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住民投票条例 パブコメ実施へ 武蔵野市

「武蔵野市住民投票条例(仮称)」の骨子案がまとまり、2月15日からパブリックコメントが始まる。投票結果を市長と議会に尊重することを求め、不成立でも結果を公開するのが特徴だ。ただし、実施へのハードルは高い。k今回は骨子案について一回目の記事。

■自治基本条例で投票は決められていた

 令和2年4月1日に武蔵野市自治基本条例が施行されているが、自治基本条例で争点となることが多いのが住民投票だろう。武蔵野市の自治基本条例では、次のように定めている。

-----------------------------------
第19条 市長は、地方自治法第7条第1項の規定による廃置分合又は境界変更の申請を行おうとするときは、住民投票を実施しなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市長は、市政に関する重要事項(別に条例で
定めるものを除く。)について、武蔵野市に住所を有する18歳以上の者のうち、別に条例で定めるものの一定数以上から請求があったときは、住民投票を実施しなければならない。
3 市は、別に条例で定めるところにより成立した住民投票の結果を尊重するものとする。
4 市長は、住民投票の成立又は不成立にかかわらず、その結果を公表するものとする。
5 前各項に定めるもののほか、住民投票について必要な事項は、別に条例で定める。
-----------------------------------
 廃置分合とは、市が合併することや分割するさいには必ず行うこと。他にも重要な事項については一定数の請求があった場合は、必ず住民投票を実施し、投票結果を市長と議会に尊重することを規定している。

■先例への課題対応

 先に横浜市で住民が署名を集めカジノを含むIR構想の是非について住民投票の実施を求めたが、議会が否決し住民投票とはならなかった。

 武蔵野市の近隣市である小平市では2013(平成25)年に都市計画道路について賛否を問う住民投票が行われた。この時の議会は否決せず投票が行われたが、投票結果を住民の総意として扱うため投票率が50%未満の場合は不成立との条件付きでの実施だった。そのため、投票率が35%であったため不成立となった。不成立でも参考に投票結果を公表してほしいとの要望があったがこれも認められなかった。

 50%は、小平市長選の投票率が34.64%(2017年(平成29年)4月)と比較するとハードルはかなり高かったといえる。ちなみに、前回、平成29年10月の武蔵野市長選挙の投票率は44.26%だ。
 投票率は、住民の半数が意思表示をしていないのに住民意思を少数で決めて良いのか課題の裏返しでもあり、住民投票のあり方に一石を投じたともいえる結果だった。

 一方で武蔵野市自治基本条例では、「一定数以上から請求があったときは、住民投票を実施しなければならない」と必ず実施すると明記。さらに、「住民投票の結果を尊重するものとする」「住民投票の成立又は不成立にかかわらず、その結果を公表するものとする」として、義務ではないが、結果を尊重することを求め、可否の投票結果についても必ず公開すると規定している。上記の住民投票のようにはならないものだ。

■詳細は先送り

 しかし、成立する署名数などの詳細は別の条例に定めるとして、最も肝心なことは、いわば先送りしてきていたのが実情だった。その肝心の住民投票について詳細が固まったことで、パブリックコメントを行うのが今回だ。

 議会には2月1日の総務委員会で行政報告が行われ、全議員を対象にした議長主催のオンライン勉強会も2月10日に行なわれているなど、議会としても注目度が高い条例となる。

 ただし、今回のパブリックコメント(説明会も行われる)で条例が固まるのではなく、いただいた意見をもとに素案を作成し、令和3年9月〜10月にかけて再度パブリックコメントなどを実施、最終的に令和3年の12月議会、もしくは、令和4年の第一回定例会(3月議会)に条例案を上程し、議会の審議、議決後の令和4年4月以降に施行を想定している。まだ時間があり議論の余地が残されている。


■住民投票のメリット、デメリット

 ここで住民意思を明確にできる住民投票のメリット、デメリットを、あくまでも一般的な内容だがおさらいとして記したい。

〇住民投票のメリット
住民の意思が明確に示すことができる
住民が自治体の意思決定に参加できる
住民意思と首長、議会意思と意思が異なっている場合に是正ができる
対立する意見があり議会が自治体の意思決定をできない場合の対策になる
住民の行政、議会への関心が高まる

●住民投票のデメリット
冷静に判断できる情報が少ない場合、投票結果が正しいか疑問が残る
地域の分断になる可能性がある
特定地域では反対が多くても、自治体全域では関心が薄く、特定地域の意思とは反対の結果になる可能性がある
同様に少数派の意見が反映されない可能性がある
賛否だけにすると、中間的な考えが排除されてしまう
投票数が少ないと、少数だけの意思で自治体の意思としていいか疑問が残る
本来の意思決定機関である議会への信頼が薄まる可能性がある

 
 費用は、武蔵野市の場合、約4000万円かかると試算されており、乱発すると費用負担も課題だろう。何よりもYES,NOで判断できるのか。その中間策を模索し、全住民の最善策を議論し、決めていく議会の意義が問われることにもなる。そのこともあり、住民投票に否定的な議員は少なくないのが実情だ。

 自治基本条例は、付帯決議があったものの令和2年第1回定例会で全会一致により武蔵野市議会は可決している。住民投票については、肝心の詳細が決められていなかったため争点にはならなかったが、住民投票条例として詳細が示されたことで、議会がどのように判断するか注目される。

 骨子案の論点は後日。


【資料】
2021年02月01日総務‗武蔵野市住民投票条例(仮称)の骨子案について.pdf
2021年02月01日総務‗【別紙1】武蔵野市住民投票条例(仮称)主要な論点についての考え方.pdf
2021年02月01日総務‗【別紙2】武蔵野市住民投票条例(仮称)骨子案.pdf

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