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“伝統芸”のはびこるニッポンに「透明性の大切さ」を問題提起してくれて「#森喜朗さんありがとう」 - プチ鹿島

 今回の森喜朗氏の「女性がいる理事会は時間がかかる」発言。これを報じたメディアやネットに対し発言の“切り取り”と主張する人もいる。果たしてそうなのか?

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「異様な国」という印象を与えた日本

 産経新聞は一面で次のように書いた。

《「森氏の発言の一部を切り取った批判」といった擁護論もあるが、発言全体を読めば印象はさらに悪い。》(2月13日)

 森喜朗が勤めていた産経新聞も叱っている(一面の特別記者コラム)。

 全文を読んだらさらに酷かったというお約束の森喜朗節が今回も炸裂。


森喜朗氏 ©️文藝春秋

 さらに産経コラムは森だけでなく事態収拾に腰が引けた菅政権、間違いを正すことに対する組織委やスポーツ界を含めた社会の腰の重さ、これら複数の要因で「異様な国」の印象を与えてしまったと書く。

 森喜朗を考えることは日本の政治や社会を考えることでもある。「異様な国」では困る。

未遂で終わった「密室での後継指名」

 その異様さは川淵三郎への後継指名でも可視化された。差別を批判されて退場する当人が指名。しかも相談役で残る?

 読売新聞は一面で「混乱を招いた森氏本人による『密室での後継指名』という印象がぬぐえない」と指摘(2月12日)。この計画は白紙となった。

 森と森周辺の閉鎖性を具体的に暴いたのはスポーツ報知。

『「組織委員会」は名ばかりだった「何をお前は言っているんだ」意見一蹴…森会長辞任の舞台裏』(2月12日)

 複数の組織委理事が、森会長による理事会が機能していなかった実情を明かしたのだ。理事会は意思決定機関のはずなのに会議の残り5分くらいで出席者に「何かありませんか?」と声がかけられることが多かったという。そんな短い時間では議論には至らなかったと理事は証言。

 発言したら森会長から一蹴されたこともあった。

《ある理事は「何をお前は言ってるんだ、と言わんばかりの威圧的な雰囲気でした。その後、理事会で異論を言う人はいなくなったように思う」と振り返った。》(同)

 この閉鎖性は、森喜朗の「(女性理事は)わきまえておられる」発言と川淵三郎への後継指名に見事にそのままリンクするではないか。

 なのに本人は「解釈の仕方。多少、意図的な報道もあったと思う」と辞任表明会見でまだ言っていた。毎日新聞は「なぜ批判されたのか、最後まで理解しているようには見えなかった」(2月13日)。

「周囲に推されたから大任を引き受ける」というニッポンの伝統芸

 さて、川淵のオフサイドにより、我々は最後まで密室でうごめく森喜朗を見られた。マスコミに喋って既成事実化を狙う川淵三郎の手法も見られた。どちらもうんざりするほど古い。

 川淵三郎はもう1つ問題提起をしてくれた。やる気満々なのに周囲に推されたから大任を引き受けるというニッポンの伝統芸である。昭和の政治家やらリーダーがやるお得意のムーブだ。これは調和と調整を守るという謙虚さアピールなのだろうが、一方で説明と責任を明確にしないままトップに就任できる狡猾さがある。

 思えば森喜朗はその最たるものだった。2000年に小渕恵三首相が倒れて入院すると公的な手続きではなく水面下で後継森氏を決めたことで「5人組による密室政治」と批判され、森政権誕生の正当性にも疑問符がつく形になった(日刊スポーツ2月13日)。

 今回の森→川淵指名は20年以上経っても森喜朗、もしくは森喜朗的なものが日本社会に根付いたままであることを見せつけたのである。

 この閉鎖性を打破するには、やりたい人が手を挙げ、自分の言葉でプレゼンし、公開で納得させるという普通の方法がいい。そんな当たり前のことを考えさせてくれた。森喜朗すごい。

希望の祭典が政治劇へと変貌

 森が辞意を固めたと報じると、ツイッターには「#森喜朗さんありがとう」として、これまでの功績をたたえながら感謝の言葉をつづった投稿が広がっていった(毎日2月13日)。

 それなら最後まで問題点を投げかけてくれた今回の功績も「#森喜朗さんありがとう」だと思う。

 白紙になった川淵案。この展開は皮肉な問題点を新たに提起した。政府の透明性である。

「事実上の待ったをかけたのは、菅首相だった」(読売2月13日)という。読売は情報戦についても書く。12日の金曜昼に一部の報道機関が「川淵氏は就任を辞退する意向」と速報を流すと、川淵氏は周囲に「俺は何も言っていない。それはガセネタだな」と語り不快感を示した。ところがその頃、既に事態は大きく動いていた(同)。

 こうして『川淵氏案 政府難色で一転』(朝日)となる。後任に橋本聖子五輪相の名が浮上したが問題点も一緒に浮上。

《橋本五輪相ありきで人選が進むとすれば、結局は透明性を欠き、同じことの繰り返しになる。希望の祭典が政治劇へと変質した。》(記者の目・スポーツ報知)

寝た子を起こした菅首相

 さらに菅義偉首相は透明性を訴えたことで寝た子を起こすことになるかもしれない。息子のことである。

『総務省幹部4人、首相長男らと延べ12回会食…タクシーチケットと贈答品受け取りも』(読売オンライン2月12日)

 長男のいる東北新社は総務省が許認可権を持つ衛星放送を手がけている。あれだけ既得権益打破を訴えていた菅首相だが、自身の威光が長男の仕事を利していたなら既得権益ズブズブ側だったことになる。

 改革を訴えるリーダーとして大丈夫なのか。国民側には疑心暗鬼が生じる。これを振り払うには明確な説明が必要になる。新たな課題があらわになった。

 それもこれも森喜朗先生が透明性の大切さを問題提起してくれたためだ。

「#森喜朗さんありがとう」

(プチ鹿島)

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