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焦点:米経済対策、サマーズ氏の警告きっかけに細部見直し論


[ワシントン 12日 ロイター] - バイデン米大統領が打ち出した総額1兆9000億ドルの緊急経済対策案を巡り、新型コロナウイルスワクチンの接種で経済が上向こうとしている「前夜」のタイミングでこうした大規模な財政支出に踏み切れば、インフレにつながるとの懸念が生まれたことに何ら驚きはない。

想定外だったのは、不安を唱えたのが財政タカ派の共和党議員ではなく、根っからの民主党員でハーバード大学教授のローレンス・サマーズ元財務長官だった点だ。サマーズ氏は最近のワシントン・ポストへの寄稿で、バイデン氏の提案は「われわれがこの30年で目にしなかったようなインフレ圧力を形成しかねない。現在検討されている景気刺激策の規模は未知の領域へのステップだ」と警告した。

ただ、これまで経済学者の間では、新型コロナ禍は健全だった経済活動をあっという間に止めてしまうという未曽有のショックである以上、その対策が「過大」になることはほぼあり得ないというのが共通認識だったように見受けられる。恐らくサマーズ氏が有力な学者として初めて、そうした「総意」に切り込んだ形だ。

議会でもバイデン氏の提案の詳細を詰める作業が進む中で、最大公約数的でとにかく支出を急ぐという1年近く前の姿勢から、支出を絞った方が効果は高まるのではないかといった意見が出てくる形に状況は変わってきている。

もっとも経済学者間の論争は、従来の例えば「どのデータセットが家計消費の推計に最適か」「需給ギャップの大きさは一体どのぐらいか」といった経済分析上の信頼度を問うものから、足元では、単なる「内輪もめ」の様相を呈する方向にそれている面が見られる。そこには皮肉たっぷりのツイートがお目見えし、ついに12日にはプリンストン大学主催のネット配信討論会でサマーズ氏と、ノーベル経済学賞受賞学者でニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ポール・クルーグマン氏の「対決」が演出された。

サマーズ氏は、既に米経済が活性化する潜在力を秘めているのに、1兆9000億ドルもの追加策を講じることに改めて疑問を表明。「(現在は)相当な苦境であるのは間違いないが、追加策は必要とする規模を超えてしまう」と訴えた。

一方、クルーグマン氏は、サマーズ氏の懸念を大げさだと一蹴した上で、新型コロナで打撃を受けた経済の救済を戦争遂行になぞらえたパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の最近の発言を引用し、「真珠湾が攻撃されている時に、需給ギャップの大きさを問題にしてはならない」と強調した。

複数のバイデン政権高官もサマーズ氏の見解を「全面的な間違い」と見なしている。イエレン財務長官は、何百万人もの失業者が、政策で「大きく動く」ことの必要性を証明していると指摘した。かつてイエレン氏とサマーズ氏はともにFRB議長候補となり、2013年当時のオバマ大統領がイエレン氏を選んだという因縁もある。

より迅速かつ寛大なパンデミック対応支出を提唱している元FRBシニアエコノミストのクラウディア・サーム氏はツイッターで、そうした方針を否定する人々を「インフレの恐怖を利用する危険(な存在)」と呼び、彼らが景気回復を短命に終わらせかねないと反撃した。

<改善求める声も>

バイデン氏の提案におおむね共感を示しながらも、疑問点を挙げる向はサマーズ氏以外にもいる。

例えば貧困層が中間層に移行する動きを遅らせる要因に関する研究で知られるハーバード大学のラジ・チェティ氏らのグループは、1400ドルの現金給付を受け取る資格の所得条件を7万5000ドルから引き下げる方が有効かもしれないと勧告した。それ以上の所得層に給付しても、足元の経済を後押しするほど急速な消費には回らないからだという。

オバマ政権時代に大統領経済諮問委員長を務めたジェーソン・ファーマン氏は、失業保険給付についてバイデン氏が掲げる週400ドルの上乗せ額を段階的に縮小すべきだとしている。ワクチンの普及で働くことがより安全になるのなら、失業保険給付を縮小した方が職探しする動機が高まるからだという。

ファーマン氏は「人々が仕事を得るまで時間がかかり過ぎ、将来に楽観的になり過ぎて最終的に長期失業者に転落してしまうリスクがある。このリスクは昨年時点では、人々を支える危急の必要性に比べれば些細だったが、今後はより現実的になる」と記している。

クルーグマン氏は12日のサマーズ氏との討論会で、現金給付は失業保険など他の施策より経済的な正当性は弱いと認めつつ、「人気は最も高い。その点は政策形成の一部になる」と指摘した。バイデン氏の提案がハリス副大統領の賛成票で上院を通過するとの見通しを示すとともに、「数カ月以内に誰が正しかったかが分かる」とも言い切った。

(Howard Schneider記者)

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