサイドだと認定しています。これを受けてポンペオ前国務長官が北京五輪の開催地変更を求めているほか、共和党議員の一部からアメリカ選手団のボイコットの声が上がり始めています。またカナダもカナダ人の中国での2人の「人質問題」を含め、中国との関係が悪化しており、アメリカに追随する動きが出そうです。
ジェノサイドの定義次第ですが、人々にとって生まれ育つ国や場所、タイミングは全て宿命であり、選択の余地がないという前提に立てば片や自由を謳歌し、片や弾圧を受けるべきではありません。ジェノサイドは特に宗教的、思想的背景があり、「嫌な民族を一束にし、国家運営の邪魔にならないようにする」という政治的、権力的弾圧であります。ミャンマーのロヒンギャに代表される少数民族問題も然りであります。
当然、香港や台湾の民主化問題にも絡んでくるわけで中国共産党が自国の都合で人々の権利を突然はく奪したり、強制的な重要な変更を強いるのは現代社会においては否であるわけで、ポンペオ氏のボイスは正鵠を得ているといってよいでしょう。北京五輪のボイコットとなればモスクワ五輪の二の舞ということになり、メンツを大事にする中国の顔は丸つぶれということになります。
民族と宗教は歴史的に揉め事ネタのトップでありますが、日本はその点、ほぼ単一民族で神道に教義がない点においてジェノサイド的な問題は起こりにくいと言えます。(その代わり個別を対象とする「いじめ」が多く存在します。)
当然ながら日本ではこういう問題もあまり正面切って議論されることはないのですが、ジェノサイドを背景にした政治的ぶつかり合いが2021年も着目点の一つとなりそうです。
では今日はこのぐらいで。
語源はナチスによるユダヤ人虐殺が行われていた1944年にユダヤ系ポーランド人によりつくられた造語であり、1948年には国際連合でジェノサイド条約が採択、51年に発効しています。
では歴史的にジェノサイドにあたるとされる虐殺はどれにあたるか、であります。初のジェノサイドを理由とした判決は1998年のルワンダの虐殺に対する国際刑事裁判所での判決でした。ルワンダ虐殺は同国において少数民族のツチ族を50万人以上虐殺したものです。
また、アメリカが初めてジェノサイドを公にしたのが2004年のコリン パウエル国務長官(当時)によるスーダンのダルフール紛争で非アラブ人への虐待であります。また16年にはジョンケリー国務長官(当時)がIS(イスラム国)に対してのジュノサイドがあり、ISによる民族浄化があったとしています。
しかし、こう見るとジェノサイドと指摘される事案はどうもはっきりしないようです。歴史上の事件、例えば1930年代ウクライナでのソ連によるホロドモール、ナチスのホロコースト、旧ユーゴスラビアの紛争、オーストラリアのアボリジニ、オスマン帝国のアルメニア人虐殺、そして中国による少数民族虐待虐殺でダライラマや新疆ウイグル問題とされますがリストには候補としてあがるものの断言には至っていません。また中国の法輪功に対する弾圧はカナダの一部の研究ではcold genocide(人々に察知されにくいジェノサイド)としています。
こう見ると確かにたくさんあるようなのですがなぜ、ジェノサイドが一義的に決められないかといえば明白な定義がなく、観念的なところもあり、第三者による確証も難しいものがあるからでしょう。よってどこかの国や研究機関がジェノサイドだといってもそれが必ずしも絶対的な判断に至らないのです。
ところで世界では152か国が批准しているジェノサイド条約ですが、日本は入っていません。理由は条約締結国はジェノサイドと認識された対象(国)に対して日本の国内法による処罰をする必要があるのですが、国内法が完備されていないというのが理由です。
ではなぜ、今まで放置をしていたのかと言えば「必要性や緊急性の観点から距離を置いてきた」(産経)となっています。悪い言い方をすれば島国の悪い面であり、「自分に火の粉かかかってこなければ後回し」ということでしょう。ちなみに国連のジェノサイド条約が加盟国への国内法での処罰規定があるのに対して似たような取り決めに国際刑事裁判所のローマ規程があり、これには縛りがないため、日本は2007年に加盟してます。
さて、このような中、アメリカが新疆ウイグルに対する中国のふるまいはジェノサイドだと認定しています。これを受けてポンペオ前国務長官が北京五輪の開催地変更を求めているほか、共和党議員の一部からアメリカ選手団のボイコットの声が上がり始めています。またカナダもカナダ人の中国での2人の「人質問題」を含め、中国との関係が悪化しており、アメリカに追随する動きが出そうです。
ジェノサイドの定義次第ですが、人々にとって生まれ育つ国や場所、タイミングは全て宿命であり、選択の余地がないという前提に立てば片や自由を謳歌し、片や弾圧を受けるべきではありません。ジェノサイドは特に宗教的、思想的背景があり、「嫌な民族を一束にし、国家運営の邪魔にならないようにする」という政治的、権力的弾圧であります。ミャンマーのロヒンギャに代表される少数民族問題も然りであります。
当然、香港や台湾の民主化問題にも絡んでくるわけで中国共産党が自国の都合で人々の権利を突然はく奪したり、強制的な重要な変更を強いるのは現代社会においては否であるわけで、ポンペオ氏のボイスは正鵠を得ているといってよいでしょう。北京五輪のボイコットとなればモスクワ五輪の二の舞ということになり、メンツを大事にする中国の顔は丸つぶれということになります。
民族と宗教は歴史的に揉め事ネタのトップでありますが、日本はその点、ほぼ単一民族で神道に教義がない点においてジェノサイド的な問題は起こりにくいと言えます。(その代わり個別を対象とする「いじめ」が多く存在します。)
当然ながら日本ではこういう問題もあまり正面切って議論されることはないのですが、ジェノサイドを背景にした政治的ぶつかり合いが2021年も着目点の一つとなりそうです。
では今日はこのぐらいで。
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