記事

金融緩和のやりすぎは国民生活を苦しくする

日本経済は1999年より、物価が継続的に下落するデフレに陥っています。消費者物価の推移を見ると、2007年から08年にかけて一度だけ物価が上昇に転じたものの、ほぼ一貫して物価が下がり続けている状況です。日本の消費者物価は98年をピークに下落を続け、現在ではピーク時よりも4%も低い水準にあります。

デフレが続く過程では、経済は「物価の下落→所得の減少→消費の減少→物価の下落」という悪循環が起こると言われています。これが「デフレ・スパイラル」と呼ばれるもので、日本が長期停滞から脱せない原因は、このデフレ・スパイラルを断ち切ることができないからだと解説されていることが多いようです。

しかし、私はこのデフレ・スパイラルの説明が経済の本質上、順序立てで大きく間違っていると考えています。その理由として私は、日本をデフレに陥らせている最大の原因は、労働者の所得が下がり続けている点にあると見ているからです。

つまり、「物価の下落→所得の減少→消費の減少」という順番は誤りであり、「所得の減少→消費の減少→物価の下落」がデフレを説明する上での正しい順序なのです。これは、「鶏が先か、卵が先か」といった問題と同列にはできません。あくまで原因が先で、結果は後に来なければならないからです。

国税庁の「民間給与統計実態調査」によれば、2011年の日本の給与所得者の平均年収は409万円です。1997年の467万円をピークに翌98年から減少傾向が続き、現在では89年当時とほぼ同じ水準にまで下がってしまっています。この十数年の間に日本人の平均年収は実に1割以上も減ってしまっています。

給与所得者の平均年収が下落し始めたのは98年、消費者物価指数が下落を始めたのが99年ですから、この二つの統計の時系列は、原因と結果の関係を見事に示していると思われます。

日本がデフレとなった原因については、これまでに、(1)土地や株価の下落による資産デフレ、(2)銀行の融資削減による信用収縮、(3)資源高や円高などによる企業収益の悪化、(4)新興国の台頭による競争激化、(5)少子高齢化による需要の減少など、さまざまな原因が指摘されてきました。いずれの原因も一面では正しく、デフレを助長させる一因になっているのは間違いありません。

内閣府の試算によると、90年以降、土地と株式の値下がりで生じた損失は1500兆円、銀行の融資削減による信用収縮が480兆円、資源高や円高などによる企業収益の悪化が160兆円になると見られています。いずれの原因も景気回復の大きな足かせとなっているのは明らかです。

しかし、もっとも大切なのは、さまざまな原因の中から本質的な原因を見誤ってはならないということです。本質を見誤ってしまうと、処方箋を間違い、デフレは解消されたとしても、国民生活をいっそう苦しくする結果になってしまうからです。

その間違った処方箋の代表格というのが、無制限の金融緩和や2%のインフレターゲットの設定などの「過剰な金融緩和」です。これは、金融危機後の米国や韓国の例を見ても明らかです。政治家はもっと経済の本質や歴史を学ぶ必要があります。

デフレの本質を完全に見誤り、誤った処方箋を考えている政治家にこの国の経済運営を任せることは、国民にとってこの上ない不幸なことです。新しい政権が間違った経済政策を実施しないために、できるだけ多くの日本国民に新刊を読んでほしいと思っております。ご興味のある方は、以下のURLをご覧ください。
http://amzn.to/So0XxJ

あわせて読みたい

「日本経済」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ブラタモリに失望 忘れられた志

    メディアゴン

  2. 2

    新しい生活様式嫌がる日本医師会

    御田寺圭

  3. 3

    宮崎美子の才色兼備ビキニに脱帽

    片岡 英彦

  4. 4

    飲み会の2次会 死語になる可能性

    内藤忍

  5. 5

    官邸前ハンスト 警官と押し問答

    田中龍作

  6. 6

    菅首相が最優先した反対派の黙殺

    内田樹

  7. 7

    官邸がTV監視? スクープに称賛も

    BLOGOS しらべる部

  8. 8

    マイナンバーカードが2ヶ月待ち?

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    立民議員の官僚叩きに批判が殺到

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    任命拒否 学者6名に無礼な菅首相

    メディアゴン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。