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人の命を守りたいなら日本は原発を全力で推進すべき

12月16日(日)は、衆議院議員総選挙と東京都知事選挙のダブル選挙が行われる。衆院選では、原子力をどうするかという点で、エネルギー政策がひとつの争点になっている。筆者は、これまで幾度となく日本の原子力政策に関して論じてきたが、今日は、これまでの議論のポイントをまとめておこう。結論から言うと、筆者は日本では原子力を推進することが唯一の正しい政策であると確信している。理由は、人々の健康、命という点に関して原子力は他の発電方法の追随を許さないほど優秀な実績があり、さらに日本においては経済性も圧倒的に優れているからだ。これらの論拠に関しては、筆者はすでに書籍を出版しているし、以下の論文に要点をまとめているので読んでもらいたい。

「反原発」の不都合な真実 (新潮社)藤沢数希画像を見る
脱原発で日本人は金も命も失う、Voice2012年7月号、藤沢数希

まずは命に関して。化石燃料による大気汚染は、現代社会では人々の主要な死因のひとつとなっている。自動車事故などと違い、大気汚染と病死の因果関係は間接的である。しかし、大気汚染の度合いの違う地域で循環器系や呼吸器系の病気の死者数、肺癌などの死者数を疫学的に研究すると、多くの人々の死因が大気汚染に結びついていることが分かる。言うまでもなく、最も大きい汚染源は自動車の排ガスであるが、火力発電所は自動車に次ぐ汚染源となっている。

筆者の推計によると、日本の電力の3割を担っていた原子力を、全て火力発電所に置き換えると、日本の火力発電所の環境性能を高く評価して、かなり控え目に見積もっても、年間で3000人ほど余分に日本人が死亡することになる。3000人死/年はさほど大きな数字ではないが、原子力事故による放射線で死亡する人がほとんどいないことを考えれば、小さな数字でもない。

一方で、福島程度の放射線で、統計的に何らかの病死者数が増えることはまず考えられない。これは様々な放射線医学の専門家が早くから指摘してきたことであり、このことは国連放射線科学委員会も追認しているが、なぜか国連の発表は日本ではほとんど報道されなかった。日本のマスコミは、福島県で健康被害が出ないと何か困ることでもあるのだろうか?

"No big Fukushima health impact seen: U.N. body chairman," Reuters, 31 Jan 2012.

人類の原子力事故で(原爆を除けば)最大のチェルノブイリでも、疫学的に見い出された住民の健康被害はミルク汚染によるわずかな小児甲状腺癌だけである。そして、統計上は影響が小さすぎて証明できないが、最大限に見積もれば4000人程度が死亡するかもしれないという非常に軽微なものだった。この4000人を含めても、原子力の発電量1TWh当たりの死亡者数はわずか0.03人である。これは火力発電所の20人~30人と比べても、まさに1000倍は安全なのである。

幸か不幸か、福島第一原発での事故は現実のストレステストとなった。そして、反原発運動家が言っていたような、シビアアクシデントによる原子炉の水蒸気爆発で、死の灰が降り注ぐ、などというようなことが起こらないことが奇しくも実証されたのである。原発はストレステストに合格したのだ。

経済的負担の点でいえば、現在のような原子力発電所を止めているのは、愚の骨頂だろう。これによる追加的な化石燃料費の日本国民の負担は年間3~4兆円にも達している。これは日本の総生活保護費よりも多く、防衛予算に匹敵する。そして、福島第一原発では定期点検中で、原子炉が全くの空であった4号機が水素爆発を起こしていることからも分かるように、原発が発電を止めたからといって必ずしも安全性が高まるわけではないのだ。まさ、金をドブに捨てているのである。それも考えられないほどの大きな金を、だ。

一部に、核廃棄物の処理の難しさを理由に原子力に反対を唱えている識者もいるが、これも議論に値しないほど愚かな意見としか言いようがない。原子力は、核燃料の桁外れのエネルギー密度ゆえに、廃棄物の量は極めて少ない。驚くことに、先進国のひとりの人間が一生に使うエネルギーを全て原子力で補ったとすると、その核廃棄物の量はわずかゴルフボール1個分だ。このように極めて少量の核廃棄物は、別の種類の原子炉の燃料にしたり、最終的には地中に埋めておけば何の問題もないのである。よく反原発論者がいうように、そうした地中の核廃棄物を、未来の人類が掘り起こして、癌になったら大変らしいが、いったん現代の文明が滅びた後に、生き残った人類が核廃棄物を掘り起こすというようなSFの世界の想像をふくらませる前に、毎年百万単位で大気汚染で死んでいる現代の人々に思いを馳せた方がいいだろう。こんな簡単な数量的な比較もできないようでは、脳みそが腐っているとしか言いようがない。

世の中の問題は、長所や短所が入り交じっているから選択に悩むのである。しかし、原子力に関しては、命に関しても金に関しても、その他の発電方法と比べて圧倒的に優れていることが明白なのだから、悩む要素がないのである。よって、反原発を唱えている政治家、政党にはそれだけで投票しない十分な理由があると筆者は確信している。反原発は、まさに日本を衰退への道に叩き落とすことになるだろう。

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