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「間違った規制」と「規制違反」。どちらが問題?

西友が医薬品登録販売者の不正受験を行っていたこと、また横浜のドラッグストアでも大量不正受験が発覚し、さらに他にも不正受験者がいた問題を、山口利昭さんがブログで法律の専門家としてコンプライアンスの視点で取り上げていらっしゃいました。企業が法を順守することにはまったく反論する気持ちはありませんが、違う視点から眺めると、また別の問題が見えてきます。
ビジネス法務の部屋: 医薬品登録販売者の虚偽証明は西友だけなのだろうか?(その3) :

さて、こういった不正受験が絶えないために、厚生省が全国のドラッグストアや調剤薬局、スーパーなどに対して不正受験に関する調査を依頼し、自主申告をするように通知したようで、山口さんは「組織の自浄能力を発揮する最後のチャンスか」とされています。たとえ間違った法律でも企業はその法を遵守しなければならないとしても、その遵守すべき法律そのものがどうなのかという視点も必要だと感じます。

なぜなら2009年から導入された医薬品登録販売者という制度そのものが、規制緩和の名目で逆に規制を強化した厚生労働省のトリックだからです。このトリックに、マスコミも乗せられ、日本も、欧米のように、コンビニでも一般薬を買えるようになると大騒ぎしました。しかし結果はどうだったでしょうか。大山鳴動ネズミ一匹という類いとなりました。

少し調べれば、コンビニに医薬品登録販売者の資格を持った店員を常時配置することなど不可能です。店員さんはほとんどがアルバイトとか、パートタイマーです。だから、厚生労働省は業界の秩序を守るために、規制の網を張ったのです。それをマスコミが後押ししてしまいました。

だからインターネットによる医薬品販売に厳しい規制がかけられました。皮肉なことに、このインターネットの医薬品販売規制の省令は違法だと東京高裁が判決を行なっています。法律そのものが違法だと問われたのです。
医薬品のネット販売認める 東京高裁「禁止の省令は違法」 1審判決取り消す - MSN産経ニュース :

一般薬の許認可に関して知識のある人ならこのトリックはすぐに見破れたはずです。なぜ医薬品登録販売者の資格を取るのに大量の不正受験が起こってくるのでしょうか。もちろん販売員を確保しておきたいということもあるでしょうが、おそらく、当事者はそんな販売員の資格の必要性に疑問を持っていて、重視していないからでしょう。

もちろん、医薬品の安全性についてはどこの国でも許認可制度で厳しくチェックされています。当然のことです。たとえばもともと医療用で使われていた医薬品を一般薬(スイッチOTC)として販売する際などは、さらに厳しい規制がかけられ、店頭でも薬剤師によってしか売れないことになっています。それもかなり厳しすぎると感じるのですが、その他の医薬品の多くは、市場で売られてきた長年の実績があり、リスクもほとんどなく、問題のないものが数多くあります。

問題は、この販売規制を含め、日本の医薬品の規制は、海外と比べ極めて特殊であり硬直的だということです。医薬品に限らず、食品の添加物でも、海外では認可されていて、ある意味で標準的な成分でも、日本では規制されているために、輸入食品のなかで、認可されていない成分が使われていたことが発覚し、それが事件となって、いかにも危険な成分が混入されていたように報道されたこともあります。日本の規制が特殊なだけです。

点眼薬とか、ビタミン剤とか、鼻炎薬とか、鎮痛剤など、症状を緩和するために、近くのコンビニで夜間でも買い求めたいという消費者ニーズは高いのですが、それよりはなにか新しいことをやって問題を起こさせないこと、つまり前例主義と、業界秩序を守るほうが優先されているのです。

医薬品や医療機器の許認可に関しても、厳しい規制をかけておいて、それを審査する体制が手薄なために、許認可にも時間がかかっているという問題も起こっています。この問題は医薬品にしろ、医療機器に関しても許認可に時間がかかりすぎ、医療ビジネスの活性化や進化の足かせとなっているのが現実です。

世界の常識からはずれた規制を守らせるために無駄な人員を置くよりは、審査体制を充実させようとするのが普通の経営感覚ですが、そうはならないところが官僚体制なのです。

そんな規制があるから、規制を軽んじる傾向も当然起こってきます。厚生労働省の権益を守るために、企業や消費者が不便さやコストを負担しなければならないというまったく馬鹿げた出来事が起こっているのです。

法律を守らせる、コンプライアンスを徹底することを強化するのか、そもそも規制している法そのものを問うのか、そのサジ加減は微妙なところですが、法律そのものを精査し、きちんと監視できる政治の統治のあり方が求められていることだけは間違いないと思います。政権をとったら、官僚のいいなりというのでは困ります。

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