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《費用はわずか4億円だった!》政府の中途半端すぎる切り札「COCOA」にかかった“無駄なカネ” ドイツのアプリは「開発費25億円」-「文春オンライン」特集班

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「やはり、お粗末なことだったと思う」

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「もう2度と、こういうことがないように緊張感を持って対応したい」


菅義偉首相 ©文藝春秋

 菅義偉首相は2月4日の衆議院予算委員会で、新型コロナウイルス対策のスマートフォン向け接触確認アプリ「COCOA(ココア)」に約4カ月間、不具合があった問題についてこう述べた。

 コロナ対応で「後手」を踏みながらも、国会答弁などでは強気の姿勢を崩さない首相としては珍しく簡単に非を認めた形だ。COCOAについては、さらに平井卓也デジタル改革担当相が9日の会見で、「あまり出来の良いアプリではなかった」「発注自体にも問題があった」と発注元である厚生労働省に苦言を呈すなど、波紋が広がっている。

「アプリの根幹部分が機能しない」不具合を4カ月も放置

 事の発端は2月3日に厚生労働省が行った発表だ。厚労省はCOCOAのアンドロイド版について、昨年9月ごろから陽性登録者と接触しても通知されない不具合があったと発表した。COCOAは2月2日時点で約2450万ダウンロードされており、そのうちアンドロイド版は約3割(約770万)を占めている。

 全国紙厚労省担当記者が語る。

「COCOAはGoogleとAppleが開発したAPIを利用したアプリです。スマートフォンのBluetooth機能をつかって、陽性登録者の半径1メートル以内で15分以上接触した可能性のある人を検知することができる。この機能を使って、アプリをダウンロードしている登録者には新型コロナウイルスの陽性者との接触があった場合に、通知が送られてくるシステムです。通知を受け取ると、PCR検査の受診など保健所のサポートを早く受けることも可能になります。

 COCOAは昨年6月19日に運用を開始。安倍晋三前首相は6月14日に出演したニコニコ動画の番組内で『新たな日常を作っていく上において、アプリは大きなカギとなる』と語っていました。さらに6月18日の記者会見でも『どうか多くの皆さんにこのアプリをダウンロードしていただきたいと思います』と利用を呼び掛けるなど、新型コロナ対策の『切り札』として政権内でも大きく期待されていました。

 リリース後、何度か大きなバグが見つかり、その都度改修をしていました。もともとアプリはバージョンアップを繰り返すものですが、今回の不具合はコロナ陽性者と接触した場合でも、通知が送られて来ないという、いわば“アプリの根幹部分”が機能していなかったというもの。しかもそれが4カ月も放置されたままだったというから、首相の言う通り『お粗末』以外の何物でもない。『アプリを管理する厚労省は何をやっていたんだ』と厳しい声が政権内から出たのも当然です」

「第3波」の最中に全くアプリが機能していなかった失望感

 厚労省の担当者によれば、「現在、アプリの改修を進めており、本障害の解消は2月中旬を予定している」という。

 しかし、新型コロナ感染拡大の「第3波」が猛威を振るい、10都府県で緊急事態宣言が再発令されるに至った昨年12月から現在までの間の「最もアプリが活躍しなければならなった期間」(前出・全国紙記者)に、アプリがまるで機能していなかった失望感は国民の間で強い。

 今回の不具合が生じた「原因」について、ITジャーナリストの西田宗千佳氏はこう語る。

「アプリの運用において一番重要なのは継続して管理するということです。どんなアプリでも不具合が発生するのは当たり前のこと。ですから運用側である厚労省は開発元であるGoogleとAppleの仕様変更情報を追い、アプリに変更の必要があるかを継続して確認し続けないといけなかった。

 今回の不具合は9月に行ったバージョンアップから継続していたものと思われます。アプリが見かけ上、動いていたとしても、GoogleやApple側の仕様変更の状況を含め、継続的に動作状況を確認する必要があったが、厚労省も、厚労省からアプリの管理を委託されているパーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソル社)も、その確認が万全ではなかった」

「切り札」として政治的脚光を浴びたことがアダに

 なぜ「アプリ運用の基本」ともいえる確認を怠ったのか。西田氏は「COCOAを焦ってリリースしてしまった弊害」もあると指摘する。

「そもそもCOCOAはアプリだけでコロナの流行を直接的に抑えられるような実効性があるものではなく、人々の生活に対して心理的なプラスになるとか、行動を把握する要素になるような『補助輪』的システムです。早く開発すればそれでいい、というアプリではない。

 むしろしっかり国民の生活を『補助』するためには、じっくり時間をかけ、人員や予算も含め運用体制の構築をする必要があった。しかし、COCOAはコロナ対策の『切り札』として政治的に脚光を浴びてしまい、開発が前倒しに進んでしまった経緯があるのです。

 当初COCOAは新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS、以下ハーシス)というシステムと連携する予定でした。そのため、厚労省は4月23日に既に厚労省とハーシスを管理する契約を結んでいたパーソル社にCOCOAの開発運用も委託することにしたのです。

 しかし、パーソル社はハーシスのようなシステムについては実績があるが、アプリの運用は経験が少なかったようです。それでも、『バスに乗り遅れるな』とばかりに、他国の『アプリ開発の状況』を横目でにらみながら開発した結果、十分な検証期間や告知期間もなく、6月にリリースされてしまった。厚労省は1億人規模の人が使うことを想定した大規模なアプリの開発はこれまで経験したことがなかった。こうした『全体の経験不足』が今回の不具合の遠因になったともいえます」

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