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3週間前に軍司令官と会談…ミャンマー政変で囁かれる「中国黒幕説」 - 野嶋 剛

 ミャンマーで想定外のクーデターが起きた。2月1日未明、アウンサンスーチー国家顧問など与党国民民主連盟(NLD)幹部らが一斉に拘束。かつて長期の軍政を敷いた国軍は「11月の総選挙に大規模な不正があった」と非常事態を宣言し、ミンアウンフライン最高司令官が三権を掌握した。

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スーチー氏 ©共同通信社

「選挙不正」は根拠も不確かで、口実に過ぎない。対立を深めていたスーチー氏率いるNLDが総選挙で圧勝し、焦った末に強硬手段に訴えたと見るべきだ。

 国内外から「民主主義の否定だ」と非難を浴びる一方で、世界のメディアや識者の間で「中国黒幕説」が流れた。疑念を生んだ理由は、1月11、12日に中国の王毅外相がミャンマーを訪問していたからだ。王氏は政変の主役、フライン氏と会談し、ミャンマーを「兄弟」と持ち上げたとされる。

 この訪問で両国は「中緬経済回廊構想の加速」に同意、中央部のマンダレーから西部のチャウピュー間の鉄道建設に向けた共同研究に着手することになった。チャウピューはベンガル湾に面した港湾で、ここから中国への原油パイプラインが敷設されている。次のステップとして鉄道で中国へのアクセスの良いマンダレーと結ぼうとし、最終的に中国・昆明へ延びる予定だ。

中国にどんなメリットがあるのか

 昨年には習近平国家主席が中緬国交70周年を記念し19年ぶりに中国指導者として訪問し、ミャンマー重視は強まっていた。ただ、スーチー政権は日本や欧米ともバランスを取りたい姿勢で、構想の進捗の遅さに中国は不満を持っていたとされる。中国外交部のクーデターへの声明も微温的で、国連安保理での非難声明にも消極的だと伝えられたことも黒幕説をさらに勢いづけた。中国が背後で国軍を操ったということはないだろうが、軍政の復活で各国が制裁を発動しミャンマー離れが進めば、奇貨とみて中国がさらなる浸透に乗り出す可能性は高い。

 インド洋に面し、インドやタイ、中国と国境を接する「アジアのクロスロード」に位置するミャンマーに深く食い込めれば、エネルギー供給ルートの脆弱性をカバーでき、「一帯一路」の重要成果にもなる。そして「自由で開かれたインド太平洋」構想などによる日米豪印の対中包囲網に大きな穴があく。中国にとってはまさに一石三鳥となる。

 国軍は来年以降に総選挙を実施するとしているが、香港のように権力を使った民主派の排除が今後進む可能性は高く、スーチー氏らへの司法訴追も始まっている。抗議デモも起きているなか、政変に世界はどう向き合うか、難しい選択を強いられている。

(野嶋 剛/週刊文春 2021年2月18日号)

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