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コロナ禍で新たなニーズつかみ利用増 キャッシュレスで社会はどう変わる?

BLOGOS編集部

近年注目が高まっている「キャッシュレス決済」。日本でいまだ大多数を占める現金決済ではなく、QRコード利用をはじめとしたモバイル決済や電子マネー、クレジットカードでの決済を指す言葉だ。

2018年には、政府も成長戦略の一環として、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度まで伸ばし、将来的には80%を目指すとした指針を出すなど、大きく動き始めた格好だ。

しかし、キャッシュレス決済の浸透によって、私たちの暮らしがどう変わっていくのかについては、一般ユーザーにはまだまだ伝わっていないところも多い。そこで今回、株式会社クヌギの取締役で「クレジットカードを知る」の編集長を務める石川真太郎氏と、LINE Pay株式会社代表取締役社長CEOの長福久弘氏が対談。まだ見ぬ未来についてじっくりと話し合ってもらった。

日常で使われるLINE Pay 浸透し始めたキャッシュレス決済のいま

石川真太郎氏(以下、石川):私はいま、「クレジットカードを知る」というメディアの編集長をしていて、その中でキャッシュレス決済全般も扱っています。今回お聞きしたいのは、今後、QRコード決済やモバイル決済はどう浸透していくかということ。LINE Payはいまユーザー数が約4000万ですよね。競争相手もいるなかで、この先どう広げていく想定なのでしょうか。

長福久弘氏(以下、長福):最初にご説明させていただきたいのは、LINE Payは生まれが他のモバイル決済サービスとは少し違うことです。決済サービスとしてゼロから始めたところは、お得感を打ち出して沢山の人に使ってもらうというアプローチが多いですよね。しかし、LINEはあくまでコミュニケーションアプリですから、LINE Payもコミュニケーションの先にお金があるという考え方をしています。

石川:たしかに、サービスの打ち出し方も飲み会の割り勘や、ユーザー間の送金など、すでにLINEを利用しているユーザーに向けたものになっていますね。ということは、目指す数字が新規ユーザー数から別の方向へ変わって来ているのでしょうか。

長福:過去には新規ユーザー数を強く意識していた時代もありました。そのときはやはり、QR決済をメインに加盟店を増やしてユーザーへの還元もして・・・という、他社と同じ方法をとっていました。今はクレジットカードもありますし、Apple Payにも対応するなどサービスの土台が完成してきているので、ユーザーには色々な手段の中からご自身に合ったものやお店の状況に合わせて選択していただき、LINE Payを日常的に使ってもらおうという方針です。

石川:新規ユーザーよりも、アクティブユーザーを増やしていく考え方ですね。

長福:はい。そのためにLINEアプリの強みであるコミュニケーションの部分を活かしていこうと考えています。QR決済は飲食店やコンビニでの買い物など日常的なシーンでの利用が多いので、LINEともシナジーを発揮しやすいと思っています。

石川:その部分はクレジットカードとは違いますよね。クレジットカードはやはり高額なものを買うときに使う人が多い。一方でQR決済は日常的な少額決済が多いというのは様々な調査でも出ています。

株式会社クヌギ取締役の石川真太郎氏 BLOGOS編集部

お店も非接触にしたい コロナ禍で生まれた新たなニーズ

石川:コロナ禍によって新たなニーズ、つまり非接触での決済が求められるようになりましたよね。現金は多くの人の手に触れるものですから、なるべく避けたいと考える人も増えたのかなと。

長福:それはありますね。実際、コロナ禍での利用は増えています。現金を避けたいのはお客さん側だけでなく、お店側のニーズとしても顕在化してきているんです。海外でキャッシュレス決済が広がった理由は色々ありますが、たとえば中国なら偽札を掴むリスクを避けるため、というものもありました。そうした大きなニーズがあると、どんどん広がっていくのだろうと思います。

石川:年末年始はコロナの影響で帰省を避けた人も多いですし、お年玉を送金、といった使い方も想定できますよね。加えて言うと、今後はキャッシュレス決済も実店舗からネットに利用場所が変わっていくんだと思います。

長福:まさに我々もオンライン化が進んでいくと考えているからこそ、クレジットカードやプリペイドといった利用手段を増やしているんです。時代に合わせて、ユーザーが使いたいと思う決済手段を提供することが、常にサービスの根幹にありますね。

LINE Pay株式会社 代表取締役社長CEOの長福久弘氏  BLOGOS編集部

手数料がおトク キャッシュレス決済のメリットは?

石川:ユーザー側からみると、キャッシュレス決済には色々な利点がありますよね。利用明細が全部出るので、お金を何にいくら使ったか詳細にわかりますし、確定申告を自分でやるという方は、会計サービスにクレジットカードを紐付けることで取り込みが簡単になります。

長福:セミナーなどで現金派の人に「昨日いくらお金を使いましたか?」と聞くと答えられる人はいるんですが、「34日前、いくらお金を使いましたか?」と質問すると答えられない。でもキャッシュレス決済なら記録を見返せばすぐにわかる。これは圧倒的な利点です。

あとは、今はコロナ禍で機会がなくなっていますが、飲み会のとき、深夜にコンビニのATMでお金を数千円引き出すこともありますよね。そのときに手数料が曜日によって220円程度かかる。これは節約の観点からするとすごくもったいない。キャッシュレス決済であれば、ほとんどかからないお金です。

