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サラリーマンの給料が上がらない3つの原因

 選挙がある度に有権者の関心事は何か、ということに政治家が関心を示し、そして、有権者の多くが「経済を何とかしてくれ」と言うものだから、政治家たちは、自分たちが政権をとったら景気を良くすることができる、なんて言うのです。

 そのような政治家のいうことを貴方は信じます?

 多くの有権者は、多分、政治家の言うことを真に受けることはないでしょう。というのも、もう耳にタコができるほど何度も同じような台詞を聞かされ、そして、何度も期待を裏切られてきたからです。

 しかし‥そうではあっても、もう一度、景気のいい時代が来て欲しい、と。少しずつでもいいから給料が増えるような状況になって欲しい、と。

 先日、新卒者の初任給がまた20万円を切ったというニュースを耳にしました。給料が全然上がらないのですよね。だから、皆、デフレ脱却を口にするのです。

 では、どうにかして給料を増やすことができるのか?

 そこで、リフレ派は言うのです。マイルドなインフレを起こすことが必要だ、と。

 インフレになって、インフレ率以上に賃金が上がる保証はないものの、インフレになって、却って賃金が低下するということはないでしょうから、そこにかすかな救いを求めている気がするのです。

 私、思うのですが‥仮に思惑どおりマイルドなインフレが起きたとして‥つまり、例えば物価が5%上がったとして、そして、そのときに給料が3%上昇したならば、サラリーマンたちは大喜びして政治家を称えるのだろうか、と。

 もし、3%給料が上がったことにサラリーマンたちが喜んでくれるなら、政治家たちも苦労のかいがあったというものでしょう。

 しかし、サラリーマンたちが、物価が5%上がったのに給料が3%しか上がっていないということに気がつき、そして、インフレのために生活がむしろ苦しくなったことを実感すれば、態度を一転させ政治家をボロクソに批判するでしょう。

 それにしても、何故こうも長い間、サラリーマンの給料が上がらなくなってしまったのでしょう?

 デフレで物価が上がらない状態が続いているから?

 もちろん、それも原因の一つですが、本当の原因とは言えないのです。何故ならば、デフレで物価が上がらない状況においては、何も賃金が上がらないだけでなく、多くのモノやサービスの価格も上がらないからです。

 では、本当の原因は何なのか?

 私は、三つの原因があると思うのです。

 一つは、公務員の給与が必要以上に下がっているからなのです。

 では、何故公務員の給与が下がるのか? それは、民間が不景気で苦境にあるのに、何故公務員だけそれほど優遇される必要があるかという批判があるからです。プラス、国の借金が増える一方で増税が必要だというのに、何故?という批判が渦巻いているからなのです。

 そのように思う国民感情は分からないではありません。

 しかし、公務員の給与を必要以上に下げれば、それが民間の給与を下げさせる圧力になるのです。当然でしょ?

 例えば、どうにかして優秀な学生を採用したいと考えている中小企業があったとして、競合する役所や一流企業の初任給が下がるようなことになれば、当該中小企業は、優秀な学生を確保するために給料を上げる必要がなくなってしまうのです。

 そもそもどんな企業であれ、本音としては給与水準はできるだけ低く抑えたい、と。

 では、どんな時に賃上げを認めるのか?

 それは、自社だけが、或いは自分たちの業界だけが賃上げを認めないと、優秀な人材を確保できないと感じる時です。

 これだけ公務員バッシングが起こり、そして、これだけ公務員の給与がカットされれば、当然、公務員の志望者は少なくなる、と。そして、公務員の志望者が少なくなるということは、民間企業の志望者が増えるということであり‥そうなれば、民間の企業は、初任給を引き上げなくても優秀な学生を確保できる、と。そして、そうやって一流企業の給与が上がらない状態が続くと、今度は中小企業の給与も上がらず‥そんなことが下のランクまで続くのです。

 ワーキング・プアの方々が、公務員は優遇され過ぎで怪しからんと怒りたいのは分かりますが‥結局、そうやって公務員の給与が必要以上に下がるから自分たちの賃金も下がるのです。

 二つ目の理由は、海外の安い労働力の存在です。

 企業の目的は単純に言えば、利益の追求。だとすれば、少しでも経費を抑えることが必要であり、
その経費には、当然、人件費も含まれるのです。

 例えば、パンや麺を作るメーカーにしてみたら、少しでも安い小麦を仕入れることが必要ですが、同じように労働力にも価格差があるのであれば、少しでも安い労働力を利用したいと考えるのが人情。つまり、仮に企業が海外の安い労働力を何らかの形で利用できるのであれば、利用しない手はない、と。

 昔なら海外の安い労働力を利用するためには、海外に工場を移転することを考えたと思うのですが、何も海外に工場を移転しなくても、製品を作る工程の一部を海外に任せることによって海外の労働力を利用することができるのです。

 つまり、そうして海外の労働力の価格が国内の労働力の価格に近付くまでは、国内の賃金に大きな
下押し圧力がかかるのです。

 三つ目の理由は、労働者の生産性が上がっていないという現実です。

 どんなに不況であっても儲ける企業はあるのです。不景気で居酒屋の客単価が下がったとは言え、売り上げが伸びているラーメン屋は存在する、と。

 つまり、お客のニーズにあった商品やサービスを提供できる企業、或いは人材に対しては、それ相応の対価が支払われるのは経済の基本。

 だから、会社の経営者と労働者が皆で知恵を出し合い、そして、努力を惜しまず世間が求めている商品やサービスを提供することに成功すれば、そうした企業の売り上げは伸びるのです。そして、そうやって儲かれば、労働者の賃金も会社に対する貢献度に応じて上がるのです。

 私が、普段言っているのは、2番目と3番目の理由についてです。1番目については余り口にすることはありません。

 何故か?

 だって、そんなことを書くと、非難の雨嵐が起こるからです。

 私は、公務員の給料を下げるのがいけないと言っているのではないのです。社会的な公平性を保つためにそれが必要であるという国民的判断が下されたら、そうすべきでしょう。しかし、必要以上に下げるのは如何なものか?

 私は、そうやって公務員の給与を大幅にカットすれば、それが民間の給与水準にも確実に影響を及ぶすと言いたいだけなのです。つまり、公務員の給与カットを主張するものは、その影響も考慮した上で言うべきなのです。

 しかし、世の中のムードは、官僚は悪である、と。だから、公務員や政治家の給料を下げるべきだ、と。そうしたことに加え、東電の原発事故などが起き、電力会社に務めるサラリーマンの給料が下がるから下請けの給料にも影響が及ぶのです。

 まあ、政治家としては、公務員や電力会社に務めるサラリーマンの給料を下げさせると言わないと、票が集まらないと思っているのでしょう。

 しかし、その一方で、名目GDPを引き上げ、そして皆さんの給料も上がりますよ、みたいなことを言うのは大いに矛盾していると思うのです。

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