記事

引っ越し屋さんと修理業者さんとブルシット・ぼく

1/2

先日、ドラム式洗濯機の修理業者さんに来てもらった。

4年前に買った我がドラム式洗濯機。1、2年ぐらい前から、脱水のときに素人からしてもこれはただ事ではないという轟音を出し始め、ついに昨年末、脱水が全くできなくなってしまった。

電話して1週間。修理屋さんが1人でやってきた。しかし、我が洗濯機の自慢の轟音を聞かせるとすぐに彼は「これはただ事ではない」という顔をして帰っていった。どうやら中のドラム自体を替える必要があるらしく、後日、今度は2人がかりで来るとのこと。

これはえらく時間がかかりそうだと心配したが、数日後、2人で来た修理屋さんたちは手慣れた手付きであれよあれよという間に我がドラム式洗濯機を分解し、ドラムを取り替え元通り。わずか1時間弱ですべて終わらせ、颯爽と去っていった。我がドラム式は前のようにかすかな運転音を立てながら、今、ぼくの冬服を洗ってくれている。

ちなみに故障の原因は洗濯ものの量だったようで、業者さんが洗濯機のドラムのほんの底辺の方を手で指して示してくれたのはこの洗濯機の適切な洗濯量。その手の位置を見て、いつもドラムがパンパンになるまで詰め込んでいたことは口が裂けても言えなくなったけれど、「もう二度としません。すいませんでした」と謝る代わりに、ぼくは業者さんの助言を何度も相槌を打ちながら聞いていた。

という業者さんの話なのだけど、ドラム式洗濯機で、もう一つ思い出す業者さんがいる。引っ越し屋さんだ。

今の自室は3階にあるが、このドラム式洗濯機も引っ越し屋さんに3階まで運んできてもらったから今ここにあるわけだ。

ぼくからしても分かるのだが、このドラム式洗濯機は非人道的に重たい。本当に理不尽なくらいの重さだ。それはプロならばどうにかなるというようなレベルではなく、引っ越し屋さんが前後2人がかりで抱えながら部屋に入ってきてくれたときの姿は今でも忘れない。体格のいい男性2人が、青筋を立てて「人がこんな表情をしてはダメだ」という悲痛な顔をしながら、命が削られているような聞いたことのないうめき声をあげながら、我が新居に運び込んで来てくれたのだ。

洗濯機が所定の位置に収まった後、業者さんのプライドを傷つけるようで本当は言いたくなかったのだが、反射的に「なんかすいません…」と謝ってしまった。業者さんは「いや、これでもいつもよりは楽だったんで」と笑みを浮かべて返してくれた。もしかすると、いつもそういう風に言うことに決めているのかもしれない。

2つの業者さんのエピソードの点と点を線でつなぐのはドラム式洗濯機、なのだが、ぼくがこの2つを並べてしみじみと考えたのは「仕事」についてだ。

彼らの共通点は「ぼくを助けてくれた」ことだ。ぼくが必要としているところに、対価と引き換えにやってきて、ぼくを救ってくれた。ああ、なんと尊いのだろう。誰かのためになる仕事。

難民キャンプで井戸掘っているような人も同じ理由で尊敬はするのだけど、難民キャンプで井戸を掘っている最中の人にはなかなか会えない。ぼくにとって、間近で直撃するのが引っ越し屋さんや修理屋さんなのだ。

もちろんぼく自身も会社員をしている以上、何かの「ために」なっているから、今の席があるわけである。

しかし、ぼくのしているような仕事は、あくまでも「会社の利益追求のため」にあるのであり、本当に必要としている誰かのためになっているだとか、本質的に社会のためになっている、というような気分はあまりない。

やっている仕事がつまらないわけではない。やりがいを感じないわけでもない。楽しい瞬間だってある。

けれど、ドラムを換えてくれた人や、青筋を立てながら洗濯機を運んでくれた人など、「ためになる仕事」を前にしたとき、途端に、居心地の悪さを感じるのも事実なのである。

あわせて読みたい

「雇用・労働」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「現場の国家公務員はお茶菓子も食べない」国家公務員の士気を下げる接待騒動

    国家公務員一般労働組合

    02月26日 22:33

  2. 2

    各国が頓挫するなか日本の教育支援が起こした南東欧の国・ボスニアでの「革命的変化」

    BLOGOS編集部

    02月27日 07:05

  3. 3

    地銀を三重苦の崖っぷちに追い込む「給与デジタル払い」解禁の裏事情

    大関暁夫

    02月27日 11:20

  4. 4

    政治未経験だったトランプ前大統領が受け、政治家30年以上の菅総理が受けない理由

    青山社中筆頭代表 朝比奈一郎

    02月27日 07:34

  5. 5

    「SDGsな未来へ」が意味するもの

    自由人

    02月27日 11:16

  6. 6

    スター・ウォーズファンたちが熱狂の『マンダロリアン』 日本のサムライ影響?

    BLOGOS映像研究会

    02月26日 07:09

  7. 7

    3月4月頃から世界や社会の流れが「逆流」するかもしれない話

    かさこ

    02月27日 09:52

  8. 8

    そろそろ、バブル崩壊はじまるかな!

    澤上篤人

    02月26日 15:50

  9. 9

    致命傷にはならないだろうが、やはり菅さんが受けた傷は深い

    早川忠孝

    02月25日 19:06

  10. 10

    養老孟司が語る「コロナの壁」とは? パンデミックで暴かれた“日本的空気”の問題点 - 伊藤 秀倫

    文春オンライン

    02月26日 19:50

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。