石川:使えば使うほど得をするのがキャッシュレス決済の現状ですよね。仕組みがわからないまま使っている人も、ポイント還元などで知らない間に得をしている。クレジットカードもそうですよね。使っていれば勝手にポイントがつく。不正利用に対する補償がつくカードもあります。

長福:我々もポイントに力は入れていて、Visa LINE Payクレジットカードは2021年4月30日までは最大3%のポイントがつく、とてもお得なカードなのですが、ポイントのような特典はあくまできっかけ作りのひとつだと思っています。いろんなきっかけを通してお金に対するリテラシーを上げていけば、必然的に現金よりもキャッシュレス決済の方がいいよね、となるのが理想だと思います。

BLOGOS編集部

「便利だからいい」だけではダメ 問われる事業者の倫理

石川:日本人の金融リテラシーはまだまだ低いですよね。それは政府も認めていて、今年から小学校の家庭科のカリキュラムの中に売買契約の基礎に関する項目が増えるといった動きもあります。

長福:これまで日本ではお金の勉強をしてこなかったですよね。文化的にも、お金はタブーに近い扱いで、株式投資がギャンブルだと言われたこともありました。そうやって話さないままきた結果、”一部の詳しい人のためのもの”という認識が強かったので、なかなか業界でのイノベーションも起きにくかったのだと思います。

石川:イノベーションという観点だと、キャッシュレス決済周りの法律は複雑だったり、保守的だったりというのはありますよね。一方で金融サービスはユーザーの資産を預かっているので、事業者側の倫理も問われる分野ではあります。

長福:そうですね。お金なので、やっぱり利便性と安全性のバランスを取らなければいけないと常に思っています。近年、キャッシュレスサービスを利用した事件が起き続けていることからもわかるとおり、「便利だからいい」だけではダメなんです。サービス事業者、企業という観点だけでなく、業界全体で誠実に考え続けていく必要があると思います。

キャッシュレス決済と一口に言っても、その手段は様々だ

人口減が進む日本 キャッシュレス化は「必然」

石川:キャッシュレス決済は地方や高齢者の利用率が伸びてこないのも課題ですよね。私も地方に行くとキャッシュレス決済はまだまだ不便だなと感じることがあるのですが、ここにチャンスはあると思いますか。

長福:実は、そうした環境でこそキャッシュレス決済は生きてくると思っているんです。

たとえば、少子高齢化によって人口が少なくなってしまった町があるとします。そういった場所の交通手段は将来的には自動運転の無人バスなどに置き換わっていくと考えられます。そこに現金を集めるのは防犯上の観点から、事業者もやりたくないわけです。とすれば、必然的にキャッシュレス化が進んでいく。

他にも、銀行も統廃合によってどんどん窓口を減らしていって、ATMも減らそうという流れが起きつつあります。つまり、街の中心地から遠く離れたところでは、これまでより現金が引き出しにくくなっていく可能性もあります。そんなとき、例えばですが、プリペイドサービスに登録し、遠方に住む息子から送金機能で仕送りしてもらうことでチャージができます。そのままスマホで買い物ができるし、ゆくゆく同意のうえ家族内で家計簿を共有できる機能ができたとすれば、離れていても家族は「安全に利用しているな」というのもわかるようになる。こうした一種の安否確認的な使い方も考えられますよね。

こんなふうに、環境だったりサービスだったりが起点になって、これまで以上にキャッシュレス決済が普及していくことはあり得ると思っています。

石川:それはいいですね。安否確認として使う発想はなかったです。私も高齢者にアプローチするとしたら何をするかなと考えていたんですけど、なかなかいいアイデアが浮かばなかったんです。

長福:実際は、支払いの形式自体に大きな意味はないと思っているんです。ここ2年間くらいキャッシュレス決済に大きな注目が集まっていましたが、現金で払うか、クレジットなのか、QRなのかという違いにすぎない。そうではなくて、先ほど話したような支払いの前後の文脈において利便性をどう提供できるかが、普及のキーポイントなんじゃないかなと思っています。

BLOGOS編集部

社会に貢献するキャッシュレスサービスを目指して

石川:事業者側に対しても、国家レベルでもっといろんなアプローチがあっていいと思いますよね。取引履歴がデジタル化していけば、課税も正確にできるようになるので、韓国のようなキャッシュレス先進国を見習い減税もやっていいはずだと思っています。

長福:国レベルの大きな話で言えば、日本は人口減少がこのまま進んで労働力不足になると、経済が衰退していく見立てもあります。人口が多くて働く人も多い国は、規模で生産性を上げることもできますが、日本はそれが難しくなってくる。キャッシュレスサービスもそうした流れを見据えたうえで、先ほどお話ししたようにサービスとニーズを結びつけながら、社会全体の効率化に貢献できるものであるべきだと思っています。

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プロフィール


石川真太郎(いしかわ・しんたろう):株式会社クヌギ取締役、編集者、ライター。クレジットカード情報総合サイト「クレジットカードを知る」編集長。ユーザー目線でクレジットカードや電子マネーなど金融分野の記事を中心に執筆も行っている。
クレジットカードを知る:https://www.woshiru.com/creditcard/


長福久弘(ちょうふく・ひさひろ):LINE Pay株式会社 代表取締役社長CEO。2009年、ライブドア(現LINE)に入社し、2013年にLINE Business Partnersへ出向。2014年から同社の代表取締役を務める。2017年にLINE Business PartnersとLINE Payが合併し、LINE Payの取締役COOに。2020年3月より現職。

[ PR企画 / 株式会社クヌギ ]

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