通信制大学に通う高山さん(仮名)は、来月から本格化する就職活動を前に不安を抱えている。戸籍上は男性だが、自認している性は女性というトランスジェンダーだからだ。女性として働くことを望んでいるが、就活の段階から様々なハードルに悩んでいる。
【映像】LGBTQ就活生の抱える苦悩とは?「まずは“知る”こと」
「エントリーシートの自己PR欄にも写真を載せてくださいって言われることがあるが、性別移行を始めてからまだ1年半ぐらいなので、過去の写真は全て男性の写真なので載せづらい。性別が書いてある書類を他の人に見える場所に置かないで欲しいとも思うが、特別扱いを望んでいるように聞こえてしまうかもしれない。面接で性別について話したことで嫌なことを言われたり、不採用にされたり、という話も聞く」と、就活の苦労を訴えた。
普段は多目的トイレを利用するという高山さんは「自分のやりたいこと、という観点で企業を選ぶと、必ずしもフレンドリーを謳っていないところもあるのが現状だ。例えばトイレでステッカーなどを用意してくださるような企業が増えれば嬉しいし、心強い」と話す。
NPO法人虹色ダイバーシティと国際基督教大学ジェンダー研究センターの合同調査によれば、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの約30%、トランスジェンダーの約60%が求職時に何らかの苦労を強いられているという。
■「就活できなければ落第だ、と思って、我慢しようとした」
こうした状況に対し、声を上げる人たちもいる。現在1万5000人の賛同が集まっているネット署名のキャンペーン「#就活セクシズム」では、大手求人サイトやスーツ販売企業などに対し「極端に二元化した男女別スタイルやマナーの押し付けをやめ、多様性のある装いの提案」「女性はこうするべき、男性はこうするべきとの偏った表現の見直し」を求めている。
念頭にあるのは、スーツを販売する企業が「女性らしい美しさを引き立たせて」、就活マナーを紹介するサイトが「ノーメイクはマナー違反、パンツスーツよりもスカート」といったことを推奨しているという現実だ。
発起人の1人で、自身が男性でも女性でもないと考える“Xジェンダー”の当事者である水野さんも「就活になった途端に、“あなたは男性、あなたは女性”と分けられて、“これを着なさい”となる。自分は“これどっちにも入れない”という風に思ってしまった」と話す。
それでも女性用のスーツを着て、化粧をし、就活に臨んだという水野さんは「やっぱり新卒で就活できなければ落第だ、と思って我慢しようとした。でもやっぱり続かなくて。周りの人たちが真っ黒のスーツの同級生ばっかりになっていくのが怖くなって、学校に行けなくなっちゃった。結局、就活は断念して引き込もることになった」と、就活時の自身の苦しい経験を語った。