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焦点:経験と努力の実行家、WTO新トップのオコンジョイウェアラ氏


[ジュネーブ/ワシントン 15日 ロイター] - 米国のトランプ前政権から選出反対を表明されて3カ月後の今月15日、ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相(66)は全会一致で世界貿易機関(WTO)の次期事務局長に承認された。女性で初めて、アフリカ出身者としても初めてだ。3月1日に就任する。

彼女は自分を「実行家」と呼ぶ。手に負えないように見える幾多の問題を引き受けてきた経歴もある。しかし、米国のWTO脱退までちらつかせたトランプ前大統領が退場したとはいえ、今後のオコンジョイウェアラ氏には難しい仕事が待ち構えている。

事務局長の立場で行使できる正式な権限は限られる。それでも長期化する米中貿易紛争の中で国際貿易交渉を仲介し、貿易ルールの改革を求める圧力に対応し、新型コロナ禍で浮き彫りになった保護主義に立ち向かっていかなければならない。

オコンジョイウェアラ氏は15日、「(WTOに)必要なのは改革を推進できる人で、通商に精通し、型にはまった仕事をしたくない人だ。それは私だ」と語った。これまでのロイターのインタビューでは、優先課題はWTOがコロナ禍の問題解決に力をもっと発揮するようにすることだと表明。富裕国と貧困国とのワクチン接種率の差は受け入れがたいと述べ、加盟国に対し医療品の輸出規制を解除するよう要請した。

オコンジョイウェアラ氏は、こうした優先課題は米国と共通するものだと確信していると強調。「われわれの関心と優先事項は同一線上にある。皆、WTOが本来の目的に立ち返ることを望んでいる」とした。

米国のWTO代表は、米政府はオコンジョイウェアラ氏との緊密な協力を約束しており、「建設的なパートナー」になるはずだと述べた。

中国の代表は同氏を「全面的に支える」と約束。欧州連合(EU)欧州委員会のドムブロフスキス委員(通商担当)は「WTOに強く求められる改革」を進めるため、新事務局長と密に協力していくと表明した。

世界銀行での25年間の勤務経験のあるオコンジョイウェアラ氏は、WTOの事務局長に名乗りを上げるに当たり、人々を貧困から脱却させ得る通商の力への信念を強く打ち出した。10代のころにナイジェリアの内戦を経験。米ハーバード大学で開発経済を研究した後、2003年には母国に戻り、同国財務相も務めた。05年にはパリクラブ(主要債権国会議)との交渉で、数十億ドルの債務免除の合意を成功させる立役者になった。関係者はこうした同氏の実務家としての交渉手腕に太鼓判を押す。

WTOのラミー元事務局長は最近、ロイターのインタビューで彼女の名声や経験やネットワーク、物事を成し遂げようとする志を挙げ、「とても歓迎すべきことだ。彼女は良い選択だ」と語った。米国とEUと中国の間に立ってWTOを運営することができるかが新事務局長としての成功の鍵になるとも指摘した。

<柔軟だが意思強く>

WTOに限らず、国際的な主要機関で女性がトップになる例はまだ少ない。オコンジョイウェアラ氏が本部ジュネーブに乗り込めば、彼女の写真は、男性でおおむね白人の富裕国出身者ばかりの歴代事務局長の隣に掛けられることになる。

トランプ前政権は、対抗馬だった韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)産業通商資源省通商交渉本部長に比べて直接の通商経験に欠けるというのを主な不支持理由としていた。オコンジョイウェアラ氏の支持者らでさえ、貿易交渉の実務については猛勉強して追いつかないといけないと指摘していた。

しかし、彼女はこれを否定。通商の経験は豊富にあるし、それだけでなく他の専門知識もあると主張した。当時のトランプ政権の不支持についてコメントを求められた際は「そんなことが起きても柳に風と受け流して、前に進めばいいのよ」と答えた。

彼女自身は4人の子どもがいる。人となりを知る関係者は、勉強家で、ナイジェリア支配階級の出身だが、謙虚さを兼ね備えていると話す。ナイジェリア財務相時代に一緒に働いた同国中央銀行の元副総裁は「彼女は意思貫徹するし、しぶとい」と評した。

ナイジェリアのブハリ大統領は今回の選出を歓迎し、「この国に、より多くの喜びと光栄をもたらした」と述べた。

首都アブジャの街頭でも喜びの声が聞かれた。マーケティングの仕事をしているというイベ・ジョイさんは、選出が若い女性を鼓舞すると指摘し、「彼女にできるなら私たち全員にも可能だ」と話した。

<不可能を可能に>

オコンジョイウェアラ氏が就く事務局長ポストは、半年間空席のままだった。WTOは半ば機能停止状態にある。紛争処理の常設上訴機関である上級委員会がトランプ政権の反対で任期切れ委員の補充ができなくなったためだ。

しかしトランプ政権の前でさえ、全会一致方式を取るWTOの議事決着は難航していた。米国やほかの先進国の加盟国は、発展途上国、特に中国が例外措置適用に固執することを批判し、中国の経済成長を反映する形にルールを改定することが必要だと主張してきた。

オコンジョイウェアラ氏は世界保健機関(WHO)の新型コロナ特使でもあり、最近まで発展途上国へのワクチン普及を目指す国際組織「Gaviワクチンアライアンス」の理事長でもあった。同氏は15日、感染症大流行に対応する枠組みを構築し、将来に別の大流行が発生したときに対応方法を巡って時間を無駄にしないで済むようにしたいと表明した。

WHOのテドロス事務局長は、オコンジョイウェアラ氏が「WTOの完璧な事務局長になる」と述べている。

WTOが現在直面する難題は、19のコロナ医薬品の知財権免除の問題だ。免除措置には多くの富裕国が反対している。

WTOが20年末の交渉決着期限を守れなかった漁業補助金問題も火急の課題になる。オコンジョイウェアラ氏は15日、記者団に対し、この問題は「合意が可能だ」との考えを示した。

今後の難題について問われると、同氏は自分が書いたナイジェリアの制度再建についての本が今のWTOによく当てはまるかもしれないとジョークを飛ばした。本の題名は「改革できないことを改革する」だ。

これまでのロイターのインタビューでは「私は自分が問題を解決できると感じている。私は改革について話すだけの人間としてではなく、改革の実行者として知られているのよ。私は実際にやってのけたのだから」と語った。

(Emma Farge記者、Andrea Shalal記者)

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