コロナ禍にも関わらず株価は上昇を続け、2月15日には日経平均株価が3万円を突破した。いわゆる「バブル景気」のさなかの1990年8月以来、30年半ぶりの大台回復だ。
こうしたなか、各地で開催されている投資セミナーにも多くの人が集まっている。コロナ禍によって将来の先行きに不安をもった若者を中心に「投資熱」が高まっているのだ。

しかし、世の中にあふれる投資の本や投資セミナーの通りに株や債券を買うと損をする人が多いという現実もある。果たして今、このコロナバブルとも呼べる状況で、どのような投資をするのがいいのだろうか。楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏に訊いた。
コロナの“おかげ”で株価が上がった
――コロナ禍の今、なぜ株価が上がっているのでしょうか。
コロナ禍なのになぜ、というよりはむしろ、現在の株高は、コロナの“おかげ”で起きています。遡ると、コロナの第一波が始まった2020年3月に、今まで見たことがないようなスピードと幅で、日経平均は急落し、1万6000円台に突入するほどでした。このときコロナは、株価にとって大きな悪材料でした。
その状況に対して、日本銀行はもともとの金融緩和を拡大しましたが、加えて政府もコロナ対策で莫大な額の財政支出を行いました。その結果、これまで広義のマネーサプライやそのベースになる銀行貸し出しが年率で2%くらいしか増えていなかったものが、両方とも対前年比で5~7%に増えた。そうした資金が、株式などの投資に流れました。同様の動きが米国でもあって、その結果、米国の株価は史上最高値を更新している。日本株は米国株に連動するので、米国の影響は大きい。
「コロナのおかげで株価が上がった」と言われると、嫌な感じがするかもしれませんが、これが今回の株高の背景です。
――2月15日には日経平均は3万円を突破。これはバブルではないのですか。
確かに今の株価の形成は「バブル的」です。
一方、バブルとは、長期的には維持できないほど資産価格が高くなった状態を指します。株価はまだまだ上がる可能性があるし、もちろん、下落する可能性もある。何れにしても、投資家は株価の絶対水準が高いのか安いのかについて判断しなければなりません。
株価がバブルか否かを判別する手掛かりの1つとしては、「PER(株価収益率)」を見る方法がオーソドックスです。PERは、1株当たりの株価が、その企業の1株当たりの純利益の何倍に相当するかを示す指標です。この数字が大きいほど、その会社は利益に対して株価が高いと言えます。
株価が高いという「黄色信号」が点灯し始めた
たとえば、1株1000円の株で、年に1株当たり50円の純利益があるとします。純利益が株主のものだとすると1年に獲得する利益は株価に対して5%です。この利回りを益利回りと呼びます。この場合、PERは20倍です。利益そのままで株価が1250円に上昇すると益利回りは4%となってPERは25倍です。更に株価が上昇して、益利回りが3%になるのは、PER33.3倍です。
経験的に、アメリカの「S&P 500(米国株式市場の動向を示す株価指数)」は、S&P 500のPERが20倍を超えてくると、少し高いなという水準になったと言われることが多かった。
では、今の日経平均を1つの銘柄として見立ててみるとどうなるか。1株当たりの利益を計算すると1200円くらいなので、株価3万円の現在のPERは大凡25倍です。
これは、株価が高いという「黄色信号」が点灯し始めた水準といえるでしょう。今後さらに株価が上昇し、PERが33.3倍となる3万9960円になったら、赤信号だというくらいに考えるといい。
黄信号の3万円から赤信号の約4万円手前までずいぶん幅があるなと感じるかもしれませんが、どこが限界かを予想するのは非常に難しい。ただ、今の日本の株価は黄色信号が灯りはじめた状態だなあと思っておくのがいいだろうと思います。