Kindle版もあります。
下がり続ける暮らし、「本音」と「建て前」の二重構造、「みんな同じに」の圧力、コロナ後……
問題だらけの日本に希望はあるか? どうする? どう生きる? いま一番聴きたい二人の珠玉対談!NHK Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」で反響を呼んだ対談を、未放送分も含めて収録。
またコロナ後、あらたに行われた対談も収録した、必読の書。
ブレイディみかこさんと鴻上尚史さん。
「いまの社会」で、人々はどう生きて、何に迷っているのか、を語り続けてきたお二人による対談本です。
NHK Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」で放送した内容が半分、追加の対談が半分、という構成になっています。
お二人の本をかなり読んでいる僕にとっては、正直、「どこかで聞いた、読んだ話」が多かったのですが、対談という形式だからこそ、それぞれの考え方が整理された状態で語られているようにも感じました。
鴻上尚史:『ぼくはイエローで~』の中で、教育が多く語られているじゃないですか。日本も本当に直面しなきゃいけないことが、教育にもあって、ただ「みんな仲良くしましょう」という言葉で済ませるわけにはいかないわけです。この本のなかで息子さんが言ってた、学ぶという権利もあるけど、話を聞いてもらう権利もあるとか、子供の権利に関する条約のくだり──イギリスは小学校から、子供には権利というものがあると、ちゃんと教える教育がある。
というのも、日本の教育は真逆に進んでいるように感じるんですよね。最近、『もぐもぐタイム』という、給食の時間に一言もしゃべらないでご飯を食べるという指導が日本の小学校で広がっているんですよ。広島から始まったんですけど、その理由が、いっぱいおしゃべりすると給食をたくさん残すから、給食の時間に、はしゃいだり歩いたりする子供がいるから、一言も喋ってはいけないっていうのをやってみたら残食率が劇的に減ったということなんです。
それを聞いた他の学校関係者もこりゃいいやと始めた。「もぐもぐタイム」って可愛い名前ですけど、強制沈黙タイムです。今、日本ですごい勢いでこの指導が広がっているんですよ。
もうなんか、イギリスの教育と真逆じゃないですか。これに対して、もちろん抵抗してる小学校の先生もいる。ケンカした子供達が給食でご飯食べながらそこで仲直りをするとか、「これおいしいね」とか、「なんだお前ニンジン食べられないの」と会話するとか、給食の時間は食べることとコミュニケーションを上達させるためにあるはずだとおっしゃってる。ブレイディみかこ:社交の場ですよ。
鴻上:社交の、コミュニケーションが上達するための場でしょう。その場に、沈黙が広がっているんですよ。もう怖くなるでしょう。
ブレイディ:怖いですよ。どんな社会にするつもりなんでしょう。
こんな「もぐもぐタイム」というのが広がってきているんですね。僕はこれを読むまで知りませんでした。
正直なところ、僕は子供の頃、給食の時間が苦手でしたし、今でも、人と一緒にものを食べる、ということに、けっこう緊張もしてしまうのです。
いまはコロナ禍の影響もあって、飲み会・食事会もほとんどなくなり、食事中の会話のプレッシャーも減って、個人的には快適ではあるんですよ。
でも、僕みたいな人間ばかりになるのが、良いことだとも思えない。
ただ、食事を残す、残さない、というのと、会話の有無って、そんなに関係があるのかなあ、という気はします。ずっと喋っていると、食べ終わるのに時間がかかるのは事実だろうけれど、給食に苦労した僕の経験では、「周りと喋っていたから食べきれなかった」ということは、あまり無かったような……