「2〜3月はまだまだ雪や寒さに注意が必要です。死亡事故につながる暴風雪や大雪。本気で備えをしっかりしてください」と強調するのは映画「天気の子」の気象監修を務めた気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎さん。
天気のエキスパートである荒木さんに「なぜ大雪が降るのか」や「日本海側と太平洋側の予想の違い」、「雪への正しい備え方」を聞きました。
【聞き手:清水駿貴】

なんで大雪が降るの? 予想がしやすい日本海側
2〜3月の間はまだ、雪や寒さに注意が必要です。
年末から年越しにかけては、寒波によって日本海側を中心に大雪になりましたね。

テレビの天気予報でもよく言われる「西高東低の気圧配置」。
これは日本の東側に低気圧(※)があって、ロシアのシベリア地方にシベリア高気圧と呼ばれる高気圧がある気圧配置のことです。
※低気圧…高さ(気圧=大気の圧力)の同じ面で、周囲よりも気圧が低いところ
この「西高東低の気圧配置」が生じると、強い寒気を伴って北寄りの風が日本付近で吹くことがあります。
日本海の海面水温は、冬でも大体5〜15度ぐらいで、それなりに温かい。そこに、大陸ですごく冷えたマイナス10度やマイナス20度ぐらいの冷えた空気が入ってくるんです。
寒気にとってみると、日本海は熱湯風呂状態のようなもの。そうすると、日本海の海面から大量の熱や水蒸気が供給されて、「積乱雲」がたくさん発達するんです。

これが日本海側に大雪をもたらす要因になるんですが、おおむね気圧配置で決まるので、ある程度は予想できます。
なので、日本海側の大雪に関しては、気象情報をうまく使って備えるということが非常に重要になってきます。
気象衛星で捉えた低気圧の雲.
— 荒木健太郎 (@arakencloud) February 16, 2021
急速に発達している低気圧の雲の時間変化を動画にしたものです.西日本あたりで徐々に雲がまとまり,大きく渦巻いて北上しているのがわかります.特に北海道では暴風雪や暴風,高波に厳重に警戒をお願いします. pic.twitter.com/dUMvfFKiGy
注意!太平洋側の雪はすごく予想が難しい
日本海側は気象情報をうまく使えばある程度は予想して動くことができるのですが、一方で太平洋側の雪に関しては予想がすごく難しいんです。
「南岸低気圧」と呼ばれている本州南岸を通る低気圧によって関東を含めた太平洋側の雪はもたらされるのですが、この南岸低気圧による雪の予想は困難で、現状でも、前日に「雪」と言いながら実際には降らないとか、雨と言いながら雪になってしまうというようなことが普通に起こり得ます。
2017年の3月下旬には、内陸で南岸低気圧による大雪になり、栃木県の那須岳で高校生を含めた8名が亡くなるという雪崩(なだれ)の事故がありました。
2〜3月に死亡事故も 大雪の日に確認するべきことは?

2〜3月の「大雪」は、決して油断してはいけません。
関東地方などの雪の少ない地域で大雪になった事例もあります。少し前ですが、2014年の2月には関東甲信ですごい大雪があり、2週連続で東京で27センチの積雪となったケースがありました。
特に、同年2月の14〜15日にかけては、内陸ですごく雪が降って、山梨県などでも1メートルを超えるような雪が。そのときは集落が孤立し、停電が起こるなどたくさんの被害が起こりました。
まずは雪かき用のスコップなど簡単なものからでいいので、「大雪の被害は自分にも起こりうる」ということを頭に置いて、家の備蓄などを確認しておくことが重要です。

そして、大雪や暴風雪の際は、絶対に無理はせず最新の気象情報の確認と安全の確保を行ってください。
車の中にも防災グッズの常備を
車の運転にも注意してください。夏タイヤで雪道を運転するのはものすごく危険です。
大雪のときは気象情報だけではなく、道路情報に関しても、しっかり確認するというのがすごく重要です。
自分が事故を起こすだけではなく、事故で他の人を巻き込んで、自分が加害者になってしまうこともあります。雪が降った際の運転は絶対に無理をしないでください。
大雪になっているときは、運転を極力控えるほうがいいのですが、そういうわけにもいかないこともあると思います。そういう場合には、立ち往生しても大丈夫なように、車の中の備えをしっかり確認しておいてください。
立ち往生してしまうと、車の中では一酸化炭素中毒になる危険性があります。原則としては、エンジンを停止しておきましょう。

でも、それではすごく寒い。そのために、防寒着や毛布などを冬の間は車内に置いておくといいです。また、雪かき用のスコップや長靴などを用意しておくと排気口部分の除雪ができ、立ち往生してる最中に排気ガスが入って来るのを防ぐのに役に立ちます。