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年金がいつから・いくらもらえるのか、ハッキリさせた政党は政権を取れる。

自分は普段、新婚カップルやファミリー世帯に向けて、お金に関する総合的なレッスンを提供している。家計管理から始まって、住宅・保険・投資と一通り必要な知識を学んでもらう。家庭により興味のある箇所や問題のある箇所などは様々だが、最終的に行き着くのはどんな人でも「で、年金って本当にもらえるんですか?」という話だ。

寿命で亡くなる人は半分以下。

日本人の平均的な寿命は、厚生労働省の2011年のデータでは男性が79.44歳、女性が85.90歳となっている。ただし、この平均寿命の時点で存命している人の割合は男女とも6割以上で、平均寿命くらいで多くの人が亡くなるというイメージとは大きなズレがある。存命する人の割合が1割を切るまで下がるのは、同じく厚生労働省の簡易生命表によれば男性が94歳、女性が99歳となっており、これも平均寿命からは想像出来ないほど結構な割合の人が長生きする事が分かる。60歳定年と考えれば、人によっては30年以上無職の状態で生きていく事になるわけで、年金が無ければ到底まともな生活は出来ない。

自分も連載をしている雑誌・日経マネーの2013年1月号では、老後年金1億円と題して必要な老後資金とその貯め方に関する記事が特集されている。1億円の根拠や実際の貯め方に関しては本誌を読んでいただければと思うが、1億円を丸々貯金で貯めようという話ではない。公的年金・退職金+企業年金・老後の就労に貯蓄も含めて、老後資金の調達方法を4つの手段に分類している。

シミュレーションで示されているケースでは1億円のうち半分近くが年金でまかなわれる事になっており、年金が老後の生活を支える要である事は間違いない。しかし、その要である年金がガタついている。言うまでも無く年金財政がボロボロで収入と支出のバランスが取れていないからだ。学習院大学の鈴木亘教授の試算では2030年には厚生年金の積み立て金は枯渇するという。これを立て直すには鈴木教授が主張するように積み立て型への以降など大幅な制度改革が必要だが、何よりもまず支出の削減が必要だ。

年金で毎年50兆円が消えている。

先日、社会保障の支出が100兆円を超えたと報道されて話題になった。内訳を見ると半分が年金、3割が医療費となっている。これに対して今年は生活保護費が3兆円を超えたとし大騒ぎになったが、比較をして見ればケタが違う。年金をどうするか、医療費をどうするか、これを放置して歳出削減の話をしても意味が無い。100兆円の支出があるという事はそれをまかなう収入があるわけだが、収入の割合を見ると大雑把に半分が年金・健康保険の保険料による収入、35%が公費負担となっている。今のまま支出額が維持されれば税金と保険料のいずれのルートでも現役世代の負担が極端に重たくなる事は確実だろう。

消費税であれば高齢者にも負担してもらえる、という事も間違いではないのだろうが、高齢者から集めたお金を高齢者にまた支給するような形にするのであれば、結局はお金が同じ所で回っているだけだ。それならば初めから支給額を減らした方が途中で発生する余計な手間が減るだろう。

将来の厚生年金のシミュレーションは賃金上昇率が2.5%、運用利回りは2020年以降は4.1%と、ほとんど冗談のようなデータで計算されているので、誰も信用していない。このようなデータで計算せざるを得ないのは、賃金上昇率を0%、運用利回りは1~2%程度と現実的な数字で試算をすると、保険料を上げる、給付額を下げる、給付開始年齢を上げる……と、今とは大幅に異なる形にしないと制度維持が出来ない事が白日の下にさらされてしまう。つまり非現実的な数値で計算している理由は年金を破綻させないにはどのような数字にすればいいか、という前提で逆算しているからだろう。

しかしこれはテストの点数を書き換えるようなごまかしであって、何の解決にもなっていない。しかも年金が危ないと言う事はすでに周知の事実であり、現在正しい情報を隠すメリットは何一つ無い。将来貰えるかどうか分からない事がリスクとなり、必要以上の貯蓄や支出削減となって景気を悪化させている可能性も高い。リスクがあれば消費行動が保守的になるのは当然の事だ。

高所得者の支出にブレーキをかける年金の不安。

自分のお店に相談に来るお客様の中には、貯金は山ほどあって収入も安定している、それでも老後が不安という、という人は少なくない。3000万円の貯金があっても、年金が1円も貰えないと考えれば年間の生活費を300万円と見積もると定年後10年で貯金は尽きてしまう。このように考えれば心配になるのも無理が無い。そして本来消費を牽引するべき高所得者が節約してしまえば景気への悪影響は計り知れない。

ではどうすれば良いのか。答えは簡単で、正しい前提で計算した結果をを洗いざらい公表すればいいだけだ。先ほど説明したように、将来のシミュレーションを現実的な数値で行い、なおかつ現在の年金支給額も削る。それでも足りない場合は消費税等も上げる。結果として、例えば今の若い人は65歳から満額を貰うのは無理でも68歳から半額支給なら実現の可能性は高そうだ、という事が明らかになったらどうか。これは20代・30代の感覚からすれば「そんなに沢山貰えるの?」という印象だろう。年金なんて1円も貰えないと思っているのだから半分も貰えれば大儲けという事になる。

年金を減らす事は高齢者イジメなのか?

年金を減らすなんてトンでもない、と拒否反応を示す人も居るだろうが、今の高齢者と将来の高齢者(今の若者)は平等に扱うべきで、今の水準が将来維持できないのであれば年金の支給額は減らす事が「平等」なはずだ。目的はあくまで高齢者を今も将来も平等に扱う事であって、イジメでも嫌がらせでもない。

年金は今の制度のままでは維持できない事はほとんど自明の話で、いまさら隠すような事ではない。無理に維持をしようとすれば保険料も税金も上がり、過剰な再分配が行われるだけだ。しかも再分配が収入が多い人から少ない人へ行われるのならまだしも、鈴木亘教授が指摘するように世代間で行われて収入も資産も少ない若者世代から資産を多額に抱える高齢世代に再配分されて格差が拡大するというのであれば、一体何のための再分配なのかという事になる。制度改革と厳しい現実を踏まえたシミュレーションの結果、半分も貰える案を示せば、その政党はワカモノの支持を確実に得られるだろう。

年金・財政関連の記事は以下のものを参考にされたい。
●2012年、バブル真っ只中の日本
●お金は保険会社に預けるな その1
●お金は保険会社に預けるな その2

年金の歳出削減は政治的に出来ないと言われる。数が多い高齢者を政治家が敵に回すことは出来ないから、というのがその理由だという。いわゆる高齢者の影響が政策に強く反映されるシルバーデモクラシーの影響だ。これは政治家も有権者も、ワカモノも高齢者も勘違いしている事なのだが、次回改めて説明したい。

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