- 2021年02月18日 15:58 (配信日時 02月18日 15:15)
「日経平均3万円は通過点」コロナ禍が続くほど株価は上がっていく
1/2日経平均株価が30年ぶりに3万円を突破した。コロナ禍の空前の株高はいつまで続くのか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は「少なくともコロナが終息するまでは低金利が維持されるので、『株以外に何を買えば良いのか』という状況は続くだろう」という――。

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極まる「株の債券化」
2月15日、日経平均株価は30年6か月ぶりに終値ベースで3万円を突破した。緊急事態宣言真っただ中の値動きを前に、「狂っている」「バブルだ」との声は引きも切らない。
しかし、このような状況に至っている背景に関しては昨年末の本欄への寄稿「『一体、誰が株を買っているのか』空前の株高を招いた“巨大投資家”の正体実体経済と株価が乖離する根本原因」で詳しく解説させていただいた通りなので、そちらをご参照いただきたい。
世界で金利が消滅する中、定期的に配当という形でインカムを出せる株式はもはや希少である。「株が株として買われているというよりも、債券のような目線で買われている」という「株の債券化」はコロナ以前から取りざたされてきたキーフレーズである。株式市場が実体経済を凌駕する伸びを続ける展開は近年に始まったものではなく、リーマンショック後から延々と見られている。
株価と実体経済の乖離(かいり)をつかむ方法として最もシンプルなバフェット指標(名目GDPに対する株式時価総額の比率)は日米で図表1のような状況にある。米国では遂に2倍を突破した。日本も過去最高である。

日米のバフェット指標(※20年12月末時点)
だが、水準以上に方向感に着目して欲しい。同比率は2009年以降の過去12年間、上昇一辺倒である。この12年に共通する要因がこの動きを駆動しているのだろう。それは低金利の常態化くらいしか思い当たらない。基本的には「低金利だから株が買われている」というのが大局的な理解になると筆者は考えている。
市場関係者の憂鬱「最大のリスクはコロナ終息」
とはいえ、ここまで短期間で幅を持って上がってきた以上、「本当にこのまま続くのか」というリスクの所在が気になるのが人情だろう。
もちろん、リスクはいくつか考えられる。「低金利だから株が買われている」と言ってしまえばそれまでだが、過去1年に関してはなりふり構わない財政・金融政策がさらなる追い風となったことは間違いない。
ゆえに、それが撤収されることが目下、大きなリスクであるという発想に行き着く。モラルハザード以外の何物でもないが、「最大のリスクはコロナ終息」という事実は株式市場を筆頭として金融市場の参加者が薄々感じているものだろう。

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この点、やはり気になるのはワクチンとその効用の先行きである。新型コロナウイルスのワクチンに関しては、日本ではようやく接種が始まったばかりだが、既に海外では順当に接種が進められ、その効果も可視的なものになってきている。その筆頭がネタニヤフ首相自ら「集団免疫に向けた世界の実験室」と称するイスラエルだ。
2月12日現在、人口100人当たりの接種回数は72.2回と圧倒的な世界最速ペースを誇り、2位のアラブ首長国連邦(UAE、49.6回)に大きく差をつけている。
「大量に早く購入した」「1回分につき数ドル多く払っても、すぐに誰もがその10倍を払うようになる」(ともにネタニヤフ首相)といった判断の速さもさることながら、同国が個人の医療記録をしっかりデジタル一括管理していることで、製薬会社もデータを取りやすいというメリットが奏功したようである。
イスラエルは国民のほぼ全員に接種可能なワクチンを確保しているとされ、接種完了も遠い未来の話ではなさそうだ。
ワクチンの効果はてきめん
入手可能な数字を見る限り、ワクチンの効果はてき面である。イスラエルではワクチン接種が昨年12月中旬過ぎたあたりから始まり、新規感染者数(日次)も新規死亡者数(日次)もはっきりピークアウトしている(図表2)。

接種開始から約1カ月程度で新規感染者数に影響が表れ、そこからタイムラグを伴って新規死者数に影響が表れるというパターンに見える。こうした変化が行動制限や気候の変化の結果なのか、それともワクチンの効用なのか。あるいはそれ以外なのか。疫学の専門家ではない筆者に多くを語る能力はないが、現状はワクチンの効力に期待を抱かせるものである。
今後、イスラエルで死亡者数が明確に減り、新規感染者数が根絶される展開になれば、いよいよ金融市場でも材料視されるだろう。こうしたニュースは良いニュースに決まっているが、上述したように、それをマクロ経済政策の撤収と結び付けてリスクだと考える向きは少なくない。
イスラエルという「実験室」で起きたことが世界に波及していくに伴い各種のマクロ経済政策が撤収され、近い将来に金利が上昇に転じ、株売りもたきつけられるというのが市場参加者の恐れるイスラエルリスクである。
米国で求められる再現性
もっとも、イスラエルリスクと言いつつ、ワクチンによる経済活動の正常化を市場が織り込むにはイスラエルという「実験室」を出て、主要な先進国における再現性も意識される必要があろう。その意味では米国の挙動が決定的に重要だ。
ワクチン接種から感染者数や死亡者数のピークアウトまで、イスラエルと類似の展開を米国でも確認できれば市場は必ず材料視する。過去最高値で推移する米株が動揺すれば、日本株の動揺も不可避だろう。
そもそも日本経済の強みが特別に意識されて日本株だけが上がっているわけではないのだから当然である。あくまで米国の挙動に追随して、日本株も推移することになる。
この点、接種回数こそイスラエルに大きく劣後するものの、米国の感染状況も似たような軌道を描き始めており、「12月中旬に接種開始→1月中旬にピークアウト」という雰囲気がある(図表3)。

では、市場はどのように織り込んでくるだろうか。最も分かりやすいのはFOMC声明文の変化を捉える格好だろう。このまま接種回数が積み重ねられ、昨夏程度の感染者や死亡者の水準に回帰していった場合、FOMC声明文やFRB議長会見などでも言及されるだろう。
現状のFOMC声明文では「経済の行方は相当程度、ワクチン接種を含めたウイルスの歩みに依存している(The path of the economy will depend significantly on the course of the virus, including progress on vaccinations」との一文が挿入されている。このような建て付けになっている以上、ワクチン接種に伴う経済・金融情勢の好転は何らかの形(当該表現の削除も含めて)で必ず情報発信があるはずだ。
